side―エヴァンジェリン―
学園の長のじじぃに頼まれて従者の茶々丸と共にこの麻帆良という学園都市の巡回をしている。
真祖の吸血鬼ともあろう私が……呪いがなければこんなめんどうな事をしなくて済むんだがな。
む、学園の結界に反応? 小さい反応だから鬼でも迷い込んだか。
「茶々丸、結界に反応があった。向かうぞ」
「了解しました」
茶々丸に声をかけ、背に乗る。
ぶーすたーと言うもので茶々丸が目的地まで飛び、私が誘導。
近代の科学というものはすごいものだな。
日々、人は楽をできる生活になっていってる。
私は近代の機械といったものが使えないのが難なのだが、
茶々丸が居れば任せられるので別に良い。
「っ! もう1つ結界に反応!? これは先ほどとは違い大きいぞ!」
「マスター、装備の方は?」
呪いで普段は魔法は使えないが、魔法薬を触媒にして魔法を使用することができる。
しかし、威力はそう高くないので今の反応の奴に効くかどうかは微妙なところだ。
まぁ、魔法薬は何故か今日は沢山持ってきてるから余裕がある。
「問題ない」
そう言うと茶々丸は速さを増して飛ぶ。
速い……振り落とされないようにしっかり掴まっておかなければ、
もし落ちたりしたら、今の体はそこら辺の10歳のガキと変わらんから大変だ。
「マスター、青髪の男と鬼がいます。
今、男の方が鬼に爪で引き裂かれそうなところです」
眼が良いな茶々丸。
小さい反応は鬼で正解かのようだ。
しかしやっかいなことになった、殺されたら処理がめんどうだと言うのに。
……この距離だと間に合いそうにない。
青髪の奴、運が悪かったな――
「さらに遠くで赤髪の男が弓を引いて鬼に向け撃つようです」
赤髪の男……この時間だとさすがに弓道部の奴らではないと思うが、
鬼相手に臆さないで弓を引くとなるとさっきの大きい反応はそいつか?
考えてると茶々丸の示していた方向に光が発した。
「赤髪の男が撃った矢が鬼に当たり爆発しました。
青髪の男の方は無事なようです」
魔法のような力を感じた。やはり赤髪は【こちら側】の人間か。
徐々に男二人に近づいて行き、襲われても良いように戦闘体勢に入る。
私でも見れるくらいの距離まで近づくと男二人から大きな魔力を感じた。
「何っ、青髪の方もか!」
「どうやらそのようです」
本当にめんどうな事になったな。
妖怪じじぃめ、仕事と言って雑用を押し付けてばかりで……
私の声が男二人にゆうに届く距離まで近づいた。
青髪の方は何か叫んでるが、そんなことは気にしない。
まずは問いたださなければな。
「貴様ら、何者だ!」
side〜???〜
「貴様ら、何者だ!」
そう言ってなんか怒ってる金髪な少女と、
付き添いのロボットにしては可愛すぎだろーってな二人が目に入った。
士郎と同じでこの二人のことも初対面と言えどわかるぜ。
「女の子だけでこんな森にいると危ないぞ」
「お前らしいが見当違いなことを言うな士郎」
「だって本当のことだぞ?」
「いや、まぁそうだが……」
「貴様ら……! 人の話を聞けーーーー!!」
うぉぅ、怖いぜ金髪ロリっ子。
おおぅ? 士郎が首しめられてガクガクされてる。
後ろでロボットな少女がマスターそれ以上は……と言ってうろたえてる。
こちらに敵意がないせいか、そっちの警戒心が一瞬でなくなったようだな。
「それ以上やったら、死んじまうから離してやってくれないか?」
士郎の魂が抜けている所が見える。幻覚か?
「やっと話を聞く気になったか」
「爺さんが川の向こうで手を振ってたのが見えた……」
危なかったな士郎それは三途の川と言う所だ。
切嗣のとこに行ったらこの世を去ることになってるとこだ。
「ではもう一度言おう。貴様ら何者だ!
結界に反応があると思ったら、こんな所に魔力を持った人間が2人も来るとは何のようだ!」
「フム、士郎は君のせいで戻りきってないからオレが説明しよう。
こんな所に魔力を持った人間が2人も来た理由は……んん?
魔力を持った人間が2人? 1人じゃなくてか?」
「何を言ってる。貴様も魔力がそこの赤髪くらいある。とぼけたって無駄だ!」
オレにも魔力があるだとー!? 何というご都合主……ゲフンゲフン。
まぁ嬉しいことだが、魔力があれば裏のやつらに探知されるわけで。探知されたら生き残る道は……
「何を泣いている。いいから早く話せ。早くしないと」
金髪少女が手をオレに向ける。
片方に魔法薬らしいものを持ってるということは――
「わかった、わかったから手を光らせるのやめてくれ!」
ふぅ。とりあえず今すぐデットエンドはなくなったぜ。
こっちは危害加えようとしてねぇのに魔法を使おうとするなよ。
「……まず話す前にここは何処だ?」
「ここは麻帆良だがそれが何だ」
やはりそうか。
大食いの獅子と虎がいたような世界だと思ってたのにな。
どっちの世界に来たとしても危険なことは変わりないけどさ。
「士郎、オレが話すがいいか?」
「ああ、いいぞ」
「よし。まず、俺たちは異世界から来た」
「は? 何を言っている」
「何を言おうがその事実は変わらない。それににさっき魔力と言ったな?
この世界には魔術師がいて魔術があるのか?」
とりあえず士郎と同じ世界から来たっていう風に言わないとな。
こいつに聞かれたらバットエンドの予感がぷんぷんだぜ。
「魔術師? 魔法使いのことではないのか?」
「何だって!? 魔法使いがいるのか!」
士郎かなり驚いて言ってるな……
そう思いつつ、オレも驚いたマネしてるんだがね。
フフフ、我ながら名演技よ。
「魔法使い……ここの魔法使いはどういったことをやるんだ?」
「どういったことと言っても……こういったことだ!」
金髪少女がオレの方に向かって手を広げ――
っ! あ、あぶねぇぇぇぇ!
無闇に人に向かって魔法を撃つなよ! 氷の塊が掠っていったじゃねぇか。
質問したのは士郎なんだしオレに撃つのは間違いだろうが。
「危ないことすんな! ……まぁおかげでわかった事があるがな。
オレたちの世界の魔術師とこの世界での魔法使いは同じみたいだ。
ちなみにオレたちの世界の魔法使いというと、士郎説明してくれ」
「え? あ、ああ。俺たちの世界で言う魔法使いは5人しかいないんだ。
それに魔法は5つしかない。それに『オレたちの世界』ってお前は……」
「コオォォォォォォォクスクリュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
士郎が全てを言い終える前にオレの声で打ち消し、
言葉を発せられることないように腹にパンチを捻り込める。
何を言おうとしてんだ士郎。命の恩人のお前につい入れてしまったじゃないか。
「とにかく、オレ達は君たちに危害を加える気はない。それだけはわかってくれるとありがたい」
「……ふむ、嘘はないようだが、とりあえず貴様らの言う世界の魔法使いというものは理解した。
が、まだ完全に信じたわけではない。それに青髪の貴様には後で追求することがあると言っておこう」
士郎のやつめぇ! お前のせいでオレが地獄への扉に少し近づいちまったじゃないか。
む、青髪? オレは日本人で黒髪だったはずだが……オレを見て言ったよな。
とりあえず士郎にこっそり聞いてみるか。
「なぁ士郎、オレの髪って青い?」
「ああ。珍しい髪の色だな。染めてるみたいじゃないし。俺が言うのもあれなんだけどな」
魔力持ちで青髪の突然変異か。
異常な状態が続いてるから別にもう何でもいいけどさ……
「まずはこの麻帆良にある学園長室で貴様らの処分を決めよう。ついて来い」
「勝手に話を進めんなよぉ」
金髪少女がこちらのことを気にせずに先に進んでいく。
学園長室かぁ……あの姿をこの目に見ることになるのかぁ。
「そういえば名前を聞いてなかったな。俺は衛宮士郎だ」
「フン。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」
「……絡繰茶々丸です」
自己紹介してるな、そういえば士郎にも名前言ってなかったな。
「オレの名前は――防人 仁(さきもり じん)だ」