side―衛宮士郎―


仁は帰ろうとは言ったが日課の修行をするためエヴァの家の前まで来た。
しかし俺達は入ることはなく周りでうろうろとしている最中。
理由は先ほどあったエヴァが血を吸う前に止めて,
何を言われるか堪ったもんじゃないから入りにくいという訳だ。

「……エヴァも大人だし、気にしてないはず。仁、早く行かないと朝になってしまうぞ」

「そうだと良いんだけどな」

「ケケケ、御主人ハ怒リ狂ッテルト思ウナ」

俺の言う通りであって欲しいが、チャチャゼロの言う通りかも知れないな。
けど、このままじゃ埒があかないし、行くとしよう。

俺と仁は堂々と……ではなくこそこそと地下室の別荘を目指す。

「フフフ、何のようだ貴様等」

「先ほどはどうも、衛宮さんに防人さん」

早速見つかってしまった。
絡繰さんは気にしてないみたいだがエヴァは明らかに怒ってる。

「ネ、ネギ君が血を吸われたら可哀想だから……な」

「フフフ、そうか私の呪いよりぼーやの方が大切か」

さっきより怒り度が50パーセント増しです防人さん。
今の俺の言葉は間違ってたか?
 
そう思っていたら仁が並んでいたが俺の前に出る。

「フッ、呪いも大変だがそこまでする必要はないはずだ。エヴァ、お前は光の中で生きろと言われたんだろ?
それならばもう少しでいい――光の中で生き、本当に良いと思ったらオレか士郎が呪いを解いてやるさ」

仁が良いこと言ってるな。そしていつもにはない爽やかな感じがする。

「エヴァ、ゆっくりでいいから考えてくれ」

ふむ、今日の特訓は休みにしたほうがいいかな。

「俺達は帰ることにしよう。いいか、仁?」

「ああ、じゃぁ二人ともお休みだ」

「お休みなさい、衛宮さん、防人さん」

「……………」

エヴァは喋らなくなったな、さっきの言葉を気にしてるのか。

 

 

 

 

帰宅完了、今の時刻は23時ごろってところかな。
仁は机の中から出した丸秘と書いたノートを見ている。

「えーっと次は……オコジョ……か?」

オコジョってあの動物のオコジョでいいのか?
一体何の関係があるんだ。

「ケケケ、妖精カ」

チャチャゼロも見てるがいいのかよ。
それにオコジョの妖精か……

「女子の下着と白い物体に注意したほうがいいぞ士郎」

下着と白い物体ってどこにオコジョ要素が加わってくるんだ。
もっと詳しく教えて欲しいが最低限のことしか教えてくれないからなぁ。

「それじゃあ今日は風呂に入って寝るとしようぜ」

「ふむ、明日も早いからそうしようか」

修行はなしだが、次の時に倍にしてやろう。

 

 

 

 

 

「朝か……」

「おはよう士郎」

「おはよう、って早いな」

部屋に置いてる時計の針は4時半だ。
仁が笑顔で挨拶を返しきた。
何かやってるが、パソコン見てるのかな?

「何見てるんだ?」

「昨日はちぅちぅのホームページ見るの忘れてね、今見てたところさ」

長谷川さんが書いてるやつか。
俺も見せてもらったことあるけど、長谷川さん別人だなと思う文章が沢山書かれていた。
女の子って裏表ある人が多いのかな?

「朝ごはん作らないとな、手伝ってくれ」

おぅ、と仁が言い、オレ達は早速朝ご飯を作ることにする。

 

 

「ごちそうさんだ」

「お粗末様でした」

「いつも男二人で朝飯とはな、ここ女子寮なのに寂しいぜ」

もっともだと言える。
けど女子が男子の部屋に入るってのも気が引けると思うな。
うーん、今度このかちゃん辺りでも誘ってみるか。一度来たきりだからなぁ。

「……仁、時計の針が動いてないように見えるんだが」

「何!? 士郎が直したのに、またあの時計壊れたのかよ。
ってもう8時じゃねぇか、次から超かハカセに壊れない時計作ってもらうかぁ」

とにかく洗いものは台所に置きとりあえず水にだけは浸けとく。
俺はいつも通り勉強道具が入った鞄、仁はノートパソコンを鞄に入れてを持つ。
この学校はパソコン等自由に持っていって良いみたいだ。自由な所で良いと思うな。

部屋を出ると神楽坂さんがネギ君を背負って学校へ向かおうとしていた。

「おはよう神楽坂さん、このかちゃん、ネギ君」

「おはよう士郎くん、仁くん〜」

「今日はあんた達遅いわね」

「おはよう皆の衆。フフ、臆したかネギよ、先生なんだからしっかりしろ」

皆で挨拶を交わす。
ネギ君は昨日のこともあってか学校に行きたくないみたいだな。
そのためか仁は何故か偉そうな口調でネギ君に言う。いつもの調子に戻そうとしてるのか?
それとも単にからかってるだけなのか……

「そ、そうですね。頑張ります……」

神楽坂さんから降りて自分で歩くみたいだが、まだ沈んでる状態だな。
エヴァに会うのが嫌なんだろうが。

「ネギ君、朝から仕掛けてくることはないから堂々としてればいい」

ここの所はエヴァでもわきまえているだろう。

む、学校に早く行かないと新田先生に怒られてしまうな。

「では、走るとしよう」

皆にそう言い、遅刻しないよう全員で走る。

ネギ君達と一緒のため今日は電車を使用だ。

 

 

 

 

「ふぅ、何とか間に合ったぜ」

「おはようございます皆さん」

「おはよう絡繰さん、エヴァ」

教室に入るとエヴァと絡繰さんが立っていた。
エヴァの機嫌は見た感じは余りよろしくないようだ。

「サボタージュではないのかエヴァ?」

「……フン」

仁が丸秘ノートを見てエヴァに尋ねる。
予定ではエヴァがサボることになっていたのかな。

「フッ、学校に来ることはいいことだ。まぁお前の体質だと眠いだろうがな」

 仁がエヴァの頭を撫でながら嬉しそうに言う。

エヴァの体質――吸血鬼か、そういえばいつも眠そうだもんなぁ。
そんな状態で授業出ても意味ないような気がするんだが……
いや、出るだけで変わるか、そうだよなぁ、うんうん。

「クッ……気安く人の頭を撫でるなぁ!」

顔を真っ赤にして怒るエヴァ。だが仁はそれを軽々とかわす。

いい動きになってきたな、教える者として嬉しいぞ。

「この調子だと大丈夫そうだな、どうだネギ君?」

「はい、そうみたいですね」

ネギ君はまだ本調子ってわけではないが、十分良くなっただろう。
さて、そろそろ授業だから席に着かなくては。

 

 

 

「このままではやばい。流れが変わりすぎた」

ネギ君の授業時間、仁がいきなり俺にしか聞こえない声量で声をあげる。

「このままではオコジョイベントが起こらない可能性があり。
早々と策の思案、その後行動に移る」

何故か独り言で話を進めていく仁。怖いぞ……
そして何やら紙に文字を書き始めた。何て書いてあるんだ?
うーんと、『ネギ先生が陰で元気を無くしている、クラス総出で元気をつけること求められし』か。

「委員長、双子、パル、朝倉の5枚書けばいいかな」

周りにすぐ広めそうな5人か。
特に委員長さんが一番先に気づいて叫びそうだな。

「む……」

「どうしたエヴァ? トイレに行きたくなったか?」

おい仁、女の子にそれは失礼ってやつじゃないか。

「うっさい、阿呆」

……エヴァのつっこみの切れ味がいつもより悪いみたいに見える。
つっこみの切れ味って俺は何を言ってるんだ。

「よし、できた。士郎、これからは更に小声で話そう。
出来ればこれを気づかれないように皆の机の中に入れてくれ」

「すぐの方がいいか?」

「できればな」

ふむ、では―――

――投影、開始トレース・オン

投影したものは、小さく細い短剣、その数5。
これにさっき書いた紙を巻きつけてと。

「士郎のやることは予想できたぜ。
面白い方法だな、だがあの四人に気づかれないようにやれるのか?」

仁が龍宮さん、長瀬さん、桜咲さん、クーちゃんの方を順番に示す。

「この身に不可能なことはない」

「うぉ、いつもでは考えられんほどの強気だな」

最初の狙いは朝倉さんの机の中、
そして入った瞬間に投影解除。

次に委員長さん、風香ちゃん、史伽ちゃん、早乙女さんの順に短剣を投げる。

「さすが士郎、手早くミッションコンプリートだな」

「どういたしまして」

誰にもバレずに済んだみたいだ。後は待つだけだな。

 

 

授業が終わりネギ君と神楽坂さんが教室を出て行く。
まず委員長さんがあの紙に気づいたみたいだ。

「あら、この紙は――ネギ先生が陰で元気がない!? どういうことですのー!」

そして次々と皆が机の中の紙を見つけ、
クラス全員でネギ君を元気づける会という物を開くことになったみたいだ。

「フフフ、これで完璧だ。後はオコジョの拷問を考えるだけだな」

「オコジョ? なるほど、そういうことか。ぼーやに助言者と」

エヴァが仁の言ったことに何か気がついたみたいだ。

二人の言うことを合わせてみると、オコジョの助言者ってことか?
オコジョが助言者になっても……どうなんだろ。

「フッ、いずれ気づかれていただろうがそういうことだエヴァ、
あと絡繰さんは一人で帰らせるなよ。もしそうなった場合はオレか士郎を呼んでくれ」

「フン」

やはりエヴァの様子が何かおかしいような気がする。

「ケケケ、御主人、仁ガ気ニ」

俺達の机の上にいたチャチャゼロがエヴァに投げ飛ばされた。

この高さは危ないな。

「アリガトヨ士郎。ソレニシテモ酷イゼ御主人」

何とかキャッチ……荒れてるなぁエヴァ。
むっ、そうか! 反抗期ってやつか!! それなら納得だな〜。

「ネギを追いかけるとしようか。士郎サングラスを投影してくれ、
あと、黒鍵……いや偽・螺旋剣を準備しといてくれ」

俺は便利屋ではないんだが、それに物騒なもの投影させようとするなよ。
オコジョ関係の話なのに何故そんな物が必要になるんだ。

 

 

 

ネギ君が3−Aメンバーに拉致……
いや連れていかれ現在俺達は風呂場前でサングラスを掛けている。
俺達は見るからに怪しいと思う。

「女子の悲鳴が聞こえた瞬間突入、その後白い物体に射ってくれ。
当たる寸前で投影解除が一番好ましい形だ」

今のでだんだん予想ができてきたぞ。

「キャーーー!」

悲鳴だな、入るとしよう。

――入ると女子の水着がどんどん脱がされているところが見える。
そういうことか、白い物体白い物体…………いた!!

―――“偽・螺旋剣”カラドボルク!!」

「真名解放かよ!」

仁のつっこみには気にしない、白い物体に神の鉄槌をっ!

俺が射たカラドボルグは白い物体の体を砕け散らせる1cm前で―――

投影、解除トレース・カット

―――――俺は幻想を消す。

ふっ、気絶したみたいだな。

「……では我々3−Aのエージェントがこの白い物体を駆除することにする。
君達はネギと遊んでいたまえ」

仁が白い物体のところまで行き呆然としてる3−Aの皆に説明、決してネギ君は助けない。
そして仁は気絶した白い物体を持ち早々と風呂場を出る。

「じゃぁ部屋に戻ろうか、ハッハッハ」

高笑いが多くなってきてるぞ、仁。

 

 

 

「それでアルベール・カモミール、君の行為は死罪そのものだ、検事衛宮士郎君が言ってるようにな」

「何で俺っちの名前を? それに死罪!? 弁護士はいないのか旦那達!」

俺達の部屋の机の上にいる縄で縛られた白い物体に向かって
仁は白手袋にサングラス、何時の間に用意したのかわからないスーツを着て、
机の上に両肘をつき手を組んでその手を口元に持っていった格好で白い物体に話している。
たまにサングラスを片手で上げたりしてる……そのポーズは何か威圧感を感じるな。

白い物体、いやオコジョの名前はアルベール・カモミール、
風呂場の件の帰りに仁に聞き愛称はカモと言うことみたいだ。

「弁護士はそこのチャチャゼロ君だ」

「ケケケ、裁判長ノ言ウ事ニ何モ異議ナシダ」

配役は仁が裁判長、チャチャゼロが弁護士、
俺が検事ということだが、明らかに配役の意味がないと思う。

「被告人、次に女性の下着を狙った瞬間君の死が決まることになる。
刑を与えることになるのは検事衛宮君だ」

カモがひいっと言い泣き顔になる。
というか、オコジョが話すとはこの世界は何を考えてるんだ。

「それでは被告人、ネギの所に行くがいい。
いいか、下着を狙うなよ。それと女性とネギを困らせるな。
そうだ、こっちで刑を決めるのもいいが君には以前に他の出来事もあったな。
それを本国に知らせてやるのも良いかもな」

仁の更なる脅しにより、カモはさらに泣き顔になりこの部屋から去っていく。
小動物虐待だが、女性の下着を狙う方が悪い。
それと縄を体に巻きつけてるから前足使えないんだが、二足歩行してる。すごいなあのオコジョ。

「そういえば、カモってなんのために来たんだ?」

多分、今日の昼ごろにエヴァが言ってた助言者だとは思うけどな。

「奴は自分の国で犯した下着ドロの罪のためネギの所に逃げてきたのさ、
あと、エヴァが言ってたように助言者かな」

オコジョが下着ドロ……さっきのこともあるし、
納得できなくもないが、最低だな。それに助言者はついでかよ。

「じゃぁ明日は大変だし寝るかぁ」

いや、寝るのは間違いだ。
昨日はエヴァの機嫌が悪くて修行ができなかったから、
今日はメニューを倍と決めてあったしな。

「ぐぉ、襟を引っ張るな。士郎の鬼ぃ〜」


俺はまだ優しいほうだと思うんだがな。ではきっちりとやって行こうか。

 

 

 

 

  side〜ネギ・スプリングフィールド〜


昨日、エヴァンジェリンさんが桜通りに現れる吸血鬼とわかり戦いました。
一時は僕が押していたのですが、エヴァンジェリンさんの“魔法使いの従者ミニステル・マギ
の茶々丸さんの介入により負けてしまいました。

エヴァンジェリンさんから聞いた“魔法使いの従者ミニステル・マギ”とは、
僕達、魔法使いは呪文詠唱中には無防備になるので剣となり盾となるパートナー、
と言うことなんですが、今やそのパートナーは恋人探しの口実なってるそうです……
――と、とにかく恋人云々ではなく、僕にはパートナーが居ないのでエヴァンジェリンさんに敵わないと言う事です。

エヴァンジェリンさんの目的は父さんに掛けられた呪いを解くため、僕の血を吸う事ということでした。
その場は仁さんと士郎さん、アスナさんに助けてもらい無事で済みました。


そして今日は、仁さんと士郎さんの言葉でいつもと変わらない様に振舞っていたつもりですが、
3−Aの皆さんには気づかれていたみたいで、僕を元気付ける会を風呂場で開いてくれました。

その最中に白い物体が皆さんの付けていた水着を次々と脱がす事件が発生し、
大変な惨事になっていましたが白い物体が皆さんと間を空けた時、
風呂場の入り口の方から何かが暴風と共に白い物体に飛んで来たと思うと、
白い物体が動かなくなり、それをサングラスを装着した仁さんが手早く回収して、
その場は落ち着きました。

先ほどの元気付ける会の内容は少し無茶苦茶でしたが、とてもありがたかったです。
今は途中から風呂場にやって来たアスナさんに連れられて、
自分の部屋に戻ってきています。

「ネギの兄貴〜、助けて下せぇ」

「だ、誰!?」

いきなり何処からか声が聞こえてきました。
それに僕に助けを求めるとはどういったことでしょう?

「俺っちだよ、ネギの兄貴。アルベール・カモミール!」

「え、カモ君! それにその格好は?」

下を見ると白い動物、オコジョのカモ君が縄で縛られた状態で居ました。

「近くの部屋に居る赤髪と人形、特に青髪にしてやられたんでさ」

仁さん達ですか、と言う事は風呂場で仁さんが回収したのはカモ君!?
あ、カモ君の縄をほどいてあげないとですね。

「おこじょがしゃべった……ってさっき、
風呂場で白い物体に下着を取られたって、みんなが騒いでたけどあんたの仕業ね!」

「ひぃ、許して下せぇ、もう勘弁でさー。
それに風呂場でのことはネギの兄貴のためにやったことなんスよ」

アスナさんがカモ君を手で握り潰そうとしてます。
カモ君が僕のためとは言ってますが、別に女性の裸を見たかった訳ではないんですが。

「兄貴、何か勘違いしてる顔っスね、俺っちの言ってることはパートナー選びのことっスよ。
さっき見てきたところ、3−Aにはきっとネギの兄貴のパートナーが……!!」

「何や何やさわがしーなー、誰か来とるんかー?」

はぅ、二度風呂していた、このかさんが戻ってきてしまいました。
カモ君には話さないでとサインをしましたが心配です。

「可愛え〜っ! コレ、ネギ君のペットなん〜!?」

このかさんがカモ君を抱いて――
皆さんに見せようと外に出て行ってしまいました。
僕じゃ止められないです……

「わー、フェレット? かわいー」

「さっきのはこいつやったんかー」

「仁くんが拾っていったのだよね?」

カモ君の下に皆さんが集まり、わいわいと話しています。
これは皆さんに聞くチャンスですね。

「あ、あの……僕のペットなんですが飼ってもいいんですか……?」

「いーんじゃないーー」

「この寮ペットOKだし」

よかったです、これでパートナー探しも楽になるかも。

皆さんが部屋に戻り、このかさんが許可証を取りに行きました。
今は僕達の部屋は僕とアスナさんとカモ君だけです。

「カモ君、どうして僕のところに来てくれたの?」

「そ、それは、兄貴の姉さんに頼まれて助っ人に来たんスよ」

僕のお姉ちゃん? ネカネお姉ちゃんがカモ君を寄こしてくれたんですか。

「それなら、お姉ちゃんにお礼メールを書かなくちゃ」

「あー兄貴、そんなの書かんでも……それよりパートナー候補がいたんスよ!」

カモ君が僕のクラス名簿を取り出し、
のどかさんの写真を指しました。

「この人っス、『すごくかわいい』とか書いて兄貴もまんざらでもないんじゃー」

あぅ、そんなことないんですが、
のどかさんは確かに可愛くて……

「とにかくしばらく考えさせてー!」


 

うぅ、これは大事なことなので一人で考えることに、
今日中には無理そうですが、明日には答えが出せるといいです。

 

 

 <<BACK  NEXT>>

 TOP

 

inserted by FC2 system