―side―防人 仁


初日からネギは大変だったな、わかってたことだけどさ。
ちなみにオレは遊んでるように見えてるけど、ちゃんとエヴァの別荘を勝手に……
じゃなくて、ありがたく借りさせてもらって修行してるぜ。

さて、次のイベントは、アレだったか。
ん? その次はなんだっけ……ノートにも全部書いてるわけじゃないしなぁ。

 

 

今はネギの授業中。
ネギが英語をスラスラ読んで誰に当てようか迷ってる。
オレに当てんなよ、直訳だから変な文になるぜ?

「じゃあ、前半を士郎さん、後半をアスナさん」

フッ、士郎とアスナにやらせたらアスナの頭の悪さがさらに強調されるぞ。
まず士郎が訳して……うむ、さすが士郎だな。
みんなにもわかり易い日本語に訳して、みんなから尊敬の眼差しを受けてる。

「士郎さん、完璧ですね。それではこの調子でアスナさんお願いします」

ネギがにっこりと笑いをアスナに向ける。
哀れアスナ、恨むなら士郎を恨め。

「えーっと、うーんと……」

アスナは悩んだあげく、よくわからん日本語で英文を訳していく。

「――アスナさん英語ダメなんですねえ」

「なっ……!?」

ネギの口撃は決してジャブではなくストレート、会心の一撃だ。
そんで、いつも通り明日菜がネギにつっかかって…………アスナの服が弾け飛んだ。
ここもそうだったか、ネギのくしゃみの威力は絶大だな。

「この光景を見てどう思う? チャチャゼロ」

「アホダナ」

「その通りだよなぁ」

誰が見てもそう思うに違いない。
お、終業のベル、またネギの授業がつぶれたな。
さてと、落ち込んでるネギを尾行だぜ。

 

 

フフフ、やってるやってる、ホレ薬を作ってるぞ。
ネギは誰にも見つからんように林の中で怪しい薬を作ってる最中。
俺の知識、呪文、時間、場所から推定すると、あれは魔法薬のホレ薬だ。

「これを飲めば人間はおろかあらゆる異性にモテモテに……アスナさんきっと喜――

「ハッハッハ、ネギ!面白そうなものを作ったじゃないか、
明日菜に渡そうとしてもお前が逆に飲まされるのが目に見えている。
というわけでそれはオレが頂こう」

ネギが走り出す前に、隠れていた木の陰からネギの目前に出る。
突然の俺の出現に呆然としてるが、その手に持つ瓶をひったくってと。
オレの物はオレの物、お前の物もオレの物ってか。

「ありがとう、この礼は……多分いつかするからなぁ」

「え、あっ、待って下さい仁さ〜〜〜〜ん」

ネギが気づいた時にはもう遅い。
すでにオレは人通りが多いとこに出たから魔法は使えない。
このまま逃走するぜ。

 


 

 

「撒いたか。お、丁度いいところに、士郎〜」

「どうした?」

「身長を伸ばして、パワーアップしてくれる秘薬をネギが作ったんだ。飲まないか?」

「…………いや、いい」

「なぜだ!?」

「鏡を見てみろ、その表情だと信用できないってことだ」

チッ、失敗か。
ちょいと興奮しすぎたぜ。
しょうがないか、とりあえず水筒に移そう。
そして断った君にはこの台詞だ!

「後悔するなよ、もうあげないからな!」

「………………………」

フッ、何も言えなくなって今頃後悔したのか!?
じゃぁ、もう1人のターゲットのとこに行くか。

 

 

 

ついたぜ、この和の雰囲気、そして茶道部という看板!
まさしくここだ、ここに居るはずだ!

「ケケケ、マサカ御主人ニヤル気カ」

「フフフ、そのまさかよ――たのもぅ!」

戸をバーンと開け、オレの視界に入るのは目的のその人。
他に人は……丁度よくいないな。

「何のようだジン?」

「よくぞ聞いてくれた」

予想外の訪問のせいかムスっとした顔をしてるエヴァに、
ふところに持っていた水筒を取り出し、見せてやる。

「これは、士郎、ネギ、そしてタカミチに作らせた不老の人でも体の年齢の時を経過させる秘薬だ」

「何だと!? そんな物があるわけ……いや、シロウも関わっているのなら……」

全て嘘だがな。
さっきの士郎の時とは違って、今回は油断はない。
絶対に気づかれない自信はある。
……迷ってるな! よし、とどめだ!

「いつもお前には迷惑をかけてるからな、せめてものお詫びだ」

「ジン……」

うっ、やりすぎたか。
エヴァの涙目になって感動してるような表情に罪悪感がイパーイ。

「そういうことならありがたく頂こう。そうだな、ジンも半分飲むといい」

なんですと? 予想外の返答だ。
しかしここで断るとやばい、どんな鉄槌が下るか……
……すでに用意し終わって満面の笑みで待ってるし早すぎるぞ。
後いつもこんな風だったら可愛いのに……じゃなくて。

「では乾杯だ!」

「あ、ああ……」

もうやけだ! アディオスオレ。

 
―――――――ゴクン。


思ったより味は悪くはない薬だ……どうしよう。

「む、体が熱くなってきたがこの薬の副作用みたいなものか?」

「いや、すまん」

「何を言ってい……………うっ……………ジ……ン………」

エヴァの顔が赤くなって言いにくい表情になってきてるぜ。
すでに効果がでてきちまってるのか、このままいくとオレも……やばいな。

「また今度なエヴァ!」

 「待てジン、何処に行く」

離れればさすがに効果も薄くなるだろう。
オレはとにかく必死に逃げる。
理性が途切れる前に!!!

これの対処を出来る人物は何人かは居るけど、
今は一番信用に値する人物に携帯で連絡だ。ピッピッとね。

「士郎か? すまんが罰があたったみたいだ。
ルールブレイカーを俺に刺してくれるとありがたい」

『切羽詰ってるな。自業自得だ。……で何処にいるんだ?』

士郎はなんだかんだ言っても結局は助けてくれる。
他に頼めるメンバーはタカミチとじぃさんだったが、
タカミチは忙しそうだし、じぃさんに頼むと嫌な予感がする。

「ああっと。今、茶道室を出て――――

「仁く〜〜〜ん」

アウチ、タックルされたぜ。
ってああ! 携帯が、吹っ飛んで壊れちまった。
新機種で高かったのにぃ。

「うぅ、このかすまんが離してくれ」

「何でや〜、いいやんか別に〜〜」

精神衛生上全然いくない。
うわーん、どうすればいいんだよ。
女子を突き飛ばすのは気が引けるぞ。

「このちゃんばっかりずるい、私も〜」

げっ、刹那。このか見張ってて一緒に薬の効果にかかっちまったのか。
だが、お陰で隙が出来て抜け出せた。さらばだ少女達よ。
あと刹那はまだそんなに砕けた風になっちゃいかんだろ。

 

 

 

とりあえず広間にきてみたぜ。
今は人もいないし、ここなら士郎もすぐ見つけてくれるはずだ。
いや、すぐに見つけてくれ士郎〜!!

……このまま悪いことが起きなければいいがなぁ
―――って何か飛んできたぞ!
今のは銃弾!? 龍宮隊長か!

「フフ、私のために死んでくれ」

「屈折しすぎだろ」

予想通りの人物。しかも、両手に銃を持ってる。
ネギの作った薬、強力すぎねぇか……

「オレニ当テサセルナヨ」

命令口調なチャチャゼロ。
チャチャゼロの言う通り、当てさせるような気はない。
隊長相手でも修行したオレなら、銃身を見て軌道を予測……………………デキルワケネェダロ。
自分はまだまだ修行不足です。

「うぉぉぉぉ! オレの命が風前のともし火だっ! 士郎〜〜〜」

 

 

 

 

  side―衛宮士郎―


『今、茶道室を出て――プツッ』

切れたな。
仁はかなりピンチな状態ってことか。
早く助けに行ってやるか……自業自得なんだけどさ。

お、向こうにいるのはネギ君かな。
俯いて何か考え事してるみたいだが、手伝ってもらおう。

「ネギ君、時間あるかい?」

「あ、士郎さん。大丈夫ですがどうしたんですか?」

「仁が何かやらかしたらしい、一緒に探してくれないかな」

「まさかホレ薬を飲んで!?」

仁が持ってたものはよくないものだとわかっていたが、ホレ薬だったとはな。
茶道室から出たってことはエヴァに飲ませようとして失敗したのか?

「多分そのホレ薬を飲んだみたいだ。かなりやばいみたいだから急いで探さないと」

「わかりました。あれを作ったのは僕ですし……」

「そんなに気負う事はない。悪いのはネギ君からホレ薬を奪い取った仁さ」

ネギ君の頭をポンと撫でて励ます。
奪い取ったとは聞いてないけど、アイツの事だからそうしたんだろう。
……そんな事、考えてるより早く仁をどうにかしないとな。

「よし、その杖に二人で乗れるか?」

「多分大丈夫だと思いますが」

「じゃあ校舎の全体が見えるところまで飛んでいってくれ」

ネギ君が杖を跨ぎ、俺がその杖に立つ。
杖は風の力を受けてか、ドンドン上昇していく。
空飛べるって便利だなぁ、俺も……できないか。

さて、仁は何処にいるかな―――――む、広場にいる。
それにあの色黒の背の高い人は、

「ネギ君、あそこの広場まで急ぎ飛んでいってくれ。早くしないと仁が龍宮さんに撃たれて死にそうだ」

「ええ!? 大変だ、急がないと!」

うぉ、スピードアップしたぞ。
速い自動車ぐらいの速度っていったところか。
それでもギリギリになりそうだな。
備える物は干将・莫耶、それにルール・ブレイカー。


―――投影、開始トレース・オン。ネギ君離れていろ!」

【干将・莫耶】で銃弾を弾くため仁と龍宮さんの間に立つ。
サイレンサー付きの銃、指の動きと銃口の角度と経験から撃たれる銃弾を推測。
すごく精密な連射だ。1,2、3,4………………全部打ち落とせたかっ。
次が来る前に仁を解呪しないとっ!

――――“破戒すべき全ての符”ルール・ブレイカー!」

仁にルールブレイカーを突き刺す。
オーケーかな? これで済めばいいんだが……

「ん? 私は何をやってたんだ?」

ふぅ、龍宮さん正気に戻ったみたいだ。
今までの記憶がなかったのか周囲を見渡して場所を確認してる。

「同級生を殺めそうになってただけだ隊長。士郎、ネギありがとな」

「その口調だと大丈夫みたいだな」

「風穴アイタトコ見タカッタノニナ」

「はぁ……よかったです」

一件落着だ。
チャチャゼロは実に残念そうだが、ネギ君はホッとしてる。
生徒が撃たれそうになったしなぁ。

仁を殺めそうとしていた龍宮さんは不思議そうな顔して帰ってったな。
それにしても大変だった。ホントに仁の自業自得だけど。

「仁、汗がひどいな。寮の風呂の時間が丁度、俺達だし行くか?」

「行くとしよう。リラックスしたい気分だしな。ネギも行くぞ」

「いえ、僕は遠慮しとき……」

「そう言うな。裸の付き合いも必要だろうがぁ」

……助けてもらったってのに引きずるなよ。
せめて抱っこにした方が、な。

 

 

 

 

 

  side―防人仁―


さっきは危なかった。
もう少しでこの世からおさらばするところだったよ。
助けに来た士郎はまさに救世主だったぜ。
こっちに来た時とコレで助けられたのは二回目だな。
いつかは借りを返してやらないとなぁ。

そんなこんなで所変わって、風呂場でオレと士郎でネギを洗濯中だ。
ネギはまだ一人じゃ洗えないと言う、特に頭はアウト。

「強くなるのもいいが、風呂ぐらいは一人できちんと入れるようになりなさい」

「あぅぅ」

「まだ子どもなんだからそんなに強く言わなくてもいいだろ」

士郎は甘いのぅ、そんな甘さで何人もの女性を落と……っと話が逸れたな。

「よし、これでいいな。皆で湯に浸かりにいくかぁ」

備え付けのシャワーで一気にネギの体を洗い流す。
ちなみに今まで一緒だったチャチャゼロは脱衣所の隅っこでお留守番だ。

入る風呂場の目標は最も奥。
仁選手、勢いよく駆け風呂場に飛び………………込みはしない。
エヴァのとこの風呂も広かったが此処はそれ以上に広い。
いつも飛び込みたくなるような感じがする風呂場だけど、そんなに深くないからな。
頭打って血を流したりしたらシャレにならん。

「ふぅ、生き返るぅ」

ゆったりと湯に使ってお約束の一言。
丁度いい温度だ。心も体も癒されるのぅ。

「あぅぅ」

士郎は普通に入ってるが、ネギには熱い湯だったか。
目を搾るようにして我慢してるのが目にとれる。

「ネギ、我慢せずに他のところ入ってこい。オレ達もすぐ行くさ」

「はぃ……そうさせてもらいます」

そう言って、ネギは入り口近くの湯がある場所まで歩いていく。
ん? 扉に影?

「仁! 女子が来たみたいだぞ!」

「げ、来るの早すぎるだろ」

ネギが早速、女子に捕まってる。
ここはネギを生け贄にして、視線が集まってるうちに、って無理だな。
2−A全員いるんじゃないのか? とりあえず粘っててくれネギよ。

「まさしく絶体絶命、さらにエヴァに会うと大変な目になる」

「エヴァと仁とのことはいいとして、脱出方法を考えないとな」

どうでもいいって、この白状者っ!
脱出できれば今んとこ問題ないけどさ。

「魔力多く消費しちまうかもしれないがシュノーケルっぽいもの投影して、
周りこんでここを出るとよさそうじゃないか?」

「うーん、他に案が浮かばないしそれでいくか」

アホな案とは言わんでくれ。早速、行動開始だ。
頑張れオレ、今日の再三の死の危険を逃れるために!

「気配! 何奴!?」

行動に出る前に刹那に見つかっちまったよ。
こうなったら強行突破しかねぇぜ。

「士郎! 刹那から斬岩剣がくる。
前方にロー・アイアスを展開しオレ達の姿を眩ませ、
その次に女子達の前に駄剣を何本か降らせてくれ。できるか?」

「ロー・アイアスって……まぁ善処しよう」

オレ達の色んなものがかかってるんだ。
内容は痴漢、変態、覗きの三種類の容疑。
頑張ってくれ士郎ぅ。

「神鳴流奥義! 斬岩剣!!」

――――熾天覆う七つの円環ロー・アイアス!!」

防いだ! 見事だぜ。
ついでにオレが風呂の湯を撒き散らせてなるべく視界を悪くさせとく。

「行くぞ士郎!!」

「ああ。――投影、開始トレース・オン!」

計画通りに士郎が行動していく。
このまま出口まで脱出だ!
ん? 金属同士がぶつかった音?

「仁、長瀬さんに全て防がれたぞ。駄剣じゃ切り抜けれなかったみたいだ」

「……ジン、何をやっているんだ?」

中忍のこと忘れてたっ! 
ていうかこのクラスだと宝具レベルの使わないと全然ダメそうね。
あと金髪な子の声が聞こえたような気がするけど気のせいだよな?

「何をやっていると聞いているんだ」

……背後に居るな……幻聴じゃなかったか。
最早我が命これまで……

さて、オレはタオルはちゃんとしてるから大丈夫だ。
それと目は瞑ってる。変態扱いは受ける可能性はあるが一応、マナーとして……

「ネギと士郎と三人で仲良く風呂に入ってただけさ」

「ほぅ。そうか、そういえば今日の放課後に何かあったな。
フフ、何か言い残す言葉はあるか?」

「そうだな、良い彼女が欲しかった」

 

オレの意識はここで途絶えた………死んでないとは思う。

 

 

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