side―防人 仁―


昨日は風呂場ではひどい目にあった。半殺しってやつだ。
とりあえず士郎はからかいすぎるとアーチャー化すると。
メモしとかなきゃな、またこんなことがあるとイヤだからなぁ、うっ身震いが。
真夏日な別荘にいるから別に寒い訳ではないぞ。

「まぁ疲れは取れたかなぁ」

「阿呆、寝すぎだジン」

「おはようございます、防人さん」

起きて早々暴言を吐くエヴァに、
穏やかな雰囲気をだす茶々丸が目の前に現れた。

「ああ、おはよう絡繰さん。あとエヴァ」

「何でついでみたいに言う」

「自分の言ったことを思い出しな」

悩んでるように見えるってことは自分の言ったことに気づいてないようだな。
改めて見るとエヴァと茶々丸って悪魔と天使なコンビだよなぁ。
エヴァは悪魔っていうより子悪魔か?

「……そういえば士郎が見当たらないな」

「あいつなら飯を作るとか言ってたぞ」

士郎早速頑張ってるのか、まさしく執事の鑑だ。
フフフ、む……茶々丸がここにいるってことは、

「絡繰さんは作らないのかぁ。絡繰さんのご飯も食べてみたかったんだけどなぁ」

「すいません。衛宮さんに手伝いますと言ったのですが、何故か顔色を変えて自分1人でやると」

ああ、風呂場でハプニングがあったからな。
茶々丸は昨日は焦っていたが、もうそれほど気にしてないようだな。
士郎はさすがに時間も経ってないうちというとこで近くに居られると恥ずかしいんだろう。

「フム、期待して待つとしますかね」


 

待つこと30分少々。目の前には和風料理が置かれている。
それにしても色が綺麗で豪華なことだ。

「お待たせ。あ、仁昨日は悪かったな。俺暴走しすぎたよな……」

「お前は悪いことはしてないさ。オレがからかい過ぎたのが原因だしな」

ちゃんと謝る士郎。やっぱりいい奴だなぁ。
士郎と茶々丸をもう少し見習って欲しいぞエヴァめ。
とりあえずみなさんでいただきますっと。

「衛宮さん、私はロボットなので別に用意しなくても……」

「ああ、そうだったか、すまん。どう見ても普通の女の子に見えるからつい、な。
やはり食べられないのか?」

「いえ、それならフェイクですが食べさせていただきます」

フラグ立てようとしてないか士郎君?
いや自然なのか、なんていっても士郎だしな。
お、この魚うまいなぁ。口に含んだ瞬間幸せな気持ちがいっぱいだぜ。

「おい、ジン。さっきのシロウはわざと言っているのか?」

「フッ、ああいう恥ずかしいことを普通に言えるのが衛宮士郎だ。エヴァも赤面しないよう注意しな」

注意したところで無駄だろうがな、と心の中で一言。
む、この卵焼きもいいねぇ、うまうま。

「ケケケ、士郎ハドウ見テモ女泣カセダナ」

「その通りだチャチャゼロ」

別にいいんだが、いつの間に現れたチャチャゼロ……
おぉぅ、ほうれん草のおひたしさっぱりな感じがいいですよぉ。むぐむぐ。


 

「ふぅ。うまかったうまかった。これから衛宮に料理任せるとなると安心だな。
オレのメイン料理と言ったらカップラーメンだしな」

カップラーメンって言ったら士郎が変な顔してる。
確かに体に悪いだろうし、あぁ衛宮家ではそういうものはご法度だからか。
三分から五分でお湯を入れただけでできる素晴らしい料理だと言うのにな。

「では、シロウ手合わせといこうか。ジンは……
魔力があると言っても貴様は魔法などとは無縁な世界だったな」

「その通りだ。魔力とかそんなんよくわからんしな。
まぁオレは士郎の勇姿でもこの目に焼き付けるさ」

夢の対決だからな。エヴァの方が強そうだよなぁ。
なんたってスクナの強さはわからんが一撃だったからね。
固有結界使えばエヴァにも士郎は勝てるのか? 
と言うよりこの世界で固有結界は使えるのかなぁ?

 

 

 

「3対1でやるのかよ。士郎大丈夫なのか?」

浜辺で戦闘をやると言われ来たが、これはいくらなんでも酷くないか?
さすがに3対1じゃぁ、士郎は……うーん。

「エヴァの実力がわからないから何も言えないな。
27祖くらいの力があるんだろ? 多分きついと思うが」

やはりきついのか、だがオレは士郎に勝ってもらうことを祈るよ。
士郎、エヴァとチャチャゼロは何とかなるとは思うから、
間違っても茶々丸だけは傷つけるなよぅ。

「準備はいいかシロウ、いくぞ!」

っておおいエヴァのやつ、まだオレが士郎の近くに居るのに待てやコノヤロー。

 

 

 

――――何とか巻き込まれずにすんだな。魔法の射手一発当たったと思ったんだがな。
……フム、衛宮は干将・莫耶で凌いでるな。あんまり速くすると目が追いついていかなくなるぜ。
チャチャゼロはゲイ・ボルク使ってるな。なんか嬉しそうだ。
しかしあれ食らうとやばいだろうなぁ。
士郎の体の中にアヴァロンあるのか?まぁないだろうがな。
おお、目からビームだよ茶々丸さ〜ん。かっこいいねぇ。

 

 

 

……なかなか勝負が決まらんな。士郎3対1なのによく頑張ってるわ。
げ、エヴァが刹那とのバトルで使ってたようなでっかい玉みたいなの出てきたぞ大丈夫か?

―――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ狂う。)」

もっとやばい魔法を使おうとしてるよ士郎さん。

「おいおい、士郎! あんまり本気で撃つなよ! こっちまで被害きたら堪ったもんじゃねぇ」

士郎の投影したものは捻り曲がった剣。士郎の出す宝具の中でも高ランクに値する剣だ。
エヴァへの射線上にオレも居る状態、とにかく退避だぜ。
あとオレの返答に「ふっ」てなんだよ。またアーチャーか? オレが生き残る道はあるのか?

―――偽・螺旋剣カラド、ボルク

真名を解放し魔法の玉とエヴァを目掛け飛ぶ。
魔法の玉に接触すると魔法が弾けそのままエヴァに向かっていく……

―――投影、解除トレース・カット

まぁ当たる前に矢は消したと。あれ食らったら大変だからな。
あと、士郎怖かった、いじめっこだぜ。

 

 

 

「エヴァは油断してたんだろうが、士郎の勝ちってとこか? お互い本気出してないんだろうけど」

「最後のアレはなんだ! あんな切り札があるなんて聞いてないぞ!」

無視されたよこいつめぇ、さっきの戦いが始まる前といい。
オレに発言権はないのか!?

「オレも士郎も言ってないからな。てか全部説明するのめんどく……」

ぶっ……こんな時だけ聞きやがって……氷の塊……無詠唱魔法かコンチクショウ。
エヴァめ仕打ちがひどい、ひどすぎるよぅ。

「さっきのは気のせいか……?」

「なにが気のせいかだよ! 痛いじゃねーか謝れよ」

「誰が貴様なんぞに謝るか。それより暇なら茶の1つでも用意しろ」

「悪いがオレにそんなスキルはない!
頼むなら士郎に頼んだほうがいいだろう。まぁ今は疲れて駄目みたいだけどな」

オレが用意したところで駄目駄目の落第点なお茶ができるだけだ。
そしてまた無詠唱魔法食らうと、そんなのは間違ってるぜ。
茶は駄目だが水を用意してやりますか頑張った士郎には。

 

 

 

「士郎の勇姿はしかとこの目に焼き付けたと言っておこう。かっこよかったぞ」

水が入ったコップを渡しつつさっきの戦いについての感想を言う。

「水ありがとな。最後の……さすがに【偽・螺旋剣】はまずかったか」

「うーん。いいんじゃないか? オレは見れてラッキーって感じだけどな」

“I am the bone of my sword.”――このセリフ素敵だ。
頑張って固有結界の詠唱暗記したしな!
すぐ覚えれるとは言わないでくれ。

「フン。シロウの実力は認めたくないが全開の私と同じくらいかやや下ってところだろう」

「やや下って、負け惜しみか」

「うっさい、阿呆」

さすがに何度も食らってたら回避でき………………ない。
魔法の射手を沢山だすな。あら、なんかすごく眠たいよ…………

 

 

 

 

 

「む、いつの間にかファンシーなエヴァの家に戻ってる。しかも朝か?」

窓から外を見ると日の光が差していて眩しい。

「起きたかおはよう、昨日は気絶して目がなかなか覚めないから心配したぞ」

「おはよう士郎、気絶かぁ生まれて初めてだ……」

この世界にきたら沢山気絶しそうだなぁ。
普通は気絶なんて絶対にしねぇよ。
おおぅ? 武者震いか。

「ん? そういえばエヴァと絡繰さんは?」

何処にも二人がいる気配がない。
エヴァが居るとそれだけで騒がしいというのがあるのにな。

「学校にいったみたいだ。昼時になったら学園長室に行けと言われた」

「また妖怪見にいくのか。昼まで―――そんなに時間はないみたいだな」

時計を見やると中々の時間が経っていることに気づく。
オレは何時間気絶してたんだよコノヤロー。
そんな強い魔法撃つなんて、エヴァの鬼。

「……まぁ行くとしますか」

とりあえずちゃっちゃと行ってきたい。
まだ眠たいのさ、早く戻って惰眠を貪りたいぜ。

 

 

 

学園長室前に着いたぞ。授業中のこともあってか誰にも見られずに済んだ。
主に2−Aに見つかるとやっかいそうだからなぁ。特にパパラッチ娘!
それと昨日、いや一昨日からだったか、余り気にしてなかったが、
士郎は赤いし服のサイズあってないぞ! 報道の獲物になっちまうぜ。

「「失礼します」」

先ほどの考えたことは一度置いといて、
士郎と声を合わせて学園長室に突入。
そしてやはり、妖怪じぃさんが出現した。
モンスターのように言ってしまったが間違いではない。

「おお、衛宮君に防人君かね。いやいや昨日は渡すものと言うことを忘れてのぅ」

渡すものと言うこと? なんだ、むむむぅ。
ご飯食べてきてないせいかお腹が空いて頭の回転が悪いぜ。

「それに会わせなければならない人もいるからの――丁度来たようじゃ」

「失礼します、学園長」

ダンディーだ。渋いおっさん降臨だ。白いスーツにさわやかな笑顔!
そうか、今の2−Aの担任ってタカミチだったか。

「君達が士郎君と仁君かな? 学園長に色々聞いたよ。それに僕のクラスに来るんだってね」

色々って、この狸じじぃはまさか言ったのか?
誰にも話すなって言ったじゃねぇか。
……タカミチなら許してやるか……他に言ってねぇだろうな。

「僕の名前は高畑・T・タカミチだ、よろしくね」

「衛宮士郎です。よろしくお願いします」

「防人仁です。自分のこと聞いていたのでしたら誰にも言わないようお願いします。あと士郎のことも」

「俺はついでか……」

オレの方がやばいからな。これから起こることわかってるんだし。
どっちもやばいって? いやぁオレには魔力はあれど戦闘力ありませんからぁ。
お、ダンディーな笑みで返されたよ。言わないってことでいいのかな。

「フォフォフォ、では明日に転入とするから遅刻しないようにの」

明日ってもうあのクラスに入るのか。
そういえばネギっていつ来るんだろう?

「タカミチ君はあと1週間で2−Aの担任ではなくなるからのぅ。短い期間だが仲良くするのじゃぞ」

 このじぃさん、オレの頭の中での疑問をすぐ答えるとは、魔法使ってるんじゃねぇだろうな。

「それと、これは君達が生活してくためのお金じゃ、無駄遣いはだめじゃぞ」

おぉぅ貯金通帳だ。
…………げ、0がいっぱい金ぴか爺さんだな。
それにしてもワホーイだ、お金持ちだよぅ。

「それは俺が管理することにしよう」

「なぜだ士郎!?」

「遠坂と同じオーラが出てたからだ」

士郎はオレが持っていた貯金通帳を勢いよく引っ張り持っていき言う。
守銭奴オーラが出てたとは何たる失態。まぁ使えるんだからいいけど。

「あと君達の住むところは、2−Aと同じクラスの所に住んでもらうとする」

「なにぃぃぃぃぃ!」

女子寮だと! 士郎といるかぎり絶対にハプニングが起きる。
そして乙女の鉄拳制裁、何という悪循環!

「チェンジは?」

「できぬ、それに君達、特に衛宮君には護衛ということもあるからのぅ」

さいですか。てか何故に士郎が強いとわかってるんだ。
その目にはスカウターの機能もあるのか?
あ、そういえば戸籍とかは大丈夫なのかなぁ。

「戸籍なら心配いらぬ。もうすでに用意しておいた」

「……あの、学園長。魔法で意識覗いたりとかしてるんですか?」

「フォフォフォ、何のことかのう?」

もういいです。自分諦めました。このじぃさん食えないです。
自分の対魔力がそれほど高くないと知り、
セイバー並に対魔力が欲しいなと思った今日この頃。

「最後に、これが一番重要なことなのじゃが」

重要なことだと。何だ? くっ、この先が読めん。
エヴァを抑えとけとか、この学園に来る魔物全てを倒せとかか!?
そんなメンドイことはできればお断りだぜ。

「この写真はうちの孫のこのかなのじゃが、どーじゃ彼女などに? 何なら嫁でもよいぞ」

「さすがにまだ会ってもいない女の子を彼女とかには」

「………………………」

そういえばこの爺さん早く結婚させたがってたな。
士郎はちゃんと返すがオレは呆れてなにも言えん。
真面目に考えてたのに何だそりゃ。

「そうかそうか、それは残念じゃ。気が変わったら言っておくれ。では明日、遅刻せんようにの」

「はい、失礼しました」

「失礼しました」

「それでは、学園長」

士郎、オレ、タカミチの順に学園長室を出て行く。
やっと妖怪から離れられるぜ。人の意識を覗くとはなんたる所業。
本当に覗いてたかどうかは知らんがな。

「士郎君はかなり強いらしいね、エヴァが言ってたよ」

学園長室を出るとタカミチが士郎に尋ねる。
ポケットに手を突っ込んだが居合い拳使うって訳じゃないよな?
タカミチって好戦的……っていうかこの学園の人達全員が好戦的だったか。
巻き添えだけは後免だぞ。

「いえ、そんなことないですよ」

「いやお前は十分反則級だと思うがな」

英雄王と互角にもっていける能力もちだしな。
英雄王だから互角にもってけるだったっけか。
どっちにしろ士郎はこの世界で余裕に生きていけるのかな?
けど、サウザンドマスターの周りは強いやつら多いしなぁ。

「仁君は魔力をもってるみたいだけど、本当に魔法は使えないのかい?」

次はオレに質問してきたよ。
興味津々にしながらダンディーオーラを放ってるぜ。
オレもその渋さが欲しいな。

「えぇ、魔法とは無縁の世界でしたから」

うん、使えたらびっくりだ。
ネギみたいに派手なの撃ってみたいけどなぁ。
雷の暴風!! って感じでな。

「おおっと、もうこんな時間だ。授業に遅れちゃうね。また明日会おう士郎君、仁君」

タカミチ自身がしていた時計を見て颯爽と行ってしまったよ。
去ってる姿も随分と渋い。何故それほど渋い……

「……貯金通帳と一緒に部屋の鍵と地図ももらったしどうする士郎?」

「とりあえずは生活用品買わないとな、まずは俺の服が必要だ」

うむ、確かに。
ここの学園はどこか抜けてるとこはあるとは言え、
その赤い格好で歩かれるとオレも嫌だ。
最初に思ったように2-Aに見られると嫌なのもある。

「うーん、包丁等の金属製品は投影で経費削減ってのはあり?」

「駄目だ、ちゃんとしたものを買わないとな」

駄目かぁ、お金浮かしてゲーセンとかで遊びたかったのに。
まぁゲーセンは無理だとしてもゲームは欲しいよな。
確か今は2003年だったな、何か売ってんだろ?

 

―――とにかく今日はこの学園都市でもゆっくりと見学でもしようかね。

 

 

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