――The outside aspect――


関西呪術協会、陰陽道の『呪符使い』、それが今回の敵。
古くから京都に伝わる日本独自の魔法『陰陽道』を基本としている。
彼らは呪文を唱えている間は無防備となる弱点は西洋魔術師と同じ、
故に西洋魔術師はパートナーを従え、彼らは式紙である善鬼、護鬼を従える。

さらに彼らには『京都神鳴流』が加わっている。
刹那と同じ流派を使うため、仁達にとっては厄介な敵と言えるだろう。

「今回の敵のことを簡単に説明するとこんな感じだ」

「なるほどな」

月明かりが照らす旅館の屋根の上。
屋根の斜頚面ではなく、梁の所に人影が二つあった。

「ネギ君が渡月橋に居るようだ」

赤髪の男、衛宮士郎が青髪の男にある方向を指す。

「外に出て行ったってことはもうすぐサルが出てくるはず。
その後アスナと刹那が出てくるから見逃すなよ」

今度は青髪の男、防人仁が士郎に指示を仰ぐ。

士郎は赤い聖骸布を纏い、渡月橋に視線を外さないようにしている。
仁は中心に青く光る宝石が埋め込まれた十字架を首から下げ、
右手首に魔法発動体である銀の腕輪を装着。

「チャチャゼロはどうした?」

「動けないから危ないと思って置いてきた」

士郎の質問に仁が答える。

確かにその通り、
チャチャゼロはエヴァの真祖の力が戻らない限り満足に動けないからである。

「む、でかいサルが出てきたぞ」

士郎の指す方向には、
2mはあろう大きな猿のぬいぐるみの様なものが走り去っていた。
その手には木乃香が抱えられている。

「あいつが本体だ、間違っても弓矢を投影して撃つなよ。
周りに他の敵がいないか注意してくれ」

 

大猿が出て行き数分経つと、
旅館から明日菜と刹那が飛び出す。
その表情は木乃香を連れられてか焦りが見える。

「よし、異常はないみたいだな。
オレ達も追いかけて、できれば先回りしよう」

「ふむ」

先に仁が屋根から飛び降り、次に士郎が飛び降りる。
そして彼等はネギ達を陰から援護すべく、駆け出して行った。

 

―――――――――――――――

 

「ネギ先生!」

「ネギーッ」

木乃香がさらわれてしまい、
刹那とアスナは外で見張りをしているネギの所に走っていた。

二人が見たのはネギとカモが小猿に遊ばれていて、
丁度、大猿が立ち去っていくところであった。

「に、逃げられました」

「追わなきゃ!」

 

 

「お嬢様ーっ!」

「このかー!」

ネギ達が追いかけ、大猿と約15mほどの距離まで詰めた。

「ち……しつこい人はきらわれますえ」

猿と中に入ってる人が少々イラついた表情になる。
ぬいぐるみのような猿が怒って見えるのは、
それが式紙で意思があるからである。

「あ、マズイ、駅へ逃げ込むぞ!」

カモが言い、ネギ達が焦る。
もし電車が発車してしまえば魔法を使って追いつけないこともないだろうが、
余計な魔力を使ってしまう。

「ちょっとオカシイわよ。終電間際にしても乗客も駅員も一人もいないわ」

「人払いの呪符です! 普通の人は近付けません!」

明日菜の問いに柱に貼り付けてある札を指し刹那は答える。

ネギ達は電車のドアが閉まると同時に乗車できた。

「待てーっ!」

「フフ、ほな二枚目のお札ちゃんいきますえ」

大猿の肩に乗っかっている小猿が札を取り出し、
ネギ達に向かい札を払う。

「お札さん、お札さん。ウチを逃がしておくれやす」

そう大猿が言うと同時に札の中から大量の水が溢れ出した。

 

―――――――――――――――

 

ネギ達が大猿を追いかけ、電車の中腹の車両に乗り込んだ時には、
すでに仁と士郎は車両の先頭にいた。

「そういえば、人払いの結界が張られてあったな」

「オレがある程度知識なかったら帰るとこだったぜ」

二人は後車両の仲間と敵をガラス越しに見ながら言う。
彼等が見た時、ネギ達は水の中に居た。
しかし、それを見ても彼等に動揺する様子はない。

「桜咲さんの斬撃で助かったようだ」

士郎の言葉に仁は予測通りと呟き微笑する。

「次は先回りしないで後ろからついていこう」

 

 

電車が停車し、ネギ達と大猿は車両内の大量の水によって外に押し出される。
すぐさま逃げ出す大猿を追いかけるネギ達、更にそれを遠くから追う仁と士郎。

彼らが改札口を出ると、高い階段がある場所に出た。
上方に大猿と20代の女性と木乃香、中腹にネギと明日菜と刹那、
そして下方に士郎と仁が別々の物陰に隠れて、上の様子を観察している。

「やはり変わりな――

「君達は危険分子だ、死んでもらうよ」

仁が全てを言う前に白い髪の少年に胸部を殴られ、普通では考えられないほど飛ばされる。

それにすぐさま気づいた士郎が一瞬で【干将・莫耶】を投影し仁の所まで飛び退き、
少年との間合いを開ける

「仁、大丈夫か!?」

士郎は突然現れた少年に視線を外さずに、友の身を心配する。

「グッ……大丈夫とは言いきれないな」

仁は苦笑いを浮かべ返答し、ゆっくりと立ち上がり白い髪の少年に視線を向けた。
その口元には血が流れているように見える。

「障壁で緩和したようだね――今のなら死んでもおかしくない攻撃なのに」

「士郎、イレギュラーだ。
奴は他の敵と格が違う、本気で行かないと危険だ。
それと魔法は絶対に食らうな、石化にするやつがあるからな」

少年の言葉を聞かず、仁は士郎に早口で言う。
そして仁はアデアットと言い、ネックレスからカラドボルクを取り出し、
少年に向け構える。

――先に士郎が駆け、少年に向け横一閃。

「なっ!?」

驚きの声は攻撃を放った士郎。
少年は躱す事なく斬られたのだ。

「この場は引くことにするよ。二人相手じゃ、僕の分が悪いからね」

そう言って少年は水となり、この場から消えた。


 

 

 

 

  side―防人 仁―


「フゥ……口の中が苦いぜ」

先ほどのことは一瞬の出来事。
近づかれたことを全く気づけなかった。

「奴は何者だ?」

「詳しくは言えん、とにかく今ここでは一番やっかいな敵ってことだ」

士郎め、納得のいかない表情だな。

「そんなことより周りを警戒しといてくれ、オレは少し休ませてもらう」

オレは壁に寄りかかるようにして座る。

かなり胸元が痛い……障壁で緩和したと言っていたな。
無意識の内に魔法を発動できたのか。
……カラドボルクをしまっとこう。

階段上のネギ達をオレは見る。
どうやらおばさん……いや、千草はネギ達にやられて逃げてる。

あれはフリルっていうのかね。
そんな衣装を着て二刀を持ってる小柄の女の子も見えた、あれが月詠か。

ネギ達はこのかを助けられて嬉しそうにしてる。
ていうか早くオレのところに来てくれネギ。
あんまり効かんでもいいから回復されたいぜ。

「終わったみたいだな。桜咲さんだけがこっち向かってきてるぞ」

ム、刹那が恥ずかしがってる様子。
このかの顔見て赤面かぁ、その属性はオレには理解できないぜ。

「フッ、早くこのかに馴れるんだな刹那」

横を通り過ぎようとした刹那に一言。

「えっ、仁さんに士郎さん? 何時の間に……それに仁さん怪我をしてる!?」

声をかけられて驚いてるぜ。
物陰でオレ達は見えにくいし、刹那の今の状態だとオレ達に気づかなかったからか。

「心配するな。傷はネギにでも治してもらうさ。
それよりこのかが来るぞ、心の準備が出来てないようなら早く行ったほうが良い」

「はっ……そ、それでは失礼します」

恥ずかしがってる姿が可愛らしいですねぇ。
……あれ? 何考えてんだオレ……前もこんなことあった気がするぜ……

「どうした仁、傷が痛むのか?」

「なんでもない……」

ネギ達が降りてきたみたいだな。

「ネギ、ちょいと助けてくれ」

「あんた達何でここに……って仁怪我してるんじゃないの!?」

アスナが心配してくれるよぅ。
これは珍しいものが見れたぜ。

「アスナはこのかを連れて先に行っててくれ、すぐオレ達も行くからさ」

このかにまだ魔法を見せられないからな。

アスナは珍しく素直に聞いてくれた。
このかを連れて先に帰ってくれたよ。

「士郎、このかの周りに注意を払ってくれ」

「了解した」

士郎は高い所に上り、弓と矢を投影していつでも撃てる状態になる。
鷹の目になってるぜ。カッコいいねぇ。

次はネギに向かってと、

「治癒魔法は得意じゃないだろうが、使ってくれるとありがたいな」

「はい、もちろん使いますよ!」

オレが傷口は胸元と言い、ネギが胸元に手を当てて治癒してくれている。
ネギの手は若干光ってるがこれが治癒の魔法なのだろう、暖かいな。

「どうしてこんな傷を?」

これは言っても支障はないか。

「……白い髪の少年に気をつけろ。
もし戦う事になるのなら、相応の覚悟と策を持って挑め」

ネギが口を結んでオレを見る。
真剣な表情で言ったつもりだから、その言葉の意味をわかったんだろう。

「カモもネギを支えてやってくれよ」

「当然でさぁ、仁の旦那!」

カモがガッツポーズなのかしらんが、そのような格好をして、やる気満々だ。
お、
治癒が終わったみたいだな、大分楽になったぜ。

「どうもなネギ、じゃぁ帰るか〜。士郎帰るぞ!」

士郎が高台からオレ達の傍に降り立ち、弓矢を消す。

「このかちゃん達は陰ながら桜咲さんに見守られてるから大丈夫だろう」

フム、なら安心だな。
しかし、あいつがオレ達の存在を知っていたとは……
じぃさんは詠春にしか話してないと言ったが、どっかから漏れたのか、
それとも安易にネギ達についていってたせいなのか……

「……フフフ、オレはこんなとこで死ぬわけにはいかない。
せっかく退屈な平穏の日常から楽しい危険な非日常になったんだからな。
それに修行をした意味がなくなっちまうぜ」

「うぅ、仁さんが黒いです」

「確かに……エヴァみたいだな。ほっとけばすぐ元に戻るさ、ネギ君」

む、ゆえ〜の言葉と被っちまったか。
だがその通りさ、家で遊んでるのも楽しいがこっちの方が全然楽しいからね。

「じゃぁ旅館に戻るぞ〜」

オレの言葉に士郎とネギは頷いて答える。

 

問題は3日目か、明日は何も起きないはずだが細心の注意を払わないとな。

 

 

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