side―エヴァンジェリン―


くっ、昨日は風邪を引いていたせいで酷い目にあった。
仁に看病されていたのは良いが、何故あのような体勢に……

茶々丸にはちゃんと説明して理解してもらえたはずだが、
シロウは何度言っても聞かない。

「元はと言えば貴様のせいだ! 八つ裂きにしてやる!」

「おい、ネギの授業中だぞエヴァ」

ぼーやの授業なんてどうでもいい。
今はこのイラつく気持ちをぶつけなければならないからな。

「エ、エヴァンジェリンさんやめて下さい〜。授業中です」

うっ、どうでもいいんだが能天気なクラスの連中の視線が集まってきてしまった。
腹立たしいが、仁が鍛錬中に気絶した時まで待つとするか……

それに今日は―――――――――

 

 

 

 

 

  side―衛宮士郎―


「えっ! 今日の大停電で学園の結界が解ける!?」

本日の授業が終わり、放課後に仁と俺が学園長に呼ばれ、
俺達は学園長室に来ていた。

「そうなんじゃ。学園の結界が解けると魔物が寄ってきてのう、
本来は学園の先生方にしか頼まないのじゃが、衛宮君と防人君さえよければ、
仕事を引き受けてもらいたいのじゃ」

これは引き受けなければならないだろう。生徒達に被害が出れば大変だ。

「却下だ、じぃさん。オレ達は他にやらなければいけない事がある。
ついででいいならやるがな。それにタカミチが居れば十分足りるだろ」

了承しようと口に出す前に仁に遮られる。

他にと言ったが、俺は何も聞いてないぞ。
たまには俺に話しをしてくれてもいいじゃないか。

「フォフォフォ、そうじゃったの。では防人君達にはそちらを任せよう。
あまり手は出さないでおくれ、これもネギ先生の修行だからの」

学園長はさっきの仁の言葉で何をするかわかったみたいだな。
それに、ネギ君の修行か。

「じゃあオレは帰るぜ、じぃさん。妖怪退治もいいが間違われて退治されないことを祈るよ」

「ジジィ、長生キシロヨ」

そう言ってチャチャゼロと共に仁は先に学園長室を出てしまった。

失礼すぎる発言だぞ仁。思っていても口に出すのは良くない。

「衛宮君も頑張ってくれの」

「わかりました学園長、失礼しました」

一礼して学園長室を出る。
出ると仁が壁を背に寄りかかって待っていた。
何かカッコつけてるな……

「じゃあ一度寮に戻って、握り飯でも作って、目的の場所で食べながら話し合うか」

ふむ、説明してくれるのなら異存はないぞ。
なるべく早めに準備してその目的の場所に行くとしようか。

 

 

時刻は19時50分、あと10分で学園が大停電になり結界がなくなるという時間だ。
俺と仁とチャチャゼロはある大橋のレンガ状の主塔部分の上にいる。

「それでは簡単に言うぞ」

「そうしてくれ、もう時間がないみたいだからな」

用意してきたご飯を食べつつ、仁は眼鏡を装着して説明に入る。
別に眼鏡は必要ないだろう……

「大停電になったらエヴァの魔力が回復しネギとエヴァが決闘に入る、最終的に来るのがこの橋ってことなのさ。
で、オレ達はオレの知ってる範囲で大きな違いがないかを見る。もしも発生したら何か対処しようってな話だ」

なるほどな。
そしてネギ君の修行の意味もありその決闘は止めてはならないと。
俺はネギ君の強さと心構えを拝見させてもらおうか。

「士郎はできれば弓で先生達の援護もしてやってくれ、
ここの魔物は倒してもその魔物の居た世界に還るだけだからな。
思う存分力を入れて、と言う訳には行かないがほどほどに頑張ってくれ」

仁は気遣ってくれたのかな? 魔物と言えど殺生をすることは気が引けるからな。
ありがたくその気持ちを頂くとしよう。では
―――

――――投影、開始トレース・オン」

黒い和弓を投影。矢は魔物が出てきた時に投影すればいいだろう。

「矢ガブッ刺サルトコガ遠クテ見レナイノガ残念ダ」

そんなとこ見て何が面白いんだよ……チャチャゼロだからしょうがないのか。
ふむ、そろそろ時間だし気を引き締めないとな。

間もなく学園都市の放っていた光がなくなり辺り一体が暗闇に変貌する。


む、もう魔物が出始めたか。それでは先生方の援護を始めるとしよう。

 

 

 

  side―防人 仁―


辺り一面が暗闇になりその直後から士郎は矢を投影し、狙いを定め闇夜に向けて射ている。
もうかなりの本数を投影してるんだが、

「そんなに撃って魔力持つのか? それと今は何体目なのさ」

「50超えた辺りかな、まだまだ余裕あるから心配するな」

「ケケケ、オレモ参戦シタイゼ」

フム、士郎の表情は始まる前とほとんど変わってないよな、確かに余裕ってことか。
ちゃんと蝋燭立ててるから暗闇でも表情は見えるぜ。
後、チャチャゼロはエヴァが魔力ケチってるのか知らんがいつも通り動けなく地面に座ってる。

「お、ネギが来たぞ」

オレの言葉に士郎が視線をネギに移す。
ネギは杖に乗り、飛びながらエヴァの氷魔法を防ぎつつこちらに向かってくる。

「ネギ君が押されてるようだな」

 士郎の言う通り、ネギはエヴァの魔法【こおる大地】を食らってこけたとこだ。

「オレの知ってる範囲と相違はないようだからゆっくり観戦しますか」

 

 

さて、もうすぐ終盤ってとこだ。
今までの事をまとめて言うと、エヴァと茶々丸が捕縛結界に捕まったが解除。
ネギがピンチになり、すぐにアスナが救済し、その後カモにより仮契約。
その後茶々丸とアスナ、エヴァとネギが戦闘に入って魔法の打ち合いやらをしていた。

そして今はネギが現在覚えてる最大の魔法を使うとこだ。

「ふむ、ネギ君は随分と頑張っているな」

「御主人ガ本気出シテネーカラナ」

エヴァが本気だしたら一瞬で終わるだろう、まだまだ実力差に経験差があるからな。
それより士郎はネギ達を見ながら弓で先生方の援護してるからおかしいぜ。

お、ネギの【雷の暴風】とエヴァの【闇の吹雪】が打ち合ったぜ。
派手だねぇ、ネギのはこの暗闇には眩しすぎるぐらい派手だ。エヴァのは闇属性だから何も言えん。

打ち合った結果、ネギがくしゃみにより魔力が一時的に爆発したのかエヴァに打ち勝った。
エヴァの服がなくなったのはやはり、くしゃみ効果なのか?

「予定より7分27秒も停電の復旧が早い!! マスター!!」

茶々丸の叫び声が聞こえ、次々と学園の明かりがついていく。

エヴァは飛んでいたが学園結界が復活したせいで、
大橋の下に広がる湖に向かい落下し始める。

「フム、やはり同じみたい――

「仁! エヴァが落ちていくぞ! 彼女だったら助けろ!!!」

いや、意味わかんねーよ士郎、ていうかお前オレを投げるなああああぁぁぁ!!

士郎はオレをエヴァに向かって、強化したであろう体で力一杯投げやがった。

「てめぇ! オレがエヴァをキャッチしたとしても飛べねーじゃねぇか!」

ものすごい勢いで投げられて士郎と距離が離れてるので聞こえてないようだ。

士郎は体張ってエヴァを受け止めろってかコノヤロー。
死んじまったらどう責任取ってくれんだよぅ。

そうこう考えている内にオレと同じく落下中のエヴァに追いついた。

「チッ。エヴァ、万が一の事があったら士郎を恨んでくれ」

「ジン………」

空中でエヴァをキャッチ、突然オレが出てきたせいかネギも茶々丸もまだ飛び込んでねぇし。

オレはエヴァを抱き、オレの背中から湖に落ちる様にしてエヴァに衝撃を与えないよう心がける。
すぐに水面とオレの体が衝突し、オレの体に衝撃が走る。

すごく痛いぜ、だが死んでもいないし気絶もしてないみたいだな。日々の修行の賜物ってやつだ。
水中で考えるのはいいが、早く出ないとオレもエヴァも溺死しちまうな。エヴァを抱えて水面に向かおうか。


「「くはっ――」」

水面から顔を出すと同時に二人揃って体から失われていた酸素を求め、空気を吸う。

「はぁ、互いに無事か」

「くっ……」

エヴァに視線は向けないで言う、理由は裸だからだ。
向けようとした瞬間に鉄拳が飛んでくるに違いない。

ネギと茶々丸が迎えに来てるな。ネギは魔力大丈夫なのかね。

「大丈夫ですか? 仁さん、エヴァンジェリンさん」

「ああ、それよりオレを乗せて上に連れてってくれないか?
エヴァは絡繰さんに任せていいかな?」

ネギも茶々丸も頷き了承を得たようだ。
オレはネギの杖にネギと背中合わせになるよう乗る。
一息に浮上し、大橋の上まですぐに着いた。

制服がびしょびしょだぜ……また携帯壊れたよ……

「士郎、オレを殺す気か?」

この様な事態まで発展させた本人に向け一言。

「彼氏が彼女を護るのは当然のことだろう?」

「だからチガーウ!!」

「ガフッ!」

エヴァの怒りの鉄拳が人中、水月、丹田にクリーンヒットだぜ。
急所を的確に突いたせいで士郎がピクピクしてる。
魔力は一般人並に落ちたはずなのにすごい威力だな。

「士郎の処罰はオレがやらんでも済んだな。エヴァに勝つとは、やったなネギ」

ネギの頭を撫でる。

フフ、年相応の反応で可愛らしいのぅ。
……オレは男に興味はないからな。

「停電がなければ私が勝っていたんだ!」

うおぅ、いつの間にかマントを着たお姫様が怒ってらっしゃる。

「まぁそうだろうが、負けは負けだ。大人なら潔く負けを認めなさい」

 そう言ってエヴァの頭も撫でてやる。

「くっ……しょうがない、ぼーやを少しは認めてやろう」

「マスター、仁さんに頭を撫でら」

「五月蝿い茶々丸! ネジを思いっきり巻いてやるぞ!」

エヴァはそう言いつつすでに茶々丸の後頭部にあるネジを巻いてるぞ。
それにしても元気なことだ。

「あんた達いきなり現れたのはいいけど何時からいたのよ」

アスナか、ずっと大人しかったがエヴァの印象が変わって、
呆然としてたから言葉を発していなかったのかな。

「最初からあそこで見てたぞ」

オレは初めにいた主塔部分を指す。

「あんた見てたんなら少しは助けなさ〜い!」

 その構えはデコピンか! だが遅い!!!

「秘技! デコピンカウンター!!」

デコピンカウンターとは簡単に言うとクロ○カウンターのデコピンバージョンである。
オレにもダメージは食らうがアスナには倍のダメージを与えるぜ!

「あぐぅ」

「フ、アスナ敗れたり」

アスナは頭を押さえてうずくまる。
綺麗に入ったからな、相当なダメージだろう。

「いやぁ、想定外のこともあったが楽しめたぜ!
もう遅いし、オレは帰るからな。皆も早く帰れよぅ」

「ケケケ、最後ノ方ノヤリトリハ楽シメタゼ」

チャチャゼロを頭に乗せ、倒れてる士郎や騒いでるエヴァに茶々丸、
うずくまってるアスナとそれを心配するネギは置いといてオレはこの場を去る。

「あと1週間で修学旅行か、チャチャゼロも出番あるだろうから楽しみにしてろよ」

「マジデカ、ケケケ、ソレハ嬉シイゼ」

明かりが点いた学園都市の自分が住んでいる寮に向け走る。


―――フフ、修学旅行は学園生活の醍醐味だからな。楽しみだぜ。

 


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