side―防人 仁―(Time goes back a little. )


じぃさんから修学旅行の説明を聞いた次の日。
学校が終わり少し時間が経った。
帰宅部のオレはチャチャゼロを頭に乗せ、あることをするため動いている。

「ケケケ、ボコボコニサレチマエ」

「フッ、オレはやれば出来る子だからきっと大丈夫さ」

まずは此処、中国武術研究会。
会うやつは麻帆良武道四天王の一人。
形意拳、八卦掌を主とし、八極拳と心意六合拳を少々使い、
色黒で身長は150台の語尾にアルをつける女子だ。
あとはバカレンジャーのバカイエローだな。

「くーふぇ、手合わせを願おう!!」

「む、じんアルか。手合わせなら喜んで受けるアルよ」

くーふぇと戦うとなると、もちろん剣は使えないし持ってきてない。
武器が壊れた時でも戦えるように士郎から学んだ時徒手空拳の戦法と鍛練で培った動きでやっていくつもりだ。

とりあえず、戦う前はいつも通りチャチャゼロを眺めの良い場所に置く、これ基本だぜ。

「そこのおっちゃん、合図してくれ」

くーふぇに弟子入りにしてきたのか、
ここの部員なのかわからないが大柄の大学生ぐらいのやつに言う。

「なんだと―――

歯向かいやがったので拳を入れて弾き飛ばす。
最近わかったことだが、オレは魔力を無意識の内に使用し肉体を強化するらしい。
実感はないし、他の魔法が全く使えないと言うのが何とも言えない。

「じゃぁそこのオッサン任せたぞ。
向かって来るならさっきのやつより吹っ飛ぶかもなぁ」

さっきの出来事を見て一番退いてるやつを指す。
みんな引いてるようだけどくーふぇは全然平気なのが悔しいな。

「では行くぞ、くーふぇ」

「いつでも来るアル」

互いに構え、男に任せた合図を待つ……

「は、始め!!」

先手必勝! くーふぇまで距離を詰め、腹部を右拳で狙う。

「ッ!」

左腕で流されたっ。カウンターが来る――

「ハッ!」

「ガッ……」

掛け声と共に馬蹄崩拳マーティーボンチュアン――
左足をやや前に出し両足で踏み込むことによって力が入れられた右腕の中段突きを食らう。

オレの知識にある技だが予想以上に速くてかわせなかった。
くーふぇめ、本気出しやがってるな。

「今ので気絶しないとはやるアルね」

「……せめて一撃ぐらいは入れさせてもらうぞ」

「ケケケ、モウ無理ダナ」

 

 

結果はチャチャゼロの言う通り無理のようで一撃も入れれず負けちまったぜ……
今度からもっと士郎に学んどかねぇとな。

まぁ、徒手空拳では明らかに実力差が浮き出る。
故に一撃目で決める、もしくは少しでもダメージを与えなければ、
オレの勝ちは薄かったってことだ。確か……未来のくーふぇ談だぜ、微妙に違ったか?

「ハァ……ボロボロだぜ」

「いんや、じんは良くやたアルよ。それに徒手空拳は専門分野じゃないアルね?」

さすが四天王の一人だ。
裏の世界はまだ知らないとは言え、一般人では最強の部類だしな。

「フッ、鋭いな。だが無手でも戦えるようしないといけないんでね」

よっこらせっとな。
むぅ、これから士郎との修行もあるし大変だぜ。

「じゃぁな、くーふぇ。修学旅行の三日目に期待してるぜ」

くーふぇには絶対に理解できないだろう。
そういう人間だしなぁ、良い個性ってやつかね?

チャチャゼロを連れ、この場から去る。
周りの見学者は……オレに手を出す気はないようだ。

「ケケケ、アト一人試スンダロウ?」

「それは明日だ。今日、二連戦はさすがに無理よ」

エヴァの家に真っ直ぐ向かうかな。
休みたいし、士郎には携帯で連絡して寮から後で来てもらえばいいだろう。

 

 

 

翌日、またもや少々時間が経った学校帰り。
士郎は先にエヴァの家に向かわせた。面倒だからな。

昨日の修行はいつも以上の地獄だった。
今日はさらに過酷になることは間違いないけどな。

そして今は剣道場の前、オレは剣が二本ほど収まる袋を持っている。

「道場破リダナ」

「当たらずとも遠からずかね、だが道場で戦う気はないぜ」

 何気ない会話をし、オレは息を整え戸に手をかけ一気に開く。

「たのもう! 桜咲刹那を借りにきた!!」

防具をまとい練習していた剣道部員と顧問の目がオレに集まる。
道場のやつらの視線に殺気のようなものが感じる、痛いぜ。
言葉間違っちまったか……何回もやってるが治らねぇな。

練習してた部員が一人寄ってきたな……たれに桜咲って書いてる。
わかりやすくていいねぇ。

「じ、仁さん……何の御用で?」

「手合わせを願いたい、という訳で早く着替えてきてくれ。
ここでやるにはさすがに無理な試合だ。
それにいくつか刹那には話しといた方がいいと思ってることもあるしな」

行きたいようで何か渋ってるな。
ああ、剣道部員の一員だし自分の一任だけでは無理ってことか。

――では顧問の先生、刹那は勝手ながら借りていきますので有意義な練習を再開して下さい。
文句があるようでしたら部員全員まとめてオレにかかってきてもいいですよ……蹴散らすからな

柔らかい声で道場全てに届くように言う。
最後の言葉は殺気を少し込めて小さい声で言ったつもりだが、みんなに聞こえてしまったようだな。
それとも殺気に反応したのかね。みんな後ずさってるし……もちろん気にはしないけど。

「ケケケ、心地良イ殺気ヲ放テル様ニナッテキタナ」

「それはどうも」

練習再開しないな、オレが道場に居るとやりにくいのか。
では外で待つとしましょうかね。

 

 

「お待たせしました、仁さん。
本当ならシャワーを浴びた方が良いと思ったんですが大丈夫ですか?」

「フッ、全く気にならんから大丈夫だ。
……このかを守るために、女子の部分を捨てたと思ってたんだが、
女子の部分は普通に持ってるな、可愛らしいことで何よりだ。
――――む、今のは言葉が悪かったか、すまん」

刹那がうつむいてしまった。
うーん、刹那のような純粋な女の子の扱いは慣れてないからなぁ。
エヴァは……別物のような気がする。きっと間違いではない。

「士郎ハ仁ニ侵サレテ、仁ハ士郎ニ侵サレテカ」

なんだよそれ、意味がわからねぇぞ。
――とにかく場所移動しないとな。

「林の方が良いかな。話は試合が終わってからにする」

「あっ、はい。わかりました」

 

 

林に着くとオレは持ってきた袋から剣を二つ取り出す。
一方はカラドボルク、もう一方はカラドボルクより劣る剣。
……士郎が剣の名前を言ってたが忘れたぜ。

チャチャゼロは――今回は枝の上に乗っけとく。

「余裕って訳じゃないが、この剣を使っても夕凪は大丈夫か?」

カラドボルクを見せて刹那に問う。

万が一これ使って刹那が常に持ち歩いてる長刀の【夕凪】が折れたりしたら大変だからな。

「すごい力を感じますね……でも、大丈夫だと思います」

もう一方の剣を士郎に作ってもらった意味なかったな。
後でエヴァにでもあげれば嬉しがるかね。

「本当に真剣でやるんでしょうか?
学園長からあなたの事を少々聞かせてもらいましたが、
魔力は持ってるとは言え一般人と変わらないと言われましたので」

じぃさん、刹那に説明してたのか。
ってことは多分隊長にも話がいってるな。
深いところまでは話してないようだが、それは当たり前の話だぜ。

「確かに魔力は持ってる。それに魔法は使えないと言っていい。
だが遠慮しなくていい、オレは刹那の強さも知ってる上で申し込んだんだからな」

「……わかりました」

「よし、開始の合図は任せたぞチャチャゼロ」

「ジャァ、始メダ」

ゲッ、随分早い合図だな。
――刹那も切り替えが早いっ。

「チッ」

オレの胴に狙いをつけた刹那の横払いを防ぐ。

防いでことによって打ち合ったが、夕凪が折れることはない。
やはり上等な刀だ、刹那が大丈夫だと言っただけはある。

 ――互いに間合いを空け一息、

「斬空閃!」

曲線の気を放った斬撃かっ。
これは飛んで躱すしかないな。

回避され目標を失った斬撃は、後ろの木々を薙ぎ払っていく。
森林破壊だぜ、刹那さん。

オレが足を着けたのは斬られることのなかった木。
体は地面と平行になっている。
木を蹴り刹那の懐まで飛び
――――

「むっ、相打ちのようだな」

「……仁さんがここまでやるとは思いませんでした」

オレは刹那の胸元、刹那はオレの首に互いの得物で寸止め状態。

くーふぇの時とは違ってすぐ終わったな。
しかし、今の動き考えるとこちらに来てからドンドン人間離れしていってるぜ。
そうならないと生きていけないんだけどさ。

「くーふぇには負けたが、刹那にここまでもってければ十分成長したのかね。
士郎とエヴァにこんなこと言ったら拷問されるけどなぁ……」

「えっ、本当に古に負けたんですか?」

「仁ガ無手ダッタカラナ、剣使ウ時ト差ガアリスギダ」

刹那の質問はオレがチャチャゼロを回収してる最中にされ、
オレが言おうとしたんだけど代わりに言われた。

差がありすぎかぁ、頑張らないとな。

「そうだったんですか、今の実力で古に負けるとは思わなかったもので――

「拙者も戦ってみたいでござるな」

「私も興味があるな」

うっ、長身で3-Aのトップクラスのスタイルの二人が現れやがったぜ。
こいつらも麻帆良武道四天王のなんだよなぁ。

「楓に龍宮、何時の間に!?」

「最初からだ、楓に面白いことがあると言われたんでな」

やはり忍者の仕業か。
楓め、お前は何かと鋭すぎるぜ。

「とにかく肉体的にも疲れたが精神的に堪えたんで戦うのはパスだ。
帰ってからも拷問、もとい特訓があるんでな」

「それは残念だ。で、何か話すことがあるんだろう?」

そんな前から観察して隊長に知らせたのかよ。
どれだけ楓は暇人なんだ……さんぽ部で余裕あるからか。

「フム、お前達はオレと士郎のことはどれくらい知ってる?」

「私と龍宮は学園長から、あなた達の実力を少しと、
ネギ先生と木乃香お嬢様を守るために派遣されたと聞きました」

「拙者は何も聞いてないでござる」

「仁ハ異――

チャチャゼロの口を素早く塞ぐ。

放っといたらすぐこれだ。
教えても支障はない……いや、隊長が怪しいラインだからな。

「実力のことは置いといて、じぃさんの言うことで間違いはない。
後は補足でトラブルに巻き込まれたってことぐらいか」

「巻き込まれた、ですか」

「トラブルとは興味深いでござるな」

あんまり興味もって欲しくないんだけどな。
楓はいろんな意味で怖いしよぅ。

「まぁ、お前達の敵ではないってことだ」

うむ、3人とも納得した顔だ。
これでオレがやることはなくなったな。

「じゃぁオレは帰――

「戦闘が駄目なら変わりに驕ってもらおうじゃないか」

「拙者はプリンが食べたいでござる」

隊長に襟を持たれ動けない。

おごるって、小遣いは士郎からもらってるが良いけど、
このメンバーで行くのは色々問題がある気がするぜ。

「刹那も驕ってもらうと良い」

「い、いえ。そんな訳には……」

「逃げられんようだし、刹那も来て良いぞ。
このかはネギもアスナもいるし、士郎を代わりにつけてもいいしな」

観念しましたよ、がっしりだもん。
もし逃げても蜂の巣にされそうだしな。

「そ、そういうことでしたら、ご一緒させてもらった方がいいですね」

刹那は本当におごっても良いんだが、残り二人が恐ろしい。
遠慮ってものを知らなさそうだからな。
オレの小遣いよ、もってくれ……皿洗いとか嫌だからよ。


――では甘味処でも行くとしますか」

 

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