side―防人 仁―


「時間だ士郎、起きろ! 別荘から出るぞ」

「うーむ……あれだけ鍛練していたのに元気ありあまってるな」

オレはギリギリまで、エヴァは抜きだが士郎達と鍛練をしていた。

そんなことをしていて、もう少しで修学旅行の集合時間だ。
荷物もちゃんと鍛練前に自分の寮から持ってきたぜ。
寝巻きから制服に着替える時間は実に3秒。

着替え終わるとオレ達の前にエヴァと茶々丸が現れた。

「二人ともやっと起きたか。ジン、これが頼まれていた品だ」

そうエヴァが言うと十字架のネックレスを投げてきた。
オレ達より早く起きてるとは、寝てないのかね。
――頑張ってくれたのかな。

「フフ、ありがとなエヴァ」

「れ、礼などいい。
それは十字架に剣をインプットとやらをして収納し、任意で収納した物を出すアイテムだ。
何かを1つ収納できる。壊れない限り何度でも出し入れは可能にした。
ハカセと超鈴音にも手伝ってもらったからその様なことも可能なのだがな」

科学と魔法の共同作品か、それに中々センスのあるデザインだぜ。
エヴァは吸血鬼なのに十字架は大丈夫だったのかね……
ん、十字架の中心に埋め込まれている青いの何だろ?

「エヴァ、この中心にあるのは何だ?」

「それはブルーサファイアだ。ジンに合うと思ったんでな」

宝石かぁ、そういえば士郎はあの宝石もってるのかね。
まぁ今度聞いてみるか。

「本当にありがとうだ」

エヴァの目を見て二度目の礼をする。
これは嬉しい品をもらったぜ。

「う…………。シロウ、何でコソコソ逃げようとしている」

「い、居たら駄目な雰囲気が出てたから」

うぉ、速い。
士郎がエヴァに大事なところを思いっきり蹴られたな。
これは戦闘不能一発KOだ。南無南無。
まぁ、茶々丸に慰めてもらえるから良かっただろう。

「早速カラドボルクで試してみるか」

立てかけておいたカラドボルクを手にもって――――収納されたな。
収納しようと思ったからかな。
いやぁ、それにしても綺麗さっぱり手元からなくなったねぇ。便利〜便利。

それで、出ろって念じればいいのか。
……そうだな、あの呪文で出るのかな。

来れアデアット

唱えるとオレの手元にカラドボルクが出てきた。
まるでパクティオカードみたいだな。

「言うの忘れていたが、呪文は必要ない。
頭の中で収納したものを思い浮かべて出ろと念じればいいだけだ」

「別に言葉を発しなくてもいいってことか、まぁ気持ちの問題ってことだな」

エヴァの説明で今オレの手の中にあるネックレスの詳細を把握。
後は実戦で役立てるだけだ。

「士郎は暫く起きれなさそうだし、オレは先に集合場所に行ってるか」

む、エヴァの奴、悲しそうな表情になったぜ。
その表情は心が痛むよ……何か教えてやるか。

「……すぐ会えるさ。
そうだな、学園長に呪いの妖精を騙せる方法を考えておけと言っとくといいな」

エヴァの頭を撫でて言う。
少し明るい表情になったな、これで安心だ。

「みんなで別荘を出るか、士郎は……引きずって行くか。
そういえばハカセ達に手伝ってもらったって言ったけどもう帰ったのか?」

「仕上げは私一人でやっていたからかなり前に帰ってる」

なるほど……ハカセ達ってオレ達の正体知ってるのかな?
茶々丸の記録してあるデータ見られたらやばいそうだ。
何も言ってこないから大丈夫だと思うけどな。

それはともかく、士郎にチャチャゼロを乗せ、ずりずりを引きずり別荘を出る。
引きずってる最中チャチャゼロが士郎にメタメタに口で攻撃してたぜ。

「じゃぁなエヴァに絡繰さん、またすぐにでも会おう。行くぞチャチャゼロ!」

手に握り締めていたネックレスを首に掛け、チャチャゼロを頭にセット。

エヴァ達に手を振り、家を出る。
全速力で集合地の駅までゴーだ!

 

 

 

フゥ、さすがに集合地の駅まで走るのは汗かくからやめて、
ちゃんと電車に乗ってきたぜ。
考えたらかなり遠い距離だったのさ。

「おはよう皆の衆、随分と早いな」

3割、いや4割の3−A女子とネギがいるぜ。
まだ集合時間まで30分以上はあるはずなんだが。
それに随分と元気な挨拶を返された。

修学旅行、学生のテンションをマックスまで引き上げる最大の行事なり。

 

 

「士郎、やっと来たか。点呼ギリギリだぞ」

「大事な所の一撃はきつすぎる……」

まだ痛そうにしてるな。男だからその気持ちは共感できるぜ。

「では各班の皆さん点呼を取って新幹線に乗って下さい」

ネギの言う通り1班から順に点呼を取っていく。
ちなみに班分けは、


1班、鳴滝の双子・柿崎・椎名・釘宮、の双子にチア部の班

2班、くーふぇ・四葉・ハカセ・超・楓・美空、の超包子連合、忍者、逃走女の班

3班、朝倉・ちう・委員長・村上・那波さん、の報道、ネットアイドル、同じ部屋の3人組な班

4班、隊長・アキラ・まき絵・ゆーな・和泉、の仕事人に、隠れた能力がありそうなやつらの班

5班、アスナ・このか・パル・ゆえ・本屋、のオレ的にレギュラーメンバーな班

6班、刹那・ザジ・エヴァ・茶々丸・さよっていう班員だが……


第6班のメンバーの刹那が先生にどうすればいいか話してる。
三人も班員がいなくなったら二人残らないからな。
ていうか何故幽霊が班員に入ってるところに疑問がないんだよ。
答えてくれるやつは……きっといないよなぁ。

「ネギ、オレ達の班は駄目だからな」

とりあえず釘をさしておく。
どうやら刹那が5班のレギュラーチーム、
ザジが3班の委員長チームに決まったようだ。

そしてオレ達の班は第7班ではなく――

 

特殊捜査本部、元帥−防人仁、軍曹−チャチャゼロ、兵卒−衛宮士郎

 

今言ったように、特殊捜査本部だ!
もちろんじぃさんの手配でやらせてもらったぜ。
学業の方もオレ達は心配ないからある程度、周りの先生にも認めてもらってるのさ。
それと、何で班じゃないのかっていうつっこみはナシだ!

「何故俺が兵卒なんだよ」

「なんとなくさ、気にすることじゃない」

呆れた声で言う士郎は軽くスルー。

「では乗り込むぞ、チャチャゼロ軍曹!」

「アイアイサー」

チャチャゼロは乗り気だ。
久々の外の世界で嬉しいんだろう。

 

 

新幹線内、オレと士郎はゆえとゆーな相手に魔法を題材にしたカードゲーム中。
カードはじぃさんの金で衝動買いだぜ。

「くっ、士郎と組んでるせいかオレの持ち味が出せない。お前は何処でも運がなさすぎだ士郎!」

「そんなこと言ったって俺のせいじゃない?」

「疑問系ニシテルッテ事ハ自覚アルンジャネーカ」

内容は接戦、普段のオレならどうにか出来ないこともないが、
士郎が足を引っ張りまくって状態は良くない。

「フッフー、仁は強いみたいだけど、私とゆえのチームにはまだまだよー」

ゆーなのやつニヤニヤ笑いやがって。
だがその通りで、このままでは賭けた食券とお菓子がやばい。
何とか危機を脱出できないか……

カードをドロー! 引いたカードは【恐怖のカエル地獄】、
かえる……かえる……げ、すっかり夢中になって忘れてた。

「キャー! カエルー!!」

出てきたな緑の物体め。
そしてオレ達がやってたカードゲーム荒らしてった。
これで勝負は振り出し、今度はオレが一人で相手してやるぜ。

「士郎」

「ああ」

カエルを捕まえるべくして行動。
掴んだ時のぬるぬるした感触が何ともいえないな。

 

「クーの助力もあったお陰かすぐ終わったな」

「何でカエルが出てきたアルか?」

士郎とくーふぇがゴミ袋にカエルを入れ終わり話す。
捕まえた数は計108匹。

「ただの嫌がらせだ」

あのおばちゃんもヘンな趣味もってるよなぁ。
人の趣味は人それぞれってか。

「ネギ、親書は大丈夫か?」

「えっ仁さん、もらった時はいなかったはずじゃ」

「……後でじぃさんに聞いたのさ」

あぶねぇ、また墓穴掘っちまったぜ。
カモの奴が鋭いから心配だ。
何かヘンなこと言った瞬間、カラドボルクの錆になるけどな。

「えぇっと、大丈夫です。内ポケットに入ってました」

ネギが親書を出してオレに見せる。
直後、その親書がツバメ……ゴーレムだったか?
どっちでもいいが、それに奪われた。

「ネギ、早く追いかけないとやばいぞ」

「はい!」

オレも一応追いかけとくか、違うこと起きたら嫌だし。

「士郎はカードゲーム整理しといてくれ」

「雑用シトケヨ兵卒」

士郎まで必要ないだろう、夜まではさすがに激しい手は出さないと思う。
利き足で踏ん張って―――床を蹴る、ロケットスタートだぜ。

迷惑極まりないスピードでネギを追いかける。
ていうか、列車内で走ることは迷惑か。

お、前方に犯人の猿おばちゃん発見、まだオレから手は出さないけどな。

「ケケケ、ソコノオバサン猿クセエナ」

「なっ!?」

頭に乗せてたチャチャゼロが手は出してないけど口出しちゃったよぅ。

「すいません、綺麗なお姉さん。
機械人形の言うことなので真に受けないで下さい」

立ち止まってお詫びの台詞。
この年代には今の褒め言葉が効くと踏んだ!

何も言ってこないな、効果は抜群か。じゃぁネギを追いかけよっと。

先に進むと一両先の列車、ドアのガラス越しに剣閃が見えた。
刹那がツバメを退治してくれたか。

「オレは必要なかったかようだ。
基地に撤退するぞ、チャチャゼロ軍曹!」

「アイアイサー」

 

 

士郎に何も事は起きなかったと報告。
その後、カードゲームの恨みを晴らすため、
ゆえ、ゆーな、パル、双子にタイマンを仕掛けた。
和泉もやっていたがいじめるの可哀想だから対戦はしなかったさ。

「フッ、まだまだのようだな。出直してこい!」

結果は対戦した五人に当たり前のように全戦全勝。

士郎の方は逆に全戦全敗。
チャチャゼロともやってたけど負けてたな。
何故動けないのに出来たのかを言うと、
チャチャゼロは指示を出すだけで和泉にカードを動かしてもらってたってことだ。

「仁、大人気ないぞ……」

「勝負の世界は非情なのさ」

という事で、賞品のお菓子をゲッ………トはしませんよ。
女子の旅行の醍醐味は食べることにありだろう。

「ソレハ偏見ダゼ」

口に出ていたか、けどチャチャゼロにしか聞こえなかったみたいだな。

「フッ、お菓子と食券は取らないでやろう」

取らないって言ったら皆さん明るくなって……現金なもんだぜ。
士郎の方はきっちり渡してるみたいだがな。


―――まもなく、京都です』


列車のアナウンスが入った。
もうすぐ到着とのことで3−Aは更にテンションが上がる。

京都かぁ、オレが前に高校生だったときも京都旅行だったな。
旅行中は友達と某有名ゲーム店とか有名なファストフード店とかに行ってたぜ……あれ目から水が……

「ん? 旅行が出来て嬉し涙か?」

「今はほっといてくれ士郎」

ネギを中心に到着したことで嬉しいのか騒いでいるが、オレの周りはちょいと暗いぜ。

 

気を取り直して、良い旅行にしないと! けど、多分戦うことになるんだよねぇ……

 

 

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