side―防人 仁―


いよいよ今日から中3だ。
こっちにきて色々なことが立て続けに起きて飽きない毎日だな。

そんなこんなで、オレと士郎は始業日早々と遅刻しないよう学校に走っていく。
走っていくとは言ったが住んでるところからだ。オレの周りの女子生徒どもは電車を使ってるんだがな。
まぁ、これも体力を付けるためなんだとよ。あと、お金を使わないためか……共感はできるが、ケチすぎるぜ。

 

 

 

 

「「「「「3年! A組! ネギ先生〜!!」」」」」

それはきんぱっさんだろ、何でパク―――
……これ以上は何か抑止力がかかって言えないぜ。
些細なことだし、定番だからありだけどさ。

「改めまして、3−A担任となりました。これからもみなさんよろしくお願いしますね」

みんながはーいと言ってまた騒ぎ始める。
ええ、この五月蝿さは何時になっても変わりません。
む? エヴァのやつネギを睨んでるな、そろそろ行動開始か?

「士郎、ここら辺からバトル的なものが起こり始めるぜ」

「そうは言っても俺達は毎日戦闘しているじゃないか」

「ジン、わかっているのなら手はだすな」

フフ、釘をさされちまったよ。
何と言われようがオレは手を出すさ、フハハハハハ!

おっと笑い声が出てしまったか、ちぅとゆえに見られたぜ。

「で、ではみなさん身体測定だそうなので、今すぐ着替えて下さい!」

「キャー、ネギ先生のヘンターイ!」

「何故、仁がその台詞を吐く」

フッ、甘いな士郎。
何が甘いのか自分で思っててもわからんが、
とにかくこの教室を出ることにしよう。
オレは変態扱いされたくないからな。

 

オレの後にネギと士郎も教室から出てきた。
それでオレ達は何処で身体測定すればいいんだろ。

「ネギ君、さっきの発言は子どもの内はいいが紳士として駄目だ」

「あぅ、すいません」

士郎よ、その発言からするとネギに紳士の心得を今まで教えてたのかよ。
お前は紳士って言うより執事って気がするが、紳士って言ったら紳士か。

「で、ネギ。オレ達は何処で計ればいいんだ?」

「あ、言うの忘れてました。保健室だそうです」

「じゃぁ早速行くか士郎、この体になってから身体のデータわかってないしな」

ネギがハテナマークを頭に浮かべてるぜ。
今のは知ってる奴以外、意味不明な台詞だしな。

 

 

 

「士郎は167cmの58kgだな」

第5回聖杯戦争時の時の身体じゃねーか。
ちなみにオレには第5回聖杯戦争の時のキャラの身体のパラメータが頭の中、今はほとんどノートだが入ってるぜ!
冬木の女性のデータは……言うのやめておこう、消されそうだしな。
では計るとしようかね。

む、目の前のカーテンが閉まってるが誰か寝てるのかな。
誰でもいいけどねぇ。フッ、覗かれないことを願おう。

「仁は身長が170……いや169か、それと体重は57kgだな」

士郎より身長は高いのに体重は少ない、筋力の差かな。
んー、まだまだ鍛え足りないのか、体質なのか。

とりあえず服を着ないとな。
むむ、外からこっちに向かって走ってくる音が聞こえるような……

「まき絵! 大丈夫……って仁!? あんた何やってんのよ!!」

アスナの鉄拳が飛んでくるが服を着ている最中でかわせないっ!?

「ぐがっ……」

「……神楽坂さん、仁はここで身体測定やってただけで彼女には何もしていない」

「えっ、あ、そうなの? あはははは、何か悪いことしちゃったかな」

うぅ……士郎よ、どうせならアスナの鉄拳止めてくれてもよくなかったか?
お前なら楽に止められるだろうが……

「2−Aの女子達がどんどん来るみたいだ、早く着替えないとまた食らうぞ?」

その通りだな、ちゃっちゃと着替えてと――
フッ、着替え完了。かかった時間実に5秒!
それだけ早いのならさっきも出来ただろって?
人間必死になるときは恐ろしい力を発揮するのさ。
あと、口の中が痛くて喋るのがつらいから言葉は発してないぜ。

2−Aの奴らがぞろぞろと入ってきた。
数は3分の1程度か、保健室だし多すぎても迷惑だからな。

さて、まき絵の方は……ぐっすりと寝てるようだ。

「どうやら佐々木さんは貧血のようだな。ネギ君はどう思う?」

「あ……えと、士郎さんと同じ考えです」

貧血、まぁ確かにそうなんだろうがな。
エヴァに襲われたはずだからねぇ。

「それではみなさん先に戻っていてください。
少しまき絵さんの様子を見てから僕も行きます」

オレと士郎とネギ以外の人は保健室からゾロゾロと出て行く。
思った以上に素直、つーかオレ達だけ残ってるのに不審に思わないのか……信頼されてるのかね。

「ネギ君、本当のところはどう感じた?」

皆が出終わると士郎がネギに質問。
さっきの答えは半分正解ってところだからな。

「何か魔法の力が感じると思います」

「そうか、それで仁は何かわかってるんだろ? 俺も薄々わかってるしな」

そんなとこでオレに話を振るなよ。
別にいいけどさ。

「士郎の考えてることで合ってるはずだ。
ネギ、俺たちには頼らないで自分で解決してみろ。
これはお前がやらないといけないことだからな、任せたぞ先生」

ポンと肩を叩いてやったネギが黙り込み、オレの方を見る。
ネギがやらないといけないことだが、オレも影から参加させてもらうけどな。

「捻リ潰サレルカモナ」

チャチャゼロが保健室の机の上から楽しそうにしてる。
そんなこと言うとネギが泣き顔になるだろ……

 

 

 

 

 

時と場所が変わって、夜の桜通り。
オレ達は草木の陰から桜道通りを覗いている。
チャチャゼロはお留守番だ。

―――そろそろ来る頃だな。

「仁、ネギ君に任せるんじゃなかったのか?」

「フッフッフ、任せるとは言ったがオレが何もやらないとは言っていない」

屁理屈だと小言で言うのが聞こえたぞ。
何を言われようがいいさ、オレはオレの動きたい時に動くんだからな。

「あと、このバスタオルは何に使うんだ?」

士郎の手にあるのはバスタオル、高い値段の良質なやつだぜ。

「それはもうすぐわかることだ。それより来たみたいだぞ」

士郎に示したところにいたのはネギ大好きの本屋ちゃん。
こわくな〜いと自分に言い聞かせ歩いている。
これが真の萌えってやつか!?

「……宮崎さんと反対方向にいるのは……エヴァか」

「ギリギリまでネギがこない限りは手を出さなくていいからな」

そう士郎と言い合ってる合間にエヴァは本屋ちゃんに近づいていく。
……エヴァは楽しそうに笑ってるな。
見るからに悪役なオーラが出てるぜ。

「僕の生徒に何をするんですかーっ!」

ナイスなタイミングでネギが杖に乗って登場。
素晴らしい、やはり君は主人公だ。

――ネギの風魔法か、かっけーな。
でも全部エヴァにレジストされてるぜ。

「この力、さすが奴の息子だけはある」

「えっ!?」

また悪役みたいに笑い、ネギに言うエヴァ。
そして瓶のような物を投げネギに向かって魔法を撃つ。

本屋ちゃんを抱えるネギはレジストし――
レジスト仕切れなかった分のせいで本屋ちゃんの服がなくなった。

ネギがかなりあたふたしてるぜ。
そりゃぁ生徒の服がなくなったんだもんな、目の前で……
お、このかにアスナも来たみたいだな。

「ネギ君が吸血鬼やったんや〜」

「ち、違います。誤解です!」

さらにテンパるネギ、そのやりとりの間に逃げるエヴァ。
そのことに気づきネギは女子三人を置いてエヴァを追いかけていく。

「さて、ついにタオルの活躍の時間だ!」

「……………」

何故黙っている士郎。
はっ! そうかお前目がいいから見えてしまったってことか、顔が真っ赤だぜ!!

「フッ、目が良すぎるってのも考えごとだな」

「何も言わんでくれ……」

士郎に気にせずオレは三人の前まで出て行く。
早くしないとエヴァとネギの戦い見れなくなるからな。

「あんた、何やってんのよ」

「フッ、そんなことはどうでもいい。本屋ちゃんにこのタオルを使ってやれ」

アスナにタオルを投げ渡しオレは目を背ける。
さすがにじろじろと見るわけには行かない。

「さて、それではオレ達はエ……いや、ネギを追いかけるから本屋ちゃんを送っていってくれ。いくぞ、士郎!」

士郎が草木の方からやっと出てきた。
顔がまだ真っ赤だぞ。

オレ達はネギとエヴァを追いかけるため走る。
アスナとこのかちゃんが何か言ってたが、まぁいい。

「士郎、何処に行ったかわかるか?」

「空を飛んでいるところだ」

「案内任せたぞ」

早くいかないとネギが血を吸われて可哀想だからな。
そういえばエヴァは呪いを解くために死ぬまで吸わせてもらうって言うよな。
そうは言ってもさすがに死ぬまではやらないか、エヴァだし……
何にせよ結局は止めさせてもらおうか。

ネギとエヴァは空を飛んでやっかいだが、鍛練のお陰でついていけてる。
オレも空を飛びたいなぁ……飛べたらなんて楽なんでしょうってな。

「ネギ君がエヴァを打ち負かしたみたいだ。あの建物にエヴァが落ちたぞ」

走ること数分、思ったより早く終わったな。

「エヴァは興奮してて気づかんだろうしオレ達もいこう」

 

 

オレ達が着いた時には茶々丸が出てきて、
茶々丸がネギの詠唱を封じてたころだ。

エヴァ達とオレ達の距離は約15mほど。
ネギに集中してるから気づかれる心配はないだろう。
あ、ネギが泣き顔になっている……エヴァめ、いじめっこだ。

「エヴァが血を吸おうとしたら牽制してくれ」

「仁の血だけじゃ足りないのか……ネギ君の血も狙うとはな」

言いながら弓と矢を投影する士郎。
ん? オレの血……? ……エヴァのやつ勝手にオレの血吸ってたのかよ!
寝てる時か? 気絶してる時か!?

「フッ―――

士郎が矢を射た。
すでにエヴァがネギの血を吸おうとしてたのか。
エヴァと茶々丸が矢を見て驚いた顔してるな。

「む、シロウにジンか……手を出すなと言っといたんだがな」

風に乗ってエヴァの呟くような声が聞こえる。
そしてエヴァは諦めたのかネギを離し――
―――突然やって来たアスナに蹴られた。

「はぶぅぅ! あぶぶぶぶーっ!」

エヴァが顔を地面に擦らせながら奇声をあげる。
フッ、あのエヴァが……かなり笑える。
士郎まで大爆笑、とまではいかないが笑いを堪えてるぜ。

「いやぁ、面白いものが見れたな」

「そうだな」

む、エヴァと茶々丸が逃げようとしてるな。

「くっ、覚えていろ、ぼーやに神楽坂明日菜……それにジンとシロウ!!」

オレ達の笑い声が聞こえていたせいかエヴァは顔を真っ赤にして去っていく。
これはアスナに知られてしまったか? 今まで隠して来たんだがな。
とにかくアスナとネギのとこに行くか。

「仁に衛宮くんって……あんた達なんでこんなとこに?」

「フッ、まだ気がつかないのかアスナよ。
オレ達はエヴァと同じ悪い魔法使いなのだよ!」

「そうなんですか! 士郎さんに仁さん!」

「意味わからんこと言うな仁」

ぐぅ、士郎に怒られたよぅ。
正直に言うか、今のアスナとネギの表情には満足したからいいんだけどね。
ガガーンって効果音が入ったような顔だったからな。

「まぁ正直なところは唯の見物人さ」

「見物人って……あんた達も魔法使いであってるのよね?」

「うーん、正しくは俺は違ってるし仁もそこの所ははっきりしないからな。
まぁ、魔法使いと思ってもらってかまわないけど」

アスナわかってないような顔してるな。
今の士郎の説明はわかり易かった気がするけど、さすがバカレッドだ!

「フフ、今回オレ達が助けたのは気まぐれだ。次はないからなネギ」

そしてオレ達は今まで居た建物から飛び降りる……
失敗した、これは高すぎるぜ。20mくらい?

「すまん士郎、調子こいた。着地任せていいか?」

「大丈夫だ仁、今のお前ならこれくらいは平気なはずだ」

はずって……
しかし、援軍は求められない。
自分を信じるんだ防人仁!!!

 

――何とか着地っ。
足がじーんときたが……無傷か、よかったぁ。

「言った通りだろ?」

「うむ、いやそれにしてもこの体の成長ぶりにはびっくりだわ」

この素晴らしい成長に乾杯だー!

「だがこの世界で生きていくにはまだまだだがな」

士郎の言葉は、宝くじが当たったと思ったらその宝くじが去年のだったという感じのダメージ。
オレのテンションを急落させる一言だぜ。余計な事は言わなくていいのに……

「厳しい一言ありがたくいただき申す」

「日本語おかしくないか?」

「……………」

 

……帰ってチャチャゼロと晩酌でもして、この気持ちを晴らすとするか。

 

 

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