side―防人 仁―(sakimori jin)


防人仁です。現在は学園長室前。
この扉の向こうには妖怪とも仙人とも言われる人物がいる魔境。
気をしっかりもって行かねば食われるかもしれない。いや嘘だけど。
とりあえず士郎を先に行かせてみるか。反応楽しそうだしな。

 

 

「ジジィ、入るぞ」

エヴァが先導し、その次に茶々丸、そして士郎が入ろうとする。

「お邪魔しま……!」

士郎あせってるぜ、そして投影しようとするな!
あれでも一応人間だ殺すなよ……

「仁! 妖怪がいるぞ!」

士郎がやたらに後頭部が長い老人に人差し指を指す。

「待て士郎、ここは学園長室だ。妖怪がここにゆったりと座ってるはずがないだろ。
即ち妖怪に見えるが一応は人間ってやつだ!」

「そ、そうか……」

「フォフォフォ、手厳しいのぅ」

お、妖怪爺が落ち込んだ。奴も人の子……か?
まぁオレも知ってなかったら絶対びびるな。
何故後頭部があれほど成長する。
そうか、魔法の力か。そしてあの後頭部に魔力を凝縮……

「ジジィ、こいつらが結界に反応があったやつらだ」

「そうかそうか、ふむ」

エヴァが侵入者はオレ達だと言い、その後オレたちの名前を言う。
オレが考え込んでる内に次々と話が進んでるな。
それにしてもフォフォフォって何回笑えば気が済むんだ。
まぁこの爺さんからフォフォ笑いとれば……まぁなんでもいいか。

「ワシはここの学園長、近衛近右衛門じゃ。どうじゃお主らここで働くか生徒としてやっていかないか?」

「「は?」」

いきなり働くか生徒? しかも何故二択なのだ。
まぁ働くのはネギとかも働けるということでいいとしても生徒は……大学もあったから大丈夫か。
それにじぃさんならネギの近くに置きたいはずだと思うな、理由は何となくだ。
この展開だと働くのはネギの近くに居れて手伝えるが生徒は無理じゃないか? 
とりあえずうまく聞いてみるとしよう、オレがここを初めから知らない風にな。

「働くか生徒って、徒になるならここは大学とかありそうなので大丈夫そうですが、
働くのは……オレはまだ経験とかがありませんし、士郎は高校生ですよ?」

「え? 仁、高校生って?」

「ありゃ? 士郎、高校生じゃないのか?」

「何を言っている貴様ら、特にジンは大学生には間違っても見えん」

ジトっとした目でエヴァに言われたぜ。
そういえばオレって青髪の突然変異したんだっけか、まず確認しないとな。

「学園長、鏡ありませんか?」

「ふむ、そこにあるぞい」

ぞい? いや、とにかく鏡っと……………………誰だ?
まるで別人ですね。完璧な美形ってわけではないがそれでも上のほうな感じになってるぜ。
そういえば士郎もオレがゲームで見てた時よりかっこよさプラスの感じに補正がかかってるような。
オーラが違うからか? ていうか士郎、呆けてるね。

「なんでさ……」

「お約束なセリフだな」

「どうしたんじゃ?」

「えーっと……オレは若返ってるってことは言えます」

「俺も若返ってます。それにここに来た時からわかってたんですが身長がかなり縮んでます」

若返って身長がかなり縮んでるだって!?
てことは士郎はアーチャー化前だったのか?
フフ、これは戦力の期待大だぜ!

「ふむ。ここに来た時という事はどういうことじゃ?」

そうだった、じぃさんにも言っといたほうがいいか、
どうせエヴァが後で話すことになりそうだしな。

「説明してませんでしたね。エヴァと絡繰さんには言いましたがオレ達は異世界から来たんです」

慣れてない敬語を使うのは大変だ。
初対面の人に好印象を持たせるのは重要。
いつまで持つかは自分でもわからない、多分長くはないぜ。

「ほぅ、異世界とな」

じぃさんが目を光らせてオレ達を見る。
そして、その何とも言えない表情が怖いぜ……

「はい。えぇと異世界の説明は……士郎、さっきオレが説明したから頼む」

「ああ、了解した」

メンドイからとは決して言わない。
さて、疲れたからエヴァの座ってるとこの横空いてるし、座らせてもらいますかね。

「座らせてもらうぞ」

ふぅ、やっと休める。今日は色々ありすぎてホント疲れたわ。
鬼のような物体に会うわ、異世界に来るわ、来た世界はオレの知ってるとこだわで大変すぎたぜ。

「馴れ馴れしいな……まぁいい、さっきシロウが口を滑らせていたことだが、
貴様の世界とシロウの世界は違うのだろう?」

さすが年の功と言うべきか、士郎が口滑らせたことを忘れずに疑問点を問うとは。
その事はきっといずればれるだろうなぁ、魔法で意識覗くとかで……エヴァならやるね。
面白そうなことは見逃さないタイプだし……オレもだけど。

「その通りだ。そしてあまり聞かないでくれ……恥ずかしくて死にそうになる」

「ん? どういうことかわからんが、絶対に聞かせてもらうぞ」

これは逃れられないイベント!?
くぅ、オレの趣味を話すことになるのか
エヴァなら100歩譲っていいとして純心な茶々丸には絶対聞かれたくない。
全部話すとなったら萌え要素が完璧に入ったやつだしな……
オレの精神が最後まで持つ確率は0%だ。

「じゃぁ後でってことで、ほら士郎も話終わりそうだし」

「おい、ジン!」

こんなとこで早々と精神崩壊はしたくない。
士郎の説明が丁度よく終わったことはラッキーだ。
オレは逃げる、逃げ切ってみせるさ。
無理だって? そんな哀しいこと言わないでくれ。

「ふむふむ。そういうことであったか。いきなり異世界とはのぅ。
衛宮君の説明で事情はわかった。それでさっきの話はどうするんじゃ?」

「さっきの話と言うのは生徒か働くかってことですか……士郎、どうする?」

「うーん……」

これはどうするか、ふむぅ。士郎も悩みまくりだぜ。
働くのメンドイしなぁ、それに生徒だと中学生からやり直しか。
男子中か、共学のとこだろうけどどんな場所なんだろう……

「……答えが出るのに時間がかかりそうなので学園長に任せます。
オレはどっちになってもいいです」

すぐに決められることではない。
何も選ばないって選択でも良いけど、それはそれで困るか。
中学生らしき奴が昼間歩いてるとなったら補導もんだ。

「ほぅ、では生徒になってもらうとするかのぅ。衛宮君もそれでいいかの?」

「あ、はい。俺も仁と一緒でいいです」

生徒か〜、ん?
そういえばさっきはネギの近くに居た方が、
じぃさんにとっては都合が良いと思ってたよな……
その笑みでずるい様な表情はもしかしてもしかするとか?

「では、君たちには2−Aに転入してもらうとしよう」

「っ! ジジィ。2−Aって言うことは私と同じクラスということか!?」

またフォフォフォって言ってるぜ、ごまかし笑いかこのじぃさん。
それにエヴァと同じクラスに持ってくるとは……
女子中ってことだが、いいのかそれ犯罪じゃねぇのか?

「フォフォフォ、2−Aにはもうすぐ新任の先生が来るんじゃ。
そこは女子しかおらんからその先生の相談役やお手伝いをしてくれるとありがたいんだがのぅ」

女子しかいないって聞いて士郎が目を真ん丸にして驚いてるよ。
心は硝子だからな。頑張れ士郎、負けるな士郎。
あとは、上手く話を切り上げれば終了かね。

「オレ達に相談役とは……その子はどんな先生なんですか?」

「ほぅ。その子とは、まるで子どもが来ると知ってるみたいじゃのぅ」

オゥ、シィィィィィィット。
こんなとこであかいあくま並のうっかり発動だとぉ!
なんてこったい狸爺に知られちまったぜ。これはこの場で話すしかないのか!?
ホントに茶々丸に話したくないんだけど……

「話さないといけませんか?」

「話すのが懸命だと思うぞ、ジン」

「くっ、ロリっ子め」

エヴァが満面の邪悪な笑みだぜ。
応援は……士郎に頼んでも無駄ということはわかる。
士郎はこういう場合は役に立たないことは百も承知。
腹をくくるしかないか……

「しょうがない、今から言うことは他言無用ということでお願いしたいんですが……
あと士郎は特に注意するようにな、お前が一番口を滑らせそうだ」

「む、なんか聞き捨てならないがわかった」

「フォフォフォ。ワシは誰にも話さんよ」

「それは貴様しだいだ」

「わかりました。防人さん」

みんな個性的な反応で面白いな。
オレ次第だとエヴァは言っているがきっと話さないと予測できる。
エヴァはいい子だからな。という訳でやはり問題は士郎……
皆さんお待ちのようですし、とにかく説明するか。

「オレと士郎は異世界から来たとはいいましたが、オレは士郎のいる世界と違う異世界から来ました」

「なんと、衛宮君とは違う世界とな」

「はい、ちなみにさっきの先生が誰が来るかわかったみたいな事を言ったのは、
なんというかこの世界が漫画になっていたんです」

「漫画だと!? 貴様ふざけてるのか!」

「本当のことだから怒らんでくれエヴァ……」

なんかつらいぜ。漫画とか意味わからんだろうしな。
茶々丸もオレが可哀想な奴的な目で見ないでくれ。すごく心が痛いよ。

「ちなみにその漫画の主人公はネギ・スプリングフィールド、サウザンドマスターの子です。
まぁこれからくる新任の数えで10歳の子ですね。
まだ信用できないなら、その子の過去について少しお話できますが、
他にはエヴァのスリーサイズとか……」

「なっ! スリーサイズだと!?」

エヴァが今にも殴りかかってきそうな勢いでオレに言ってくる。
最後のは完全に余計だったな、また墓穴掘っちまったぜ。

「いやそこまででよい、本当のことのようじゃからのぅ。
それにエヴァに殺されてしまいそうじゃ」

確かに、スリーサイズを言った瞬間エヴァの魔法がこの部屋を包み込むことになるはずだ。
その時点で一日目にしてデットエンド、哀しいことはこの上ない。

「仁、お前ここの世界のことまで……」

「士郎……もう話さないでくれ、話がややこしくなりそうだ」

士郎がしょんぼりなったが、その通りだからしょうがないだろ。
その言葉を言われるとお前の世界のことも知っていることになって色々と追求されることになる……

「衛宮君は嘘をつけないみたいじゃのぅ。フォフォフォ」

チクショー、もうどうにでもなっちまえよぉ!
士郎のあほー、じぃさんのばかー。

「衛宮君の話のことは今はよい。それで、防人君はそれを知っていてこれからどうすのかの?」

「そうですね、皆さんに悪いことはしないと言っておきましょうか」

これは当然のこと、決してオレは世間一般的に悪いことはしないと言える。
そんなことをするほど間抜けではないからな。
けど少しくらい?の悪戯は確実にすると思うが。

「……色々ありすぎて疲れたので何処か休むところが欲しいんですが」

「そうじゃのう。今日はエヴァンジェリンの家で休ませてもらうとよい」

「何だと! ……いや、こいつらには聞きたいことが山ほどあるから良いか」

地獄行き決定の切符が今発行されたね。
オレもやばいが士郎の魔術をエヴァが見ることになるから士郎も同じくらいやばいだろうな。
フフ、ミチヅレじゃ士郎。

「それでは学園長、失礼しました」

士郎がそう言いオレ達四人は学園長室を出る。

 

――さて、生き残れるよう頑張るとしますか。

 

 

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