side―衛宮 士郎―


ここに来てまだ日がたってないけど色々なことがあったな。エヴァ達と戦ったけどあれは疲れた。
それにタカミチさんが手合わせしないかってこっそり言われた、ここの人って好戦的な人が多いのかな。
先ほど仁と買い物に行くと子どもみたいに買ってくれぇと泣いてせがんできた。
結局、根負けして黒い箱みたいな機械とディスクだけは買ってあげたけどな。

そして今は仁と二人でどう女子寮の自分達の部屋に入るか考えている。

「どう策を練って入っても士郎のスキルでハプニングが起きそうなんだが」

「俺のスキルって……なんでさ……」

疫病神みたいに言われても困るぞ。
確かに元の世界に居たときは色々あった気がするけど、
それほどひどい事は起きないと思う……多分。

「授業してる最中に潜れば大丈夫だったんだがな。長々と買い物してしまったぜ。何でだろうなぁ」

その原因は仁にあると思うんだが、何度もねだってきた仁にな。
そのせいでどれだけ時間が経過したことか……まぁしょうがない。

「もう正面突破でいいんじゃないか?」

「フム、士郎のいう通りかもな、よし。こうなったら覚悟を決めてレッツラゴーだ!」

覚悟を決めて二人で女子寮に向かい歩いてく。
俺の手に汗が滲み出てくる。
そして女子寮の扉を開き中に入ると―――

 

 

――そこには橙色のツインテールな女の子と長い黒髪の女の子がいた。

「さすが士郎スキル、その能力は伊達じゃないぜ」

また意味わからないことを横でいってるが気にしないでおこう。
それにしてもこれはどう切り抜けるべきか、早速見つかってしまうとはな。
ん? あの黒髪の子どっかでみたような……

「ちょっと! なんで男子が女子寮なんかに来るのよ!」

「ガフッ!」

あ、仁が橙色の子に吹っ飛ばされたぞ。

「仁! 大丈夫か!?」

仁の容態を確かめるために俺は駆け寄る。
薄っすらと笑っていて何か言いたそうな顔をしているな。

「俺はここまでのようだ……後は君に任せた……
ちなみに士郎が困惑するの面白いから任せたわけではない、ガク」

「仁ー!!!」

「何あんた達、訳わかんない小芝居やってるのよ」

はっ、つい仁に合わせてしまった。
橙色の髪の子がきつい視線でこっちを見てるよ。
仁の台詞の最後で変なこと言ってた気がするけど、任されたから俺がやるしかない。

「えぇっと、俺たちはその……そう、学園長に言われてここに来たんだ」

「え? おじいちゃんが?」

黒髪の子が目を丸くして答える。
む、おじいちゃん……そうか今日の昼に見せてもらった写真の子か。
ほんわかしてて橙色の子とは正反対な子だな。
それにしてもあの学園長の血筋からこんな可愛らしい子が生まれるとは。

「ああ、自分達の部屋に行きたいんだけど、できれば連れていってくれると嬉しい」

「そういうことならええよ〜」

黒い髪の子が可愛らしい笑顔で快く了承してくれた。
物分りが良くてこちらとしてはとてもありがたい。

「ちょっとこのか!」

「大丈夫やて、いい人そうやもん」

「フ、上出来だ士郎。だがオレはハプニングが見たかったぜ」

橙色の髪の子もなんとか納得してくれたみたいだ、よかった。
……仁には後できつく灸を据えておこう。

「そうだ、俺は衛宮士郎、よろしくな」

「オレは防人仁だ」

「近衛木乃香や、よろしゅぅ〜」

「……神楽坂明日菜よ」

まだ橙色の髪の子――神楽坂さんには睨まれているが。
ある程度打ち解けられていて何よりだな。

 


 

 

「ほぇ〜、防人さんは特殊捜査班でここに潜入、
衛宮さんは正義の味方で2−Aのみんなを守るためにきたんやて」

俺達の部屋に行く途中、仁が何やらこのかちゃんに教えていた。
いつも通り楽しそうな笑顔で語りかけているな。

「その通りだこのか嬢」

「このかに変なこと吹き込まないでよ」

「フ、明日菜君。たしかに私の特殊捜査斑は嘘だが、衛宮君の正義の味方は本当だ」

仁は変な話方でこのかちゃんと神楽坂さんに向け、
勝手に俺のことについて言ってるな。ふむ、まぁ――

「仁の言う通り俺は正義の味方……を目指している、いや目指していたかな。
笑わないでくれると嬉しいんだが」

正義の味方を名乗るには血を流しすぎた。
この世界のことではないがもう手遅れだとは思う。
仁が渋った顔してるな……

「うっ、そんな真面目に言われると笑えるはずないじゃない」

「士郎くんはかっこええなぁ〜」

かっこいいって、そんな直球に言われると照れるぞ。
先ほどの深刻な顔と変わって横で誰かが笑ってるがとりあえず鉄拳を入れておこう。

「アンタ達の部屋は、って私達のすぐ隣じゃない」

着いたみたいだな。
神楽坂さんが俺達の部屋と自分達の部屋を示す。
本当に隣、学園長は何を考えているんだか……
やはりこのかちゃんとお見合いさせることかな。

「丁度いい、案内してくれたお礼に今夜のご飯は士郎がご馳走しよう」

もう復活したのか仁は。
結構な力を入れて鉄拳入れたんだが回復力が高い。
今度から灸を据える時はもう少し強めにしたほうがいいかな。

「何であんたが偉そうの言ってんのよ」

神楽坂さんの言う通り俺が言う台詞だ。
だがお礼はしたいのは本当のこと、
俺が言っても仁が言ってもそう変わらない。

「ご飯くらいのお礼はさせてくれ。口に合うかはわからないが自信はある」

「アスナ〜ご馳走になったほうがいいんちゃう?」

「うーん、そうね。じゃぁ夕飯の時間になったら行くわ」

「ああ、楽しみに待っていてくれ」

二人とも来るみたいだな。
ここは気合を入れて作らないとなぁ。
よし、藤ねぇ相手の気持ちで頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

「「「「ごちそうさまでした〜」」」」

「お粗末様でした」

虎相手の気持ちでやったせいでかなり量があったはずなのに綺麗になくなった。
綺麗になくなることは良い事、料理人としては嬉しい限りだ。
そんなことより疑問に思うことが――

「何回食ってもうまいなぁ士郎の料理は」

「なんで男子があんなおいしい料理が作れるのよ」

「士郎くんに料理おしてもらえんかな〜」

「まことにおいしいご飯でござった、ニンニン」

四人から料理の評価をもらう。
俺が誘ったのは二人、そして仁はいつも通り一緒に食事をしてた。
疑問に思ったのはここ、評価をもらうべき人数は三人のはずなのに何時の間にか一人増えていた。
その一人とはニンニンって言う細目長身の女の子で一番料理を食べていたように伺える。
ニンニンってことは忍者か? それにござったって……

「そうでござった。拙者の名前は長瀬楓でござる。
明日転入生が2人来ると聞いておったがお主達のことか?」

「楓ちゃん、いつの間に! それよりも転入生って何よ」

長瀬さん、か。
神楽坂さん気づいてなかったようだな。
ちなみにずっと君の横にいたんだがね。

「さっき2−Aを守るために来た正義の味方っていっただろ。忘れてたのか?」

仁がまた「正義の味方」って言ってるし、あんまり言わないで欲しい。
それとなんで楓さんが転入生がくるってわかってるんだ?
やはり忍者か諜報部員なのか? けど忍者ってかっこいいよなぁ。
ぜひとも分身の術できないか聞いてみたい。

「女子中になぜ男子が来るか聞きたそうだな。
めんど……いや明日話すことになるからそれまで待て」

「では、俺も仁と同じと言うことで」

説明するとボロが出るっていつも言われてるから、
俺から話すことはしない方がいいと判断。
注意してるんだけど、なぜか治らない。

「もう遅い時間だから自分の部屋に戻ったほうがいいぞ」

すでに時刻は8の数字を越えている。
話を切り替えて女子に帰るように促さないと明日が大変だろう。

「うむ、あとアスナと楓は勉強やってなさそうだから寝る前に勉強しろよ」

「「うっ……」」

仁が神楽坂さんと長瀬さんに向かって言うと二人とも呻く。
あの二人は勉強しない子なのか、中学校からそれだとよろしくない。

「また明日会おうな3人とも、勉強もいいがほどほどにな。
女の子なんだから夜遅くまでやると良くないからな」

む? 顔色が悪くなったな。
何か料理に変なもの入ってたのか?
ちゃんと綺麗に処理して作ったはずだが……

「士郎、お前のさわやかな笑みはどうなってるんだ?」

「なんだよそれ……」

 

 

 

 

 

翌朝、朝の登校時間を遅くすると、初日だし女子に囲まれてやばい、
と仁に言われたのでかなり早い時間に二人で登校。
そして今は学園長室にて仁と学園長が囲碁の最中である。

「待っ……」

「待ったは3回までといっただろう爺さん、修行が足りんな」

仁が学園長に圧勝したようだな。
仁はゲーム全般俺は強いぜとか言って燃えて囲碁を打っていた。
盤を覗いて見ると圧倒的、御老人に対してえげつなさすぎるぞ。

「囲碁もいいがそろそろ登校時間だと思うが」

「そうだな、そろそろタカミチの所にいかねば」

仁が何故か御小遣いと書いてある封筒を持って立ち上がる。
聞くと買ったら御小遣い、負けたらこのかちゃんを許婚にするという勝負をしていたようだ。
そんなことをやるなんて随分自信合ったんだな。
俺の場合は決してしない、そういう事をすると何故か負ける予感がする。

「フフフ、これでオレの趣味に使えるな」

「変な気が出てるぞ」

さてと、転入初日から遅刻したら大変だ。
早くタカミチさんのところに行かないと。

急いで向かおうと学園長室の扉を開くと、
丁度よく扉の前にタカミチさんがいた。

「おはようございます。タカミチさん」

「今日も渋いねタカミチ、おはよう」

「おはよう士郎君、仁君」

仁はタカミチさんを呼び捨てで言う。
曰く、10歳の子も呼び捨てにしてたからオレも馴れ馴れしくいくぜ、だそうだ。
さすがに俺は敬語を使わないと嫌な感じがするのでそうしてる。

「さて行こうか戦場へ」

「なんで戦場なのさ」

「ハハハ、仁君の言う通りかもしれないね」

不穏な言葉を放つ仁。
タカミチさんは明るく答えたが、いやな予感がしまくりだ。
ただ教室に行くだけなのに……

 

 

 

歩くこと数分、先導していたタカミチさんが立ち止まる。

「ここが僕のクラスの2−Aだよ」

「ついに来てしまったか、先鋒は士郎に任せるとしよう」

「さっきのいやな予感はこれか?」

教室の扉の上に何かあるな。黒板消しトラップ?
なんてありがちな、とりあえず取り除いておこう。

「チッ、さすが士郎だ」

「わかってるならなんで言わないんだ」

「引っかかると面白いからに決まってるだろ」

この黒板消しは仁にくれてやるとしよう。
む? 受け取れなかったか、ちょっと強く投げ渡しただけなのにな。
ふふ、粉で白くなってるな。では入るとしますか。

う、教壇の前にまたトラップだ。危ないなぁ。
紐が張り詰めされてるけど引っ掛けようとしてるのかな?
とりあえずポケットに手入れて“―――投影、開始トレース・オン

投影したハサミですぐに紐を切る。
次は上からバケツ落ちてきてるよ、誰だ仕掛けた奴は。
とにかく落ちきる前にバケツをキャッチしてと、窓際に置いとくか。

「ふぅ」

「それにしてもすげぇな、全てのトラップ解除するとは」

「ハハハ、士郎君は手際がいいね」

いや子どものトラップだからこれぐらいは普通だと思うけどな。
それにしても本当に女子しかいないなぁ。エヴァは後ろか、笑い堪えてるし。
昨日見た楓さんもそうだけどこのクラスには強そうな子がちらほらいるな。

うっ、竹刀袋持ってる子に睨まれたぞ。
明日菜さんは引きつった顔してるな。
このかちゃんは昨日みたいに、ほんわかした表情だ。

「転入生の衛宮士郎君と防人仁君だ、みんな仲良くして欲しい」

まず担任のタカミチさんが皆に俺達を紹介。
いつでも爽やかにタカミチさんは言う。
爺さんに似た雰囲気を持ってるかな。
む、俺からも名前言わないとまずいか。

「衛宮士郎です、よろしくお願いします」

「防人仁だ、ボケ担当っぽいけどよろしく」

改めて俺達が自己紹介をしたのだが、
静寂な雰囲気がさらにって感じになった。
どうすればいいのかなぁ。

「えぇっと……」

「「「「「「「えぇぇぇーー!!!」」」」」」」

「「「「カッコイイー」」」」

ぐぉ、脳まで響きわたるこの声量、痛いぞ。
言ったら悪いと思うが戦場での騒音みたいだ。

「どこから来たんですかー?」

「何で女子中なのに男子が転入してきたんですか?」

「彼女とかいるんですか?」

「好きな食べ物はなんですか?」

「キャー、変態!?」

女子が一斉に質問をしてくる。
いや、そんな一気に言われても答えれないよ。
それと最後のは横から聞こえたな。
針でも投影して刺しておくか。

「痛! くぅ、我慢だ……
そうだな、質問は一人ずつ答えてくれ、じゃぁ出席番号3番のあなた!」

仁が出席簿をタカミチさんから借りて、カメラの持った子に言う。
仁の耐久力が日に日に上がっていってるな。
とりあえず質問に答える心構えをしないと。

「待ってました! このパパラッチ朝倉和美がどんどん聞いちゃうよ!」

やけにテンション高い子だな、仁といい友達になれそうな感じだ。
この朝倉さんに限らずほとんどの人がテンション高いような気がするけどさ。

「まずは何故この女子中の2−Aに、しかも2人も男子が転入して来たんですか?」

「フッ、いい質問だ。これは誰もが持ってる疑問だろう。
簡潔に言うとこれは近衛爺の陰謀で、士郎が2−Aみんなを守るために来た正義の味方と言っておこう」

また昨日と同じように正義の味方って言いふらしてる。
今度ちゃんと仁に言っとくべきだな。

「そうですか。それでは次の質問は、彼女はいるんですか?」

「オレはいない! ちなみに彼女もった暦は0年だ!!!」

「威張って言われてもですね……。オレはいないってことは衛宮さんは?」

仁はまた余計なことを言ったな。
これは正直に言ったほうがいいのかなぁ。
みんな目を輝かせてるし、とりあえず簡潔に言っとくか。

「うーん、そうだな……簡単に言うと、
ある人に告白してOKもらえたんだけどもうその人には会えないんだ。
つまり仁と同じことになるのかな」

「―――――――」

ん? 仁が呟いてたけど、まぁいい。
それにしてもしんみりしちゃったな。
やはり今言うのは場違いだったのか。

「すいません、衛宮さん」

「いやいいんだ、いずれみんなに話してたかもしれないしな」

この場で今のことを言わなくとも、
このクラスなら確実に話すことになりそう。
うん、絶対にそうだ。

「さて、そろそろ授業が始まるから皆席に着いて、士郎君と仁君は後ろの空いてる席に座ってね」

 後ろの空いてる席か、ええっと。

「長谷川と綾瀬の後ろだな、特に長谷川が変な顔するが気にするなよ」

仁に小声で言われた。
眼鏡かけた方、長谷川さんか、確かにすごく嫌そうな顔してるな。
男子だからしょうがないっていったらしょうがないんだけど。

「おい、エヴァお前の席は一つ隣だろ寄ってくるな。色々ややこしくなりそうだ」

「こう何年も授業を聞いてると暇なのでな貴様らで遊ぶとしよう」

エヴァが自分がいた席から1つこちら側に来て仁が横でじゃれてる。
仲がいいことはいいことだが、授業もちゃんと受けないと駄目だぞ。
ちなみに俺達の今の座席は……綾瀬さんの後ろが俺で長谷川さんの後ろに仁が座ってる。

「さて士郎、社会と理科は真面目にやらんと居残りがかかることになる。
エヴァみたいに不良にならないよう頑張ろうぜ」

「それは言えるな、久々に勉強頑張ろうか」

「貴様、人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

「ハグァッ!」

仁がまたエヴァに殴られて奇声をあげてるが、気にしたら負けだ。

 

中学生に勉強で負けないようにしないとな、とりあえず仁に合わせて生活するのが一番利口……か?

 

 

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