side―防人 仁―


アスナ達からやっと解放されたぜ。
ゲーセンで思った以上遊びすぎて長く居座っちまった。
ネギ達が来るまでやってしまうとはな。これに関して今は反省している。
次からは時間忘れちまうしゲーセンには足を運んじゃいけないな。

「ケケケ、サッキ撮ッチマッタヤツハ破リ捨テルノカ?」

「そんなことしたら絶対に罰が当たるし、オレはそういう事はしない」

チャチャゼロが言ってるのはプリクラだよな。
プリクラは生まれてから一度も撮ったことなんてなかったぜ。
写真そのものを撮られることが好きじゃないからな。

「まずはシネマ村だな」

あと何十分後、もしくは何時間後に起きる出来事が発生する場所に向けて走る速度を上げる。

 

 

 

 

7割程度の力で走ったからすぐにシネマ村には着いた。
早く着いたおかげで時間に余裕があるだろう。
実に身体能力が向上してるってのはいいことだ。

「仁ハ茶屋バッカリ来ルンダナ。シカモ日本茶バカリ飲ミヤガッテ」

まず来た場所は日本の雰囲気を十分に堪能できる空間。
そしてオレの目の前には暖かい日本茶とお団子のセット。
お団子はみたらし、餡子、ごまの三種類だぜ。

「一番好きなものが日本茶だからな」

一番日本茶が好きといっても味覚は疎いから日本茶なら何でもいいんだけどさ。
それでも茶々丸と士郎が入れる茶は格別に美味いぐらいはわかるぜ。

さて、思考を本格的に切り替えねぇと。
今からじゃなくて、もう少し早く先の事を考えればよかったんだけど、
昨日のが響いてるんだよね…………ハァ……考えを纏めるとしよう……

「すみません、ペンと紙を数枚頂けますか?」

「畏まりました」

すぐさま持ってきてくれた店員から頼んだ物を受け取る。
お礼として後で追加注文してやらないとな。
では、今までの考えを纏めよう。


まずはネギ側のこれからシネマ村イベントまでに多く関わる人。

主役のネギはこれから狗族の小太郎と戦うことになるだろう。
これはオレと士郎が手を出すべきではない、ネギには実戦を経験させることが一番だ。
危なくなろうがアイツは一人……アスナやカモがついてるが、
一人で切り抜けることを身につけることにこれからの意味がある。

次にアスナとのどか。見た感じアスナはネギにしっかりと付いてくはずだ。
これからの先の事もあるしアスナもネギと同じように怪我はすると思うが実戦を体験した方がいいよな。
やはりアスナとネギには特に頑張ってもらわねぇと。
のどかの方はきちんとネギと仮契約をしたって事で問題ないな。

三番目にこのか。今回千草に狙われている張本人。
このかは刹那と士郎が守るから襲われても十分対処できるだろう。
狙われてるが一番安全なのかね。

四番目に士郎。あいつにはこれから起きる出来事は簡単に述べたし、どう動けば最適かある程度のとこは教えた。
まだ教え足りないことはあるが考え纏めてないからなぁ……
まぁ士郎は何故かボケてる一面が多くあるが、こういう時はイレギュラーが起きようが士郎なら切り抜けれるだろう。

五番目に刹那、ハプニングという形でオレと仮契約をしてしまった。
これがフェイトの事と並び、一番とも言えるオレの知ってる範囲のイレギュラーだ。
プラスに考えれば、刹那との連絡が簡単に取れる上に、もしかすると刹那を召喚、
つまりオレの目の前にいつでも呼び出すことができるかもしれないってことだ。
マイナスに考えるとネギとの仮契約がどうなるかということだな。
仮契約を破棄すれば良いのだろうが、これはこれで酷いような気がする。
……上手く動かしていかないと。


――次に敵の事に関してだな。

狗族のハーフの小太郎。
西洋魔術師にイラついてくこともあってオレの知ってる流れのままネギと戦うことになるだろう。
ネギが小太郎と闘った結果流れが変わって……万が一でもバッドエンドにはならないな。
これはオレの直感だぜ。

次に月詠と千草。フェイトと小太郎もだがアイツらは今はゲーセンの近くに居ると思う。
すでに行動に出ていたとしても知ってる通りに士郎が事を運んでくれるだろうから問題はない。
アイツらとのシネマ村での戦闘をどうするかだな。

最後にフェイト。こいつが一番厄介だ。
奴が狙ってるのはこのか、士郎、オレ三人だろう。
このかは千草に頼まれてだが、オレと士郎は単独で狙ってきたことが伺える。
千草と電車で会った時に千草はオレのことはわからんかったからな。
救いと言えばコイツの立場が新入りで千草の言う事を素直に聞いて動いてくれるってことだな。

……何故フェイトはオレ達のことを知っていたのか。
ずっと前にも思ってたけど魔力がある時点でフェイトレベルの奴なら気づかれるからか?
けど改めて考え直してみると此処の世界の人の魔力探知能力はそれほど優れてたっけ……
いや、とにかく――――売られた喧嘩は買ってやろうじゃないか、フフ。


できる限りはオレの知ってる流れで行こうとは思うが、
なるべく3−Aの皆には怪我をさせない形が良いな。
ネギはもちろん別の話だぜ。

あとはこれからどう動けば最善かだ。
夜の分も加えて計画を考えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

  side―衛宮士郎―


「…………」

俺は新幹線でもやっていた魔法使いのカードゲームを女子から言われるままプレイしていた。
結果は圧倒的な敗北。誰から見ても無残な結果と言われるだろう。

「士郎くんゲーム下手やな〜」

後ろで見ていたこのかちゃんが笑いながら一言。
やはり言われることになったな……

「仁は誰にも負けないくらいゲーム強いのに衛宮はその逆だね」

「これはセンスが全くないと言えるです」

「ボロボロにもほどがあるわね……」

「みなさんそんなに言わなくても」

次に早乙女さん、綾瀬さん、神楽坂さん、ネギ君の順に言われる。
ひどい言われようだ……ネギ君はフォローしてくれたみたいだけどさ。
それに仁のゲームの強さは異常すぎるから仁と比べられても困る。
仁とゲームをやってるとあいつがギリギリになってこっちが勝てる、
と思った瞬間に高笑いしながらの一方的な暴力に変わるとか、仁のやり方はむごすぎる。

「実戦だと仁に負けないんだけどな」

「実戦って衛宮――

「今のは聞き流してくれ」

危ない、早乙女さんに怪しまれた。
早乙女さんに何か知られてしまうと噂が至るところまで広がるからな。
今のぐらいなら大したことないと思うけど実戦じゃなくて試合って言えばよかったか。

「ま、いーや。じゃぁ次はネギ君やってみる?」

「僕ですか……そうですね。やってみます」

俺の話をそれほど気にしてないようで、そのままネギ君にゲームをするか誘い、
見ていて興味を持ったのかネギ君が綾瀬さんにカードのスタートセットを借りて早速ゲームをプレイする。

…………上手いな。初めてなはずなのに……何をやってもすぐに身につくのか。
ゲームぐらいで大げさだがこれが天才ってことかな。
戦闘の方はそれほど見てないがエヴァとの闘いを見ていたが魔法使いの素質としても十分だろう。
此処の裏の世界で英雄と言われた人の息子だからな……それに十歳で先生になるには天才でないと駄目か。

――となり入ってええか?」

片手にカードを持ち、白い帽子を被った学ランの子がネギ君の隣のゲーム機に立ってプレイ中のネギ君に尋ねてきた。

「あ、うん、いーよ」

ネギ君は快く対戦を承諾してその子とゲームの対戦を開始し、女子達がネギ君を応援し始める。
……あの学ランの子は仁の言っていた【狗族】のハーフの子だな。
仁から聞いたことはネギ君と同じくらいの背丈、黒髪のやや長髪、帽子の着用、
学ランの前を開けている、そして最後にそいつがネギに名前を知るためにゲームの対戦を誘う、
全てが当てはまるからこの子で間違いないだろう。
しかし、仁からそいつには絶対に話しかけるなと念を押されたが俺ってそんなに信用ないのかなぁ。

 

 

 

「あ、負けた――

「いやー、初めてにしてはよくやったよネギ先生」

善戦してはいたが結局のところネギ君は負けてしまい、ネギ君の肩をポンと叩き慰める早乙女さん。
ネギ君は残念そうにしてるけど、俺と比べると見ごたえがあって良かったぞ……

「なかなかやるなぁ。でも魔法使いとしてはまだまだやけどな。ネギ・スプリングフィールド君」

「えっ! どうして僕の名前を!?」

「だってゲーム始める時、自分で名前入れてたやろ?」

学ランの子が座っていた椅子から立ち上がり指す画面には、
ゲームオーバーの表示と共にネギ君の名前がきっちりと入っている。
それを見てネギ君は納得した様子。ネギ君はこういうところで抜けてる部分がよくあるな。
む? 今何処かから俺につっこみをしたような気がする? 気のせいかな。

「ほな!」

「あっ、逃げた! 勝ち逃げはずるいよ」

 早乙女さんの言葉も気にせず走り去っていく学ランの子。

「む……」

だが前をちゃんと向いてなかったせいで宮崎さんとぶつかってしまい二人とも転んでしまった。
その拍子に宮崎さんは持っていた本を落とし、学ランの子は帽子が脱げてしまう。
帽子が脱げてしまった学ランの子の黒髪な頭には……犬耳? あれが狗族の証拠なのかな。

「ナハハ、ごめんな姉ちゃん――――パンツ見えとるでー」

学ランの子は再び立ち上がって宮崎さんに謝って去る。
最後の台詞は走り去りながら言ったが、その捨て台詞はないだろう。

「士郎さん、桜咲さん、皆さんがゲームに集中し始めたので僕達は親書を親書を渡しに行ってきます」

「じゃ二人とも、このかのことは頼むね」

「了解した」

「はい、気をつけてください」

ネギ君と神楽坂さんが他の皆に気づかれないよう急いでゲーセンを出て行く。
けどその後ろから宮崎さんもついて行ってるな。予定通りだけどさ。
仁に教えてもらった点で何か違う点があれば連絡を寄こせと言ってたが大丈夫なようだ。

次の出来事が起きるまで時間があるようだから少しゲームの練習と女子達がやってるのを参考にしておこうか。
せめて仁にボロクソにされないレベルぐらいまでにはなりたいからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  side―防人仁―


計画を考えて暫く時間が経過。ある程度纏まったかな。

『仁さん、聞こえますか?』

刹那からの念話か。とにかく通信しないとな。
これって頭の中だけで会話だっけか?
うーん、ああ、周りに怪しまれないように携帯持って会話すればいいか。
仮契約カードと携帯を持ってと。

念話テレパティア――『どうした?』」

『ネギ先生方が襲われているので私が動くか仁さんに援護を頼みたいのですが』

念話は試してはいなかったがちゃんと繋がったようだ。
話かけてくる刹那は動揺した感じで救援を求めている。
だが纏めた考えの通りネギを助ける気はない。

『悪いがネギには一人で対処してもらう。刹那はこのかの傍に居てやれ。
それと士郎に頼んでも行かないように言ってるからな』

『で、ですが』

『ネギを信じろ、あいつはいざという時にはやる奴だ』

『……仁さんがそこまで言うのなら……そうですね、信じてみます』

フム、刹那の説得は完了かな。
こっちに来てからはホントに心配性な人が……いや、優しい心を持ったやつばっかだ。
敵でもそんな奴等が多いと思うしな。もちろんフェイトのような奴は違うがね。

『護衛もいいが楽しめるときは楽しんどけよ』

最後に一言を付け加えておく。
刹那は自分から楽しむといったことはしないからな。
これぐらいは言っておく必要があるだろう。

『え……う……できる限りそうします。……それでは――

曖昧な感じの返答だ。
まぁ刹那だからこんな感じかなぁ。

ネギ達が襲われたという事はもう少しでこちらに刹那達が来るって事だな。
それじゃぁ早速行動に、まずは此処の更衣所にものを取りに行かないと。
あれ、何かチャチャゼロ拗ねてる……?

「どうした?」

「何ガダ、ソレヨリ早ク歩ケ」

フム、チャチャゼロがそう言うなら勘定をして早く行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜」

女性店員が営業スマイルでオレを応対する。
営業スマイルはファストフード店だけで十分だぜ。

「こちらで麻帆良の学園長から預かってるものと昨日か今日の内に赤い外套が届いているはず。
それを持ってきてくれ。学園長の名前は近衛近右衛門、受取人は防人仁。外套の方はどちらも防人仁だ」

「少々お待ちください」

店員が店の個室へ入って行く、そこに預けているものがあるようだな。
外套の方は士郎から受け取り昨日の朝に旅館のスタッフに頼んで早急に送るように言っといたが、
じぃさんの方はちゃんと送ってくれたのかな。

お、早い。入ったと思ったらすぐに荷物持ってきたよ。
頼んだものを考えると箱が大きすぎる気がするがこんなもんか。

「防人仁様ですね、こちらにサインをお願いします」

店員が渡してきた紙は証明書、パッと書いて店員に渡す。
箱はキチっと封がしてあるな。では早速オープン。

「ソレハ、士郎ガコッチニ来タ時ノ服カ?」

「ああ」

アーチャーの衣装の縮小版を箱から取り出す。
外套はそのまま使ってるようだが全体的に採寸が全く合ってなかったからな。
戦闘服って事もあるし、じぃさんに頼んでやっといてもらったぜ。
……この赤と黒が基調の衣装を着させて他の奴等の反応を面白がるのがメインと言えなくもない。

「仁、紙ガアルゾ」

服を取り出した箱の中には封筒が残ってあった。
封筒の中には手紙か、誰が書いた手紙なのかね。

『仁、たまには連絡ぐらい寄こせ。会った時に血を搾りきるぞ by Evangeline.A.K.McDowell』

手紙はエヴァからだな。しかも赤文字で随分と物騒な内容なこった。
アイツって寂しがり屋だったのか?
茶々丸がちゃんとエヴァと接してやってると思うのになぁ。
それにじぃさんだってエヴァの相手をちゃんとしてるだろう。
……そっちから携帯に電話してくれればいいのにな。
今日の夜に会えるだろうし連絡はいいか。

じゃぁそろそろ動いていこう。

 

 

――――フッ。レッツ、ショウタイムだ」

 

 

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