side―衛宮士郎―


修学旅行、京都の清水寺。日本の観光名所だ。
我がクラス3−A、特に担任のネギ君を筆頭にはしゃいでいる。

「眉間に皺が寄ってるぞ、もっと楽しめよ」

「む……」

仁に指摘されたが、俺も楽しんでるつもりなんだが、
どうも女子ばかりだと心にゆとりが持てないぞ。

綾瀬さんが詳しくみんなに清水寺のことを話してる。
あれだけの知識と記憶力がありながら、何故バカレンジャーという一員なんだろうな。
それだけが秀でてるのか、はたまた勉強嫌いだからなのか……

「ゆえがここから飛び込んでも生存率が85%だとよ、行ってみるか!?」

「パスだ。公衆の面前で恥をかくわけにはいかない」

この高さだと普通の人間は落ちたら危ないと思うのだが、
木のクッションでそれだけ生存率が高いのかな。

3−Aが移動したな、目的地は……『音羽の滝』か、
三筋の水は飲むと健康・学業。縁結びが成就されると言われる。
うちのクラスのことだから縁結びの水を飲みにいったんだろう。

 

その前に『恋占いの石』があった。
委員長さんとまき絵さんが早速やろうとしてるな。
目を瞑って20m先の石まで歩くか、平衡感覚が優れた人でないとできなさそうだ。

む、石の手前がおかしい部分あるが……落とし穴か。

「仁、落とし穴があるぞ」

「フッ、士郎よ。あいつらが落ちてもいいが助けてもいいと言っておこう」

仁のやつは我関せずとしてる。

……くっ、気づくのが遅かった、二人が落ちるタイミングと同時になりそうだ。

「「キャ……」」

「大丈夫か?」

間に合ったか……。足場が抜ける寸前に二人の腰を持って救出。
……落とし穴の中にまたカエルが居るよ。
新幹線の時と同一犯で間違いないな。

「ありがとうございます、衛宮さん」

「衛宮くんありがとー」

「どういたしまして」

始めに委員長さん、次にまき絵さんのお礼。
これぐらいの事は当然な事だからな別に礼なんて……

「むむ、まき絵フラグはわかるとして委員長ま、グハッ!」

手に何か当たったな。
じゃぁみんなと『音羽の滝』に向かうか。

 

着いたは良いがうちのクラス順番を全然守っていない。
3−Aしか周りにいないから良いが、そんなに恋愛がしたいのか。
右頬を真っ赤にした仁が前に買ったでかい水筒で縁結びの水を入れてるな。
綾瀬さんも同じことしてるぞ……

ん? この匂いは、

「滝の上に……酒樽か。ネギ君、皆を止めないとまずい」

隣に丁度いたネギ君に指示を出す。
俺は滝の上の酒樽をどうにかするか。

「仁、さっき水を入れてた色違いの水筒はどうするつもりだ」

仁も俺の後ろから上ってきたようだ。

「捨てるのももったいないし、チャチャゼロにも飲ませないといけないからな」

「ソノ通リダ」

二人して満面の笑みで酒を水筒に入れてく。
チャチャゼロが満面の笑みに見えるのは何故だ。
……捨てるのは確かに良くないな、それぐらいは許すか。

「クラスの三分の一程度が酔っ払ったみたいだぜ。
この分じゃオレ達のクラスは見学無理だから宿に行くとするか」

仁の言う通りだ。
酔っ払い集団の中学生が旅行してると知られたら、
謹慎どころの問題じゃなくなるからな。

 

 

 

「はぁ……やはり、こういう場所が俺に一番合う」

「じじくさい発言だぞ士郎」

クラスメイトを旅館に運び、今は露天風呂に入浴中。
チャチャゼロは部屋で待機中だ。
仁は風呂の中でもエヴァからもらったネックレスをつけるようにしてる。
防水性なのかな……

風呂は混浴のようで入る前に仁が『男子入ってます』の看板を入り口前にちゃんと置いておき、
女子を入れないようにした。入ってくるかも知らんが……

 入り口に小さな影、ネギ君か。

「ネギ、こっちだ」

「ゲ、仁の旦那に士郎の旦那!」

ネギ君は喜んでこっちに来るが、カモ君が後ずさっている。

「被告人、逃げれば捻じれた剣が飛んでいくぞ」

「ヒィッ!」

仁の脅しにカモ君は走ってネギの肩にひょいと乗る。
【偽・螺旋剣】のこと言ってるが、それを出すのは俺だろうが……

「カモ君、仁の事は気にするな。
ただ、からかってカモ君の表情で楽しんでるだけだ。
本当に悪いことをしない限り手を出さないから安心しろ」

「士郎の言い方のほうがおっかねぇな」

ふむ、正論を言っただけなのだが、
そんな風に取られるとは。

む、また誰か人が入って来るな、新田先生辺りかな?

「あれは……刹那!? ネギ、風呂の入り口に看板あったか?」

「いえ、看板なんて何処にも見当たりませんでしたが」

二人は互いに囁き声、そして俺も含めて岩場の陰に隠れる。
桜咲さんの裸は見てないぞ。

桜咲さんの声が聞こえるな。
魔法使いのネギ君ならなんとかしてくれる、か。
確かにネギ君は今日、頼りなかったからな。

 って、ネギ君は小型の杖を持って何をしようとしてるんだ。

「殺気? 誰だ!?」

桜咲さん鋭いな。
見た感じ3−Aでエヴァを抜かし1番強いと思ったのは桜咲さんだしこれぐらい当たり前か。

来たれアデアット

仁がカラドボルクを出したが、やはり攻撃が来るのか。
岩陰で状況がわからん。
唯、岩場を蹴る音が聞こえただけだ。

「斬岩剣!!」

俺達が隠れていた岩が真っ二つにされ斬撃と鋼がぶつかる音が辺りに響く。
この技名は前に寮の風呂場で使ってきたやつか。

「刹那、敵じゃない。オレ達だ。」

「あっ、仁さんに士郎さんにネギ先生でしたか」

桜咲さんは俺達に気づいて敵意を無くしてくれた。
俺は桜咲さんに向かって、後ろを向いてるから裸はホントに見てないぞ。
横に見える仁もちゃんと目を瞑ってる。
前に居るネギ君は……バッチリ見てるな……

「ネギ君、女性の裸を見るのは良くない。
あとカモ、お前は二度目だ。処刑されたいのか?」

「はっ、すいません士郎さん、桜咲さん」

「士郎の旦那こえ〜……」

反省したようだな。それよりも――

「桜咲さん、気配が動いてないってことはまだタオルも巻いてないのか?」

「あ、う…………も、もう大丈夫です」

タオル巻いたようだが、振り向くのは気が引けるな。
仁もまだ目を瞑ってるみたいだしな。

「カモ、お前は刹那を疑っていたみたいだが、刹那はオレ達の味方だ」

ん? 疑ってたって、そうだったのか。
また俺一人ぼっちな感じだよ。

「仁さんの言う通りです。私はこのかお嬢―――

「ひゃあああー!?」

今の悲鳴はこのかちゃんか!
仁はこの事をわかっていたのか!?

「すまん、うっかり忘れてた」

俺の表情で何が言いたいかわかったみたいだな。
遠坂と同じうっかりとは何たることだ。

桜咲さん、ネギ君、俺、仁の順で風呂を出て悲鳴のした所に向かう。
ちゃんと腰にタオルを巻くのは忘れてないぞ。

女子の脱衣所の方からか……緊急だから致し方ない!

「いやぁ〜ん!」

「このかお嬢様!」

入るとこのかちゃんと神楽坂さんが十数匹のサルに下着を奪われていた……
このサルは式紙だな。カモと同じことしやがって。

「はぅ〜、士郎さん怖いです〜」

「ネギ、近づくと巻き込まれるぞ」

―――投影、開始トレース・オン

投影するのは使い慣れた陰陽の剣。
狙うは変態小猿どもだ!

 

「ものの3秒ほどで終わらせるとは……」

仁の声、そして周りにあるのは紙に帰したサルどもの残骸。

「あの中に人の気配だ仁!」

視線を感じ、脱衣所から外に向けて気配のある草の中に【干将・莫耶】を投合。
……逃げられたようだ。追わないと――

「いや、追わないでいい。
流れを壊しすぎると後で大変な目に会うかもしれんからな」

む、そういうことなら仕方ない。
このかちゃん達は大丈夫かな?

「や〜ん、士郎くん見んといて〜」

しまった、このかちゃん達は服を着てないんだった。

「士郎! アスナの鉄拳が来るぞ、撤退だ!」

危ないっ。
数秒飛びのくのが遅かったら神楽坂さんのパンチが顔に当たるとこだった。
呆然としてたとこを仁に助けられるとは、食らった方がいいかも知れん状況だが……

「……とりあえず部屋に戻ろうか」

「士郎の言う通りだな」

走って男の方の脱衣所に行き、
着替え、自分たちの部屋に戻ることにした。

 


「オオ、早イ帰リダッタナ」

チャチャゼロが居間の真ん中にあるテーブルの上で俺達を迎える。
テレビの向きに座っているので、足音で俺達が帰ってきたのを判断したんだろう。

「とんだハプニングにあっちまってな」

ホントに早い、まだ体と頭を洗っただけで全然風呂には入れていない。

「このかちゃんの裸見て自己嫌悪してるみたいだな、士郎。
……次の出来事の確認しとくか、また忘れたら酷いからな」

そう言って仁はいつものノートに目を通す。

む、俺達の部屋にノック。
さっきのこともあったし、来るのは決まってるか。

「ネギ君に神楽坂さんに桜咲さんか、どうした?」

「士郎さん達に助力を求めようと思って来ました」

ネギ君が上目遣いで言う。
断りにくいオーラを出してくるな……

「ふむ、だが俺の一任では無理だ。主に決定役は仁なのでな」

これからの流れを知っている仁に任せるのが一番良い。
仁がうっかりしない限り悪いことは起きないはずだ。

「仁さんお願いします。どうかお嬢様の助けに」

土下座までして桜咲さん必死だな。
それだけこのかちゃんのことが大事なのかぁ。

「……悪いが無理だ。
この程度の事をネギが解決できないようなら話しにならん。
それにこのままじゃ今後お前たちは苦しむことになるだろう」

しかし、桜咲さんの懸命の申し込みをあっさりと断る仁。

「そ、そうですか……」

「なんでよ仁! このかの命がかかってるのかも知れないのよ!」

桜咲さんは座ったままひどく落ち込んだ表情になり、
神楽坂さんは仁に取ってかかる。

「だが、陰ながら援護することにはしよう。
お前達には気づかんかも知れんがな」

むむ、仁のさわやかスマイルだ。
稀にしか見れないような笑顔、いっつもは悪戯思いついたぁの笑顔だからな。

……陰ながら援護って、大停電の時みたいに遠くにいて俺だけ弓で攻撃って訳じゃないよな。

「早くこのかのとこに戻ってやれ、夜這いするつもりなら別だがな」

「こんのアホー!」

「グォッ」

最後はやはり悪戯スマイルとからかった口調に変化。
そして神楽坂さんから仁へのナックル。
神楽坂さん、段々スピードあがっていってるなぁ。

女子二人は顔を赤く染めて颯爽に退室。
ネギ君は後から追いかけ、夜這いは何かと神楽坂さんに聞いてるが、
まだ子どもが知るには早いぞ。

「うぐっ……お茶目なギャグが……」

「明らかに今の発言は女子にすることが間違っている。
特に神楽坂さんの前でな」

仁の口からかなり血が出てるぞ。
そんなにあのナックルは強力だったのか。

 

「まぁいい、ではその仁が言う陰から協力とやらを教えてもらおうか」

 

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