side―衛宮士郎―


修学旅行二日目。
昨日は仁が怪我を負ったがネギ君のお陰で回復。
今朝には十分元気な姿になっていた。

昨日会ったあの白い髪の少年、フェイトと言うらしいがかなりできる。
仁に色々と聞きたかったが、いつも通り最低限のことしか教えてくれないしな。

「坊主、随分と慣れた手つきだな。
どこかの料理店の息子か何かかい?」

「いえ、家族に作ってる内に人並みに上達しただけですよ」

俺に話しかけてきたのは旅館の料理長。
朝食の手伝いををしようと調理室に来て、
料理長に頼むと快く調理室に入れさせてもらえた。
最近は自分で作らないと変な感じがするからな。

「謙遜か坊主、気に入った!
そうだ、クラスメイトのために一品作ってやんな。メインの品でもいいぜ」

随分と気前が良いというか豪快な人というか……
そういうことなら作らせてもらうとしようかな。

 

――それでは、麻帆良中の皆さん、いただきます』

「「「「「「いただきます」」」」」」」

ネギ君がマイクを使い挨拶をし、食事が始まる。
周りは女子ばかり……
その中、3−Aの十数人がまだ二日酔いみたいだ。

「この鮭の焼き方といい、味といい、更に3−Aにしか鮭がない。
これを作ったのは士郎! お前だな!!」

仁が手にある箸をオレに向けて叫ぶ。
名推理のようだが別に叫ぶ必要はないだろうが。

「えー、士郎君が作ったの? ふむぅ、おお、おいしぃ〜。
これなら士郎君と結婚したら料理作らなくてもいいね」

「お姉ちゃん、それは女の子としてどうかと思います」

仁の言葉のせいで3−A中心に騒がしくなってきたな。
目を光らせて俺を見る女子もいるような気がする……恐いぞ。

「フッフッフ、士郎はレストランを営んでるからこれぐらいチョロいものなのさ。
そのレストランの看板のロゴはこれだー!」

虚言をつき、何処からか「Restaurant Emiya」
と凝って書かれてあるポスターを取り出し、皆に見えるように高々と上げる。
くっ、このままいくと俺が皆に押し寄られて潰されることを予測。

「朝飯は惜しいが止むを得ん」

「取ッテ食ワレチマエヨ」

「オレが士郎の分の料理も食っとくから捨てるようなことはない。
だから安心して逃げな」

仁め、それが狙いか、せこいぞ。
……みんな早いな、もう迫ってきてる……さっさと逃げよう。

 

「部屋に帰ってきたのはいいが、腹が減ったな」

さすがに部屋まで女子達は来ないだろう。

む、机の上に仁の丸秘ノートが置いてある。
どうしようか……しかし見るのは道徳的に反するよな。
いや、けど少しくらいなら見たほうが……

「ハーッハッハ! これはお前に見せるわけにはいかねぇぜ!」

俺がノートを手に取る前に突如部屋に現れた仁に取られる。
ご飯食べるの早すぎるだぞ。

「見るのは諦めるとして、今日は何をする予定なんだ?」

「ネギの周囲の警戒だ、早速行く準備しようか。
それと準備が終わったら―――

 

 

  side―綾瀬夕映―


奈良公園、私達5班が歩いてる道には鹿が沢山歩いている。
ここも昨日行った清水寺と同じく有名な観光名所です。

「えへへー……ネギ先生……」

「よくやったーッ、のどかーー」

ハルナが叫びのどかに飛び蹴りを入れる。
私も便乗して同じことしていますが、
これぐらいはおめでとう、ということで許されるでしょう。

「見直したよあんたにあんな勇気があったなんて!」

「感動したです」

宿の方で委員長さんとまき絵さんを差し置いてネギ先生を誘ったのですからね。
のどかがこれほどの事するとは思わなかったです。

「えへへ……うん、ありがとー。
ネギ先生と一緒に奈良を回れるなんて幸せー……もう今年は思い残すことはないかも……」

「バカァ!」

ハルナはのどかに向かって平手打ちをし、快音がした。
……ハルナが叩いた真似しただけですが、
それに合わせるのどかはノリノリですね。

……ハルナが告るのよと言って、
修学旅行中の告白成功率は87%とかテキトーな事を言ってます。
しかしこれぐらい言わないと積極的でないのどかは駄目そうです。

「ファイトですのどか! きっとうまくいくですよ」

「よし、まずはネギ君と二人にならなくちゃね、行くよ夕映!」

「ラジャです」

私達は少し遠くにいるアスナさん、刹那さん、このかさんをネギ先生から引き離すべく行動をする。

 

「アスナアスナー! 一緒に大仏みよーよ!」

「せっちゃんお団子買ってきたえ。一緒に食べへん〜?」

お団子を片手に持ったこのかさんが刹那さんを連れてってくれたようなので、
私とハルナはもう一人の標的のアスナさんを無理やり連れて行く。

あとは頑張るですよ、のどか。

 

 

  side―衛宮士郎―


「分かれたようだな、じゃぁ行くぜ」

「ああ」

ネギ君達の班員がそれぞれ散ってから俺達は行動開始。
仁が準備が終わったら「ジャンケンだ」と言い、
勝った方が桜咲さん、負けた方が綾瀬さんの方に加わるということで、
俺は負けて綾瀬さんの方に加わることになった。

綾瀬さん達が神楽坂さんを連れていったのは良いが、
すぐ追い出すってひどいぞ。

「ネギ君と宮崎さんをくっつけようとしてるのか」

「なっ、衛宮いつの間に!?」

「何か用ですか?」

日本の国宝、東大寺大仏殿。
その中にある柱に身を隠し、ネギ君達を見ている二人に声をかけた。

「仁に頼まれて綾瀬さん達に付いていくことになった」

「決めたのが仁となると、断ったりしたら衛宮が可哀想だね」

早乙女さんが快く了承してくれた。
俺も承諾してやったことだからな、
仁の所に戻ったりしたら仁とチャチャゼロに何て言われるか。

「それにしても衛宮の方がずっと大人に見えるのに、何でいつも仁に振り回されてるの?」

「私もそれは気になるです」

「ふむ、仁は間が抜けたように見えてもちゃんと先の事を考えているからな。
別に振り回されてるって訳ではないぞ」

「……先の事を考えてる……そういえば思い当たるふしがあるですね」

「へぇ〜」

綾瀬さんの言ってることは図書館島でのことか。
あの時の仁はクラスでは出さない雰囲気を出してたからな。

む、ポケットから振動、携帯か。
メールのようだ……送ってきたのは仁だ。
『コノヤロウ、オレを間抜けだと思ってたのかよ。それとあんまり女子にちょっかい出しすぎて変なこと――
削除……仁は桜咲さんのとこに行ったんじゃないのか。
―――周りに仁の気配はないな。

「のどかがネギ先生に告白しそうだよ!」

早乙女さんがネギ君達には聞こえないぐらいギリギリの声量で、
俺と綾瀬さんに宮崎さんの告白シーンを見ろと言う。

「あ、あの――ネギ先生ーっ!」

「はい?」

「先生ーっ! わっ、私……大……す…すき……」

宮崎さんがもう少しで言いそうだなぁ。
俺はこれ見ててもいいのか? 罰が当たったりしないだろうな……

「大仏が大好きでっ!!」

「へぇ〜渋い趣味ですね」

間違えすぎだよ宮崎さん……
カモ君――俺もカモって呼ぶか。
カモならこういう事がすぐわかりそうだが、いないみたいだな。

次はおみくじの所で「ネギ先生が大…大吉で……」って言ったが、
文法的におかしいのにネギ君は全く気づかない。
「おみくじ引きますか?」という反応はどうかと思うぞ。

 またメールが来たな……やはり仁からのようだだ。
『フッ、お前も似たようなもんさ。女難の相に流され溺――
削除。

……頑張れ宮崎さん、同じクラスメイトとして応援してるぞ。

 

 

 

  side―防人 仁―


「そろそろ本屋ちゃんがハプニング起こしてネギから逃げるころだな」

オレとチャチャゼロは士郎と別れてから、
刹那達とまだ合流することはなく、通りで鹿と戯れ中。

「ケケケ、イツノ間ニ士郎ノ服ニ盗聴器ナンテ付ケタンダ」

「それは企業秘密さ」

チャチャゼロは耳にイヤホンを装着し、士郎の口に出す言葉を聞いていた。
心の中で言ってるつもりの言葉もちゃっかり口から出てたみたいだぜ士郎。

「十分悪戯も楽しんだことだし、こういう危ないものは廃棄だ」

「アア、モウチョット楽シマセロヨ」

問答無用でチャチャゼロから奪い、悪戯セットはポケットの中に。
鹿を撫でるのを止め、靴のつま先を地に二回トントンと蹴る。

「では茶屋に行くとしましょうか」

「ショウガネーナ」

刹那、アスナ、本屋ちゃんが来るだろう場所に向かって出発。

 

 

「ぜんざいが甘〜い」

「変ナ言イ方スルナ」

今、オレ達は和風な茶屋でいいのかな、そんな感じのとこにいる。
口に何度もぜんざいを運び、感想は今の通りだ。
オレはそれほど甘党ではないが、おいしいものはおいしいねぇ。
それにこの店の空間は落ち着いていいわ。

「ガキ共ガ外ニ来タゾ」

ぜんざいも食い終わったし丁度いいころに来たな。
窓からこっそり外を覗くと、アスナと本屋ちゃんが椅子に座ってて、
刹那が壁に寄りかかってるな。

「えーっ! ネッ、ネギに告ったのーッ!?」

アスナ、声が大きすぎだぜ、
女の子なんだからもう少しおしとやかにすることをオレは希望する。
……続きは壁に耳をつけて聞かないとな。

「お客様、そういったことは」

「気にしないでください、同じクラスのやつらですから」

オレは外には聞こえない声で店員に言う。
物分りがいい店員で良いことだ、戻ってくれたぜ。
では続きを
――

「は、はい――いえ、しようとしたんですけど私トロいので失敗してしまって……
あ、すいません。桜咲さんとはあまり話したことないのにこんな話をしてしまって……」

「いえ……でもネギ先生はどう見ても子供では……どうして?」

もっともな疑問だが愛に年齢は関係ないのさ。
その想いが大事なんだと思うぜ。
まぁ、どっかの名言っぽいこと思っただけだがな。

本屋ちゃんが「ネギはカワイイけど大人びた顔をする」ってか、
アスナと刹那が恥ずかしそうに返答してるな。

「ケケケ、青春ダナ」

「えっ、チャチャゼロ?」

アウチ、アスナに聞かれちまったか。

「いえいえ、ただの通りすがりです。あなた達はどうぞ青春を謳歌していてください」

「そ、そうですか」

なんとかごまかせたようだな。裏声レベルマックスだぜ。
あ、立っていた刹那と目があっちまった。
とにかく口パクで、「つづけろ」……よし、頷いてくれたから伝わったようだな。

――ネギ先生が大人びて見えるのは、多分私達にはない目標を持ってて……
それを目指していつも前を見ているからだと思います」

ホントに本屋ちゃんはネギのことを深くまで見てるよな。
その一途さは尊敬だ。あとは告白する勇気だが、これも申し分ないよな。
かなり意外だが引っ込み事案の本屋ちゃんは恋愛に関してはすごいぜ。

「えへへー。アスナさんありがとうございます。
桜咲さんも恐い人だと思ってましたけど……そんなことないんですねー」

「え……」

刹那が呆気にとられた声を上げる。
この時はまだ人付き合い悪い子だって3−Aの皆に思われてると思うから、
そう思われても仕方がない。

「何だかスッキリしました。私、行ってきますね――

本屋ちゃんはネギのところに向かったようだ。
足音がここからどんどん遠くになってってるからな。

「フッ、ではオレ達も行くとしようか。勘定置いとくぜ」

「ケケケ、早ク走レ」

オレは机の上に金を置いて店を出る。
茶屋の外に出るとまだアスナに睨まれたよ。

「……仁! やっぱりさっきのはチャチャゼロだったんじゃない!」

「神楽坂さん、殴りかかろうとするのは……」

「ハーッハッハ、そんなことしてたら本屋ちゃん見失っちゃうぜ」

片手を振り上げてるアスナには構わず走る。
構ってたら見逃しちゃうからな。

 

「ガキガ居タゾ」

ネギと本屋ちゃんを発見。
周りにはベンチがある休むところだが、ネギ達以外に人はいない。
オレとチャチャゼロは草むらの中で見学だぜ。

アスナ達もオレの後を追って来たようだな。
また片手振り上げて殴りかかってきそうだよ。

「シッ……今いいところだ。邪魔すると野暮ってやつだぜ」

「えっ、まさか……本屋ちゃんがネギに告白? まだネギは10歳なのよ……」

「み、見てください。宮崎さんが――」

刹那の言葉でオレ達はネギ達を見る。
おおっ、もう少しで言いそうだ。
それを見ている、アスナ達は身を草むらから段々と乗り出してきてる。
さすが女子中学生、色恋沙汰が好きだねぇ。

「私、ネギ先生のこと出合った日から好きでした。
……ネギ先生のことが大好きです!」

ついに本屋ちゃんが言いきったぜ。
ネギは突然のことで呆けてるなぁ。
――――本屋ちゃんが先に帰っちまった。
赤面してたから恥ずかしかったのかね。

「キャーッ、ネギーッ!」

ネギが目を回して後ろに倒れ、
アスナが叫びながら駆け寄っていく。

「仁、ネギ君は……」

士郎、ゆえ、パルが丁度よく来た。
パルの手には体温計、準備万端すぎだ。
その後ろからこのかも来てるな。

「ただの知恵熱ってやつだ。……お前達も見てたのか?」

「あ、ああ」

まぁ誰が見ててもいいんだけどね。
別に差し支えはないだろうし。

 

――――ことも終わったし。倒れたネギを宿に連れ帰って、朝倉でもけしかけておくかね。

 

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