35 修学旅行3日目夕・京お嬢様の実家へ

 

 

「春でもあの姿はあっちぃわ」

 太陽光の熱を目一杯吸ってくれる黒子の姿から私服へと着替え終えて、傍に居る男へ愚痴を漏らす。

「あの姿で最初から見てたのか?」

「ふ、士郎には教えん」

「マァ、コイツガ何シヨウガドウデモイイダロ」

 オレは衣装貸しの店の前、チャチャゼロ乗せた赤い衣装のままの士郎は店の脇に隠れるようにして会話を交わす。
 士郎に、その姿のままで居ろと提案したのはオレ。士郎もその姿の方が何かあった時には動き易いと言い、首を縦に振ってくれた。
 それでコイツの私服の方は、中の女性店員に明日に旅館まで送るように頼んだ。すんなりと了承してくれたのが、ちょいと疑問に思ったけど、小さいコトは余り気にしないのが一番だ。

「しかし、士郎は良くやってくれた。感謝する」

 目の前の男へ心からの礼を。

「テメェガ最後ニ、仕損ジナケレバ完璧ダッタノニナ」

「それには面目ねぇとしか言えん」

 士郎はオレの送った紙の通り、全てそのままではなく、臨機応変に対応してオレの思惑以上の働きをしてくれたってのに、最後の最後でオレが失敗してしまった。
 白髪坊主に傷を負わせて、オレ達を狙った理由でも聞き出そうと思ったんだが、アイツはほぼ無傷。士郎が働いても、オレがダメだっただけに水の泡だ。
 狙った場所が狙った場所なだけに、結果アイツの刎ねられる姿を木乃香や刹那に見せなくてよかったか。そもそも刎ねちまったら聞き出せねぇ、普通は。

「あー、そういえば刹那のあの扮装は、お前が選んだのか?」

「いや、俺じゃなくて近衛だが」

「そっか」

 士郎が刹那の代わりに月詠と仕合うのは想定してたが、まさか刹那が着物姿になるとまでは予想もしてなかった。
 それにしても木乃香が刹那に、か。さぞかし二人とも嬉しかっただろう。大好きな幼馴染と同じ格好で昔のように仲良くしていたのだから。後は敵の邪魔が入らなければ最高だっただろうが、こればかりはどうしても避けられない。あの白髪坊主が居れば尚更無理な話である。

「結構時間くってんなぁ」

「テメェノ着テタ安物トハ違ウカラナ」

 確かに着物はややこしそうだから、時間かかるのはしょうがないのか。借り物の衣装だし、チャチャゼロの言う通り着物ってのは高いから手荒なコトはできないし。

「おっと、着替え終わったか」

 噂をすれば、お目当ての二人が店から出てきた。

「バッチリや」

「待たせてしまい申し訳ありません」

 二人とも着物から私服……片方は制服だが着替え終えたようだ。

「桜咲、刀を返そう。良い刀だ。大切に使うといい」

 建物の影から士郎が夕凪の柄の方を刹那へと伸ばして渡す。

「刹那、木乃香を実家に連れてこうと思うんだが問題ないか?」

 オレが、士郎から夕凪を受け取って袋へと収めている刹那へと言葉を掛ける。

「はい。私もその方がいいと考えていた所です」

「むー、ウチの家かー」

 嫌ではないが、困った顔で顎に手を寄せている木乃香。
 だが残念なコトに木乃香に拒否権はなく、オレが勝手に決めさせてもらう。

「士郎、木乃香を。刹那は道案内頼む」

「了解した」
「……分かりました」

 士郎が木乃香を抱え、オレは士郎の頭の上のチャチャゼロを引っ手繰ってオレの頭へ。
 そして刹那が先頭になって走る後を、士郎と並んで追いかけた。

「アレはいいのか?」

「気にしたら負けだ」

 士郎の言うアレ。オレ達の存在に気付いて、此方に走り向かってきていた早乙女軍と朝倉軍の連合である。
 今捕まると面倒なのでパスと、士郎に言って刹那の走る後を追い、シネマ村の塀から退場した。

 

 

 

 

 シネマ村から出たオレ達四人は、ネギ達が小太郎と戦闘したと思われる鳥居が続く道を歩いている。
 木乃香がココの入口の『炫毘古社』と書かれた鳥居のトコで、士郎に対し、抱えられているのは恥ずかしいから一人で歩くと言ったため、今はのんびりと自分の足で歩いている。
 木乃香と刹那がオレ達の数歩前で、木乃香から一方的なのだが、それでも刹那も楽しそうにして仲良く二人で話していた。仲が深まるのは良いコトだ。

 さて、ここまでの道中で敵さんが襲ってくる気配がなかったということは、オレの知ってる通り、夜に白髪坊主が単独で来るのだろう。襲ってくる気配がないから、こうしてのんびりと歩けていられる。

「月詠との戦闘はどうだったんだ?」

 オレが途中までは見てた分の仕合い内容は、士郎が上手く月詠に合わす感じに見えていた。最後の方は、オレが先に城へと向かっていた為に見れずにいた。故にどう終わったかと、士郎が仕合ってどう感じたのかを聞きたかった。

「紙に書かれていた通り、投影は極力使ってない。というより、桜咲の夕凪を借りたお陰で使わずに済んだ。最終的には城に向かおうとするタイミングになっても、余りにしつこく攻めてくるから水の中に落とさせてもらった。着替えがあるといいんだけどさ」

 最後の添えた言葉は、いつも通りの士郎らしい発言だと思い笑ってしまいそうだ。

「あの月詠という少女の力の底は分からない。アチラもオレと同じく徐々に力を見せていたからな。そのお陰で不意をついて最後の一撃を楽に入れられた訳だが」

「ほぅほぅ、で、月詠が底を見せたら勝てるか?」

「それはやってみないと分からない」

 言葉では謙遜とした態度だが、表情は負けはしないと士郎は言っている。
 コイツは戦闘に関しては負けず嫌いなんだか、自信家なんだか。

「なー、ウチの実家はちょっと大きいんやけど、やっぱりひいちゃうかなー?」

 木乃香が刹那の手を引き、片手でもじもじと可愛らしい仕草でオレ達へと話掛けてきた。
 そんな木乃香を見ても隣の男が全く動じないのがつまらないってな。

「俺は大きい家は沢山見てるし、特にそういうのはないぞ」

「オレもそんぐらいじゃ引かんから心配すんな。例え城に住んでいようとな」

 オレ達の返答に、よかったと安心する木乃香。
 しかし、こうは言ったものの木乃香の家を見たら、こんな家にオレも住んでみたいねぇ、ぐらいは思いそうだ。だけど家がデカければ手入れも苦労する。そのために使用人を雇い、家のでかさに比例して人数も増えるために金も掛かる。きっと爺さんぐらいの金はないと住めねぇんだろうな。あの成金っぷりにはビックリだ。

「誰か後ろから来る――早乙女達か」

 士郎が言い、振り返った先へオレも視線を送る。そこにはハルナ、夕映、朝倉が走ってコチラへと来ていた。

「おー、ハルナ達や」

「え? ど、どうして早乙女さん達がここに……」

 木乃香は手を振って向かってくる三人を歓迎しているが、刹那は木乃香と違って動揺している。ここで変わりがなければ動じている君の荷物の中に朝倉のGPS携帯が入っていて、君の不用心ってのがオチだ。これに関していつ仕込んだのかは全くの謎である。

「……ハァ……やっと追いついたわ、このバカたれ仁」

「仁達見つけたと思ったらすぐ飛んでっちゃうんだもんね」

 三人とも肩で息をして結構疲れているようだ。そうまでしてもついてきたかったのか、根性は認めよう。だがハルナ、人を馬鹿呼ばわりするテメェは駄目だ。

「ケケケ、発信機デモ付ケラレテタンジャネェカ」

「うおっと、チャチャゼロっち鋭いねー。なんと私が桜咲さんの荷物にGPS携帯放りこんどいたのよ。今一度讃えよ皆の衆」

「えっ、えっ……」

 功績を残した朝倉に歓声を上げているのはハルナ一人。正直虚しい。
 対して朝倉の罠に引っ掛かった刹那は、慌てて自分の荷物を漁っていた。

「うっ……こ、これですか」

 刹那が携帯を一つ取り出して皆へと見せる。
 コレで朝倉の持つピッピッと鳴り続ける携帯が、刹那の持つ携帯に反応しているのが証明された。

「急いでたんだから気にすんな」

 自分の失念と思っているせいか、落ち込んでしまった刹那に一つ言葉を掛けておく。
 確かに油断していたのは刹那だが、コッチの事情少しは知っている朝倉がクラスメイトに対して欺くのが一番悪ぃからな。

「お前等がついてきても別段邪魔には……っと決めるのは木乃香だな」

「みんなで行ったほうが楽しいからかまわへんよ」

 木乃香は笑顔で了承。当然だな。

「で、衛宮は何でシネマ村の時の格好のままなの?」

 じっくりと士郎を見る新たに加わった計6つの目。
 格好は普通なんてものじゃなく、派手で目立つ。それが貸衣装屋の物なのだと思っているのなら、何故その格好のままだと疑問を抱くのも無理はない。

「カッコつけた罰ゲームだ。ついでに衣装は学園長に作らせたものだから持ってきても心配はない」

「……カッコつけたってなんだよ」

「ほぅ、オレは嘘は言ってねぇと思うが?」

 反論してきた士郎だが、残念なコトにお前の意見に肯定する人物はいない。アレは誰がどうみてもカッコつけてるとしか言わないんだよ。

「そ、それよりもシネマ村の物理的に無視した――」

「夕映よ、細かいコトは気にすんな。じゃぁ、木乃香の御許しも出たしさっさと行こうぜ」

「うっ、は、はぐらかさないで下さい防人さん。む、うぅ……」

 可愛いらしい声を出そうとも、教えんもんは教えん。
 しかし、もう少しで夕映は魔法について気づくんだが、ココで気付かせるのは得策じゃねぇ。ここで言われちまったら、ハルナも居るコトでオレの知っている流れが大きく変わっちまう。と言っても結構変わってるんだけどさ。できるだけ流れは壊さないように努力しているつもりなんだけどな。

 愚痴を頭の中で吐きながら、気楽に歩むクラスメイトを眺めて、ただ足を進める。
 頭の片隅に後僅かで修学旅行中に起きる最大の問題を討つ策を考えながら。

 

 

 

 

「やっとネギ達が見えたか」

 仁のヤレヤレといった声。途中から合流した3人に加え合計7人で歩いていたところ、岩場で休むネギ、神楽坂、宮崎が皆の目に入る距離まで辿りついた。
 俺はもう少し前から確認できていたが、皆に言っても仕方ない。

 ネギが横になって休んでいる所を見ると、狗族の子、仁曰く小太郎と戦ったため、魔力切れか体力切れか。

「え……えーっ!? 何でみんな居るのよ!」

 ネギ側と俺達側、互いに会話できる距離まで近づくと神楽坂が想定外の訪問者に向けて騒ぐ。この想定外のってのは早乙女と綾瀬だ。彼女らは此方の世界には関係してない。
 これから行く場所は関西呪術協会、日本の魔法使いの西の拠点。関係ない二人が、魔法世界に関わるコトをよくないと神楽坂は思って、今の言葉を出したんだろう。

 それと宮崎がネギ達と居るという事は、ネギが小太郎という狗族の子と戦う姿を見て、もう此方に関わっているに違いない。コレは仁から貰った紙通りの内容ならば、だけど。

「居るもんはしょうがねぇだろ。ネギ大丈夫か?」

「はい、僕は大丈夫です」

 体を起こして、元気な声で答えるネギ。

「あの……士郎さんのその格好は……」

「フッ、気になるだろうが余り触れないでやってくれ」

 仁が強引に俺の姿についての話を終わらせる。
 しかし、というかやっぱりこの姿は気になるのか。言葉を投げかけてきたネギはそうだが、神楽坂と宮崎も俺に向けて唖然としている。
 ココまで来ると悲しい気分になってくるぞ。

「ネギ、歩けるか?」

 仁が立ち上がろうとするネギに確認を取る。
 この子はエヴァとの戦いが初戦闘。そして狗族の子との戦いが二度目だ。戦闘回数からして戦い馴れはしていない。体のかかっている負荷が気に掛かる。

「はい――――あぅ……」

 ネギは立ち上がると同時によろけてしまい、神楽坂が倒れる寸前の所で支え、他の女子達が心配して駆け寄っていた。
 これは一人で歩くのは到底無理そうだ。

「俺がネギを連れてこう」

「……構わんが。士郎、お姫様抱っこはやめてくれよ。やられちゃ危険な香りがするし、ハルナの漫画のネタにされる」

「なんとっ! 仁はああ言ってるけど私に気にせずにドンドンしちゃっていいからね」

 ドンドンするってどういうことさ……まぁ、仁の言う通りにネギは背負うことにしよう。

 ひょいとネギを持ちあげて背中へと乗せる。
 軽い。10歳の子どもだからこんなものか? しかし、子どもで、こんな華奢な体で戦っていたのか。ネギの相手も同じ年頃の子どもだったが、仁によると素人ではなく、その道を一人で生きて来た子だという。
 経験の差がありながらネギは勝った。エヴァの時も……エヴァは力をネギに合わせてはいたが、それでも力の差を分かっていながら勇敢に戦っていた。つくづく面白い子だ。

「チッ」

「……早乙女が恐いんだが」

 舌打ちして此方を睨んでくる早乙女から僅かに黒いオーラが出ている。

「あああー、行くぞ」

 仁はそれを見なかった事にして先に進んでく。
 俺も見なかったコトにした方がよさそうだ。

「すみません、士郎さん」

 背中越しにネギの申し訳なさそうな声がする。

「謝ることじゃないさ。こんなにボロボロになるまで頑張って神楽坂と宮崎を守ったんだろう? それなら何もめげるコトはない」

 これは戦い抜いたネギに対する励ましの言葉か? 誉めた言葉か? 咄嗟に俺の口から言葉が出ていた。

「ありがとうございます、士郎さん」

 背負うネギの体から力が抜けた感じがする。今の言葉でやっと、落ち着いたって所だろうか。こんなにも子どもなのに人を気遣う心は大人のようだ。
 そして、この子を誰とも違った観点から見ているアイツ。少しその目の意味と、その思いが理解できた気がする。
 おかしな子だ。そう、つくづくとおかしな子だ。

 ……早乙女の目が恐い。今はさっさと歩こう。

 

 

 

 

「お、見て見て。あれ入り口じゃない?」

 我一番とはしゃぐのは、やはり早乙女。その矛先は俺達の視界に広がる年季の入った大きな門だった。それも周囲の落ち着いた雰囲気と合わさって違和感がない。だが個人の実家として考えるのなら、少々違和感というか驚くべきものだろうが、あの学園長の孫の実家だから不思議でもない。

 門の外辺りから何か違和感を感じる。コレは結界か? 西の総本山というコトで、おそらくは防御結界。調べれば、この場の全域に敷かれているコトだろう。しかし、あの白髪の少年ぐらいになると、この結界も破られるのではないかと不安になる。
 この世界についての術式も良く理解してないために、どれだけ大きく強大な物なのか正確に判断できない。故に俺からは、なんとも言えないのがな。ただ直感と此方に来てからの経験で、相当なものだとは感じ取れた。

「レッツゴー!」

 続いて早乙女が掛け声をかけて、俺達の前方に歩いていた近衛、宮崎、綾瀬、朝倉と一緒に門に向けて軽快に走っていく。

「ちょっと! そこは敵の本拠地なのよ!? 何が出てくるのか……」

 後続のネギを背負った俺、仁、桜咲と一緒に歩いていた神楽坂が、一人で前の五人を慌てながら追いかける。
 しかし、「敵の本拠地」って、此処が近衛の家って聞いてなかったのか。仁も悪い顔で神楽坂を面白がって見ているし、人が悪い。分かってるけど。

「し、士郎さん、どうしましょう!?」

「ネギもか……」

 体の疲れもまだ取れてないのに、背中から降りようとしてるネギ。
 相変わらず悪い顔している仁と、バツの悪そうな顔をしている桜咲。前者はわざとだが、後者は言うタイミングを逃してしまったって所か。

 さて、コチラも遅れては何かと悪いだろう。特に勘違いしているネギに対して。
 ネギを背負っている俺も、神楽坂の後をすぐに走って追いかけるコトにした。

 

「お帰りなさいませ。このかお嬢様」

 

「「へ?」」

 ネギと神楽坂が気の抜けた声を出す。
 門を越えた先には二人の予想していた敵ではなく、巫女姿の大勢の使用人が出迎えていたからだ。
 ズラリ、と二列に別れ道を造る近衛家の使用人。この人数は近衛家だからこその多さ、ではなく魔法使いの拠点の成り得る場所だからだろう。

「ネギと神楽坂は聞いてなかったようだが、此処は近衛の実家だ」

「えぇ~!? 何で教えてくれなかったのよ!」

「簡単に言うといつも通り、アスナ、お前に説明するのがメンド――イ゛ッ」

 後から入って訳を説明しようとしていた仁が神楽坂に殴られた。ボクサー顔負けの綺麗なボディーブローだ。神楽坂相手だと仁の回避力が愕然と落ちるのは何故だろう。

「俺は二人とも知っていると思ってたしな。桜咲も言うタイミングがなかったんだろう」

「すいません、ネギ先生、神楽坂さん……」

「それなら、しょうがないか。ん? このかの家なら初めから、みんなでコッチに来た方が――」

「コッチには敵が罠張って待ち構えてるかも知れないから、連れてこれなかったんだよ。現にアスナ達は此処に来る途中に襲われてたんだろ。それぐらい理解しなさい、このバ――ガッ」

 お次はラリアットを又も神楽坂から貰って仁が背から吹っ飛ぶように倒れ込んだ。
 仁の奴は一発目のボディーからせっかく回復したってのに、すぐにやられて……悪いのは全部仁だけどさ。

「ちょっと冗談で言っただけよっ。ほらっ、早く行くわよ」

 神楽坂は先に進む近衛達の下へ、ズンズンと歩き、他のメンバーと合流すると一緒になって先へと進んでいく。
 仁の言葉で機嫌を損ねたに加えて、発言ミスで恥ずかしがっているようだ。

「士郎さん、そろそろ僕は降りないと」

「そうだな。桜咲も追い掛けるといい」

「……分かりました」

 担いだままの状態で此処の長に会う訳にはいかない。ネギも使者として堂々と此処の長に会いたいに違いない。
 ネギを背から下ろすと桜咲と一緒になって、神楽坂達を追い掛けるように走って行ってしまった。

「気の強い子だ……それで、仁、生きてるか?」

 次は地に寝転んでいる仁を担がないといけないのか。
 残っている使用人も今の惨状を見てどうしようか迷ってる。俺はこういう対処はどうも苦手だ。
 ちなみに仁の頭に乗っていたチャチャゼロは、仁が吹っ飛ばされた際に、空に取り残された所をしっかり俺がキャッチして、俺の頭へ移し替えてる。後で人形の毒を吐かれるのは御免だからな。

「……つぅ……死んではいないぜ……」

「ケケケ、シブトイナ」

 生存確認完了。倒れていた仁は首をさすりながら、上半身を起こして答えた。

「使用人の方々も見てるし、早いとこ行こう」

 ゆらりと立ち上がり頭を抑えている仁に続けて声を掛ける。

「っ……うぅ……ああ……」

 先に歩く俺にゆっくりと仁は後ろからついてくる。
 相当さっきの一発、いや、計二発が効いているようだ。
 アレは痛そうだった。仁が悪いんだが、少し可哀想に感じる。

 

 

 

「おおぅ、広いなぁ」

「それに桜が舞って綺麗だ」

「花見ニモッテコイダナ」

 使用人に案内された大広間は、屋敷の中であろうと気にするコトもなく、桜の花びらが宙を舞っていた。屋敷の外に爛々と咲く桜が、この中にも風流を運んできているようだ。
 大広間を見渡せば、側面に和楽器を奏でる者、正座で待機する者が座り構え、正面の祭壇の脇には矢筒と和弓を携えた者が立ち構えている。
 風流の中に厳格な雰囲気か。

 祭壇の正面を見れば、5班のメンバーとネギ、朝倉が座布団の上に座っていて段から降りてくるだろう西の長を待っていた。

 少しゆっくり歩きすぎたせいか、周りの視線が一度俺達に集まる。特に俺への視線が多い気がするのは、やはりこの格好のせいだろう。

「気が利くな。さすがは由緒正しき近衛家ってとこか」

 先に座っているネギ達の後ろには、3つ空きがある座布団が敷かれていた。
 アチラに対しての残る客人は、俺と仁の二人の筈なのだが、どうやらチャチャゼロの分も入ってるようだ。それを察してかチャチャゼロも珍しく機嫌が上々となっている。

「もうすぐ西の長が来るだろうから早く座るとしよう」

「遅れちまってるしな」

 チャチャゼロは俺と仁の間になるように座らせてから、俺達も座布団へ腰を下ろす。

 その後、まもなく、正面の祭壇の段から一人の人物が降りてきた。
 ゆっくりと、一段一段踏みしめるように降りてくる人。今回、ネギが会おうと躍起になっていた西の長その人だろう。

「アリャアサボッテヤガンナ」

 チャチャゼロが降りてくる人を視て、貶すように言葉を吐く。
 その言葉が指すのは、チャチャゼロ故に戦に関してのコトだろう。下りてくる人から戦人の雰囲気を感じる。感じるのだが、同時に色褪せたようにも感じた。
 昔は前線に出ていたが、長と成った今は政治的部分に重さを置かなければならなくなったからって所だろうか。

「ようこそ、明日菜君、このかのクラスメイトの皆さん」

 長が階段を降り切り、舞台の壇上から東からの客人へと目を配らせていく。

「そして担任のネギ先生と――」

 言葉を途切らせた長が俺と仁を見ている。
 学園長は俺達のコトはある程度は知らせておくと言っていたから、長は俺達を分かっていて想定せぬ客人ではないはずだが。

「フッ」

 何でカッコつけて笑ってんだ、この座布団一つ間を開けた男は。

「ふふ、君達が士郎君と仁君だね」

「はい。学園長の方から聞いているようで安心しました」

 長に俺から返答をする。さすがに、あの学園長でも忘れて無かったようで心が落ち着いた。

「此方の話は後に回してもらうと助かります、近衛詠春殿。私達より先にネギ・スプリングフィールドから、東の長、近衛近右衛門より預かった物を先に受け取って下さい」

 仁がカッコつけ笑いから一変して、真面目かつ丁寧な口調で皮肉もからかいもなしに長へ話を告げる。
 これ程までに丁寧な口調の仁は学園長と初めて会った時以来だ。新田先生と話す時でも、これ程丁寧ではない。しかし、今となっては違和感がありすぎるぞ。前に座ってるメンバーも奇怪なモノを見る目で仁を見てるしさ。

「……ネギ」

「は、はい」

 ネギが仁に名を呼ばれ急かされて懐から取り出した書を手に、西の長、近衛詠春の下へ歩み寄る。

「東の長、麻帆良学園学園長、近衛近右衛門から西の親書をお受け取り下さい」

 ネギはさっきの仁と同じよう、いや、元々持っている丁寧な口調で言葉を告げて、近衛詠春へ封を渡す。
 手紙を受け取った長は、すぐさま封を開き、そこから数枚の紙を取り出して順々に真剣な表情を浮かべ目で読んでゆく。
 長は一枚、二枚と手に取った紙を真剣な表情で読み、三枚目になって、どういう訳か苦笑いを浮かべていた。実父か義父なのかは分からないが、手紙の主からキツイ一言でも書いてあったのだろうか。

「――いいでしょう、西の長の意を汲み私達も東西の仲違いの解消に尽力をするとお伝え下さい」

 長が三枚目も読み終えると言い放つ。最後に任務御苦労と付けくわえて、ネギへ労いの言葉を与えた。
 長の言葉を聞いて女子達が、ネギに「おめでとう」と言いながら群がってる。主に囃し立てるのは当然あの早乙女であり、任務の意味を一番分かってなさそうな人物でもある。
 とにもかくにも、ネギが学園長から依頼された任務は無事に終了した。この1日、2日、そして今日まで、厄介なコトにも巻き込まれながらもネギは対処してきた。これぐらい持て囃されてもいいぐらいに努力はしている。

「今から山を降りると日がくれてしまいます。今日は此処に泊まっていくのが良いでしょう。もちろん、歓迎の宴も御用意しますよ」

 長の言葉に喜ぶ早乙女と朝倉。最後の歓迎の宴の部分ってとこに反応してる。
 しかしこうは言われたものの、此方も学生で修学旅行中。生徒が旅館に帰ってこなければ問題になると思うのだが……心配ないようだ。ネギもそれを心配して長に話を出したが、耳を凝らして聴いてみれば長は身代わりを旅館の方に立てるとの事。
 誘いを断る理由もなく、ネギは素直に長の誘いを受けていた。

「長」

「そうですね。士郎君と仁君以外は一度この場を退席お願います」

 呼びかける仁の一言に、長が反応するように皆へと呼びかけた。
 まずは周囲の使用人が足早に退席。

「特にハルナと朝倉、聞き耳は立てるな。誰を敵に回すと面倒だってのは分かるだろう」

「くっ……仕方なし」

「はいはい、分かってますよー」

 呼ばれなかった者は素直に出て行き、注意された早乙女は悔しそうに、朝倉は手を振ってそんなコトは興味ないといったように出て行く。
 仁がこれだけ威圧すれば、聞き耳立てる者もいないだろう。
 大広間に残ったのは俺、仁、チャチャゼロ、そして長だけ。広過ぎる部屋のためか、こうも少ないと寂しさが際立つ。

「座って話しましょうか。ああ、君達も足を崩して構いません。私も崩しますから」

 長が軽く笑い、空きができた座布団の一つに胡坐をかいて座る。
 気を掛けて貰ったのなら、その言葉に甘えるコトにして、此方も同じような格好で座った。

「この人形は――」

「エヴァの人形です」

「ケケケ、暫ク見ネェ間ニ腑抜ケタナ」

 長の前に鎮座しているチャチャゼロ。
 仁が丁寧な言葉で誰が主人なのかを説明し、チャチャゼロは誰であろうと相変わらずの毒の吐き具合である。

「やはりエヴァンジェリンの人形でしたか。それと仁君、堅苦しくしなくても、私には学園長に話しかけるような気持ちでいいですよ」

「……バレてましたか」

「ええ、あの時の皆さんの反応を見てそこはかとなく」

「はぁ……敬語や丁寧語は余り得意じゃないんで、そう言われてしまったのなら普通に話させてもらおうかな」

 溜め息吐きながらも、それでよかったと開き直るような様を見せる仁。
 気持ちの入れ替えが速いのは個人の素晴らしい特長。それでも少しは遠慮ぐらい見せた方が良いと思うんだが……それこそ仁らしくなくなるか。

「それで爺は、そっちにオレ達の事を何処まで話してる?」

 いつもの仁の口調に戻る。改めて聞くと、これでないと違和感がありすぎて変だな。

「私が聞いているのは君達が異世界から来た事と若返っている事です。どちらもその一言だけで、深い話は何一つ聞いていません」

「成程、妥当なラインだ」

 むしろコレ以外は俺達抜きでは話せないだろう。そこの所の線引きをしている学園長はさすがと言える。

「異世界というのは私も興味あるんですがね」

「残念ながら例え木乃香の父で信頼出来る人であろうとも、大っぴらに話せるもんじゃないんでね。ただ機会があれば話せる時も来る」

「ふむ。それならば仕方ありません。その機会に出会えるように期待しましょう」

 流石にコレについては、まだ話せない。仁が学園長やエヴァにすら、深く話そうともしないコトだ。此処は俺も仁の意見に従うのが賢明な判断。

「では、もう一つの年齢について聞いて置きましょうか。コチラも私の興味ですから、貴方達に不備があるのなら先程と同じように言って下さい」

 明るい表情で長は話す。俺達はこの世界にとっては特異な存在、聞けそうなコトならば話しを聞きたくもなる、か。

「オレは19そこらかな。エヴァの別荘使ってるから、あれ込みで語るなら正確な歳は、しっかりと計算しねぇと出てこない」

 常日頃と俺達が利用してる別荘は、外の1時間が中の24時間に代わるんだったな。あの中の過ごした時間を外の時間とリンクさせるとすると、誕生日とかややこしくなりそうだ。
 今は仁も答えたコトだし、俺もコチラに来た時の年齢を答えておくべきか。

「俺はココに来た日で――」

「待った」

「ん、なんだ?」

 声を高く上げて仁がつっこんできた。

「お前は言うな。言うとオレの気持ちが揺らぎそうだ」

 訳の分からぬコトをのたまう座布団一つ開けた所の男。
 別段年齢なんて言っても大したコトじゃないと思うんだが。

「では、仁よりは上だと言っておきます」

 威嚇してくる仁に反抗する気が起きないので曖昧に答える。でも、コレならば仁と長の両方に納得できる解答だと思う。

「オッサンカ?」

「おっさんではない」

 曖昧に答えたと思ったら人形から、この言葉である。とりあえず、オッサン連呼するチャチャゼロの頭を押して黙らせておこう。

「マァ、御主人ト比ベリャ、テメェラ全員ヒヨッコダケドナ」

「そりゃぁオレ達と600越えを比べられても困る」

 見た目と年齢が一致してないのは、俺や仁よりもチャチャゼロが言うチャチャゼロ自身の主人の方が段違いに上だ。クラスメイトと同じ14歳と言ってもおかしいぐらいで、見た目だけならネギと同い年と言われても疑問を持たない。
 それとエヴァのもう一人の従者、絡繰は生まれて3年のガイノイドと言っていた。こっちはエヴァとは対照的。ついでにエヴァよりも絡繰の方が精神年齢が上に感じる気がする。何故こう思う。あの観光所で開いた手紙のせいか。とにかくコレは本人の前で言えなそうだ。

「コッチからも幾らか話を切り出そうか」

 さて、と長に代わって話を切り出そうとする仁。

「木乃香に力の事は話しておいた方がいい。遅かれ早かれ木乃香には気づかれるコトになる。ネギと一度、仮契約――士郎、失敗してる形だがネギと木乃香はやったんだろ?」

「……そうだ。修学旅行の数日前、あのカモのせいでな」

 修学旅行のため、買い物をしていた際に起きた出来事。近衛は神楽坂の仮契約カードを見て、どうしても自分も欲しいと思い決行してしまった。
 結果は近衛がネギの頬へとして、スカカードと呼ばれる中途半端なカードが生まれたので、あの時は学園長から近衛には魔法をばらすまいと言われていた身として一安心だった。
 その後はネギに注意して、カモを絞って終わり。カモは幾ら注意しようとも中々懲りぬので厄介だ。

「切っ掛けは出来た。力は何かが起これば勝手に発現するだろう。木乃香の性格から云って、自分の力を理解すれば必ず此方に首を突っ込んでくるのは間違いない。あくまでコレはオレからのアドバイス。これから木乃香に対してどうするかは、親のアンタが決めてくれ」

 仁の言葉を聞き、顎に手を当てて悩む長。

「……君達は14歳で道を決めるのは早いと思いますか?」

 呼吸を二つ程置いた後に、長からこんな質問が飛んできた。

「……難しい質問です」

「士郎の言う通り、難しい質問だ」

 長の言葉は自分の娘に対して。
 もし魔法について話すならば、娘には危険が伴う。だが仁が言うに、近衛には魔法が何時知られてもおかしくない。近衛が自分の力を知れば、人の役に立てるために力を行使するだろうと。
 それに近衛の力は強大なものだそうだ。今回の騒動のように、近衛の力を利用しようとする者に知られればそれだけ危険も高まる。

 自分の将来を決めるのは結局は自分。だが親である長、近衛詠春が一声娘に「いけない」とでも言えば、その危険も抑えれるのかもしれない。

「客観的に言うならば、体も心もまだ成長途中の14では早過ぎる――だが、この世界では“普通”の観点で見ちまえば失うモノも多いだろう。真っ直ぐ、愚直に、己の進みたい道を進むぐらいが丁度いいんじゃねぇかな。そうすりゃどうなろうとも、やらないよりは後悔もない。もちろん進む世界によっちゃそれだけ苦労もするだろうけどさ」

 仁はチャチャゼロの頭を撫でて座布団から自分の膝の上へと移す。

「テメェニシテハ、マトモナ意見ダ」

「こいつぁどうもチャチャゼロさん」

 珍しくチャチャゼロが仁を褒めた。それともコレが初めてだろうか。

「不甲斐無いですが、俺は仁以上の言葉が見つかりません。後は長が」

 仁の言葉は誰に向けての言葉か。決して「近衛」だけではない。何かを噛み締める表情が、放った言葉以外のモノを語っていた。
 何かは分からない。今の俺では、何も分からなかった。

「……そうですね。普通の女の子として暮らしてもらいたい気持ちもありましたが、このかの人生、私は助言する立場ぐらいが丁度いいのかも知れません」

「きっと木乃香は、辛い道であっても自分の力を他人に尽くすために使う。木乃香は飛びぬけて人思いで優しいからな」

「そう言われると親としても鼻が高いのと悲しい気持ちですね」

 複雑な表情で語る長。その気持ちは親の立場ならではのコトだろう。
 あの娘は辛い道に行く。それは本当に、そうなった時にしか分からぬコト。それでもオレも仁が言うように、近衛はそんな道に平気で行く気がする。
 果たして、その道は本当に良いモノなんだろうか。人を思いやれる娘だから仕方ないコトなんだろうか。わからない。それでも、あんないい娘に後悔だけはさせてはならない。

「遅かれ早かれ、このかには気付かれるコト。それが早まってしまっただけしょうね」

「分カッテンジャネーカ詠春。テメェハタダ逃ゲテルダケナンダヨ」

「相変わらずチャチャゼロの言葉は耳が痛い」

 笑うチャチャゼロと苦笑いを浮かべる長は、旧友の仲といった具合に言葉を交わしていた。

「では、この話は刹那君にこのかへ話をしてもらうのがよさそうですかね」

「流石は西の長。いい人選だ」

 長が立ちあがって話の終わりがやってくる。
 仁と長が互いに聞きたい話、言いたい話も終わった。俺からは別段話すようなコトもなく、この二人の会話を聞いていれば、それだけで十分だった。

「最後に一つ聞きそびれていましたが、士郎君、その格好は君の世界の戦闘服なのかな?」

「ええ、もう耳に入れているかもしれませんが、此処に来る前にも一悶着あったので、敵が続けてきた時に備えてこのままです。生憎と今はコレしか用意がないので……目につくと言われると困りものですが」

「いえ、その格好で構いませんよ」

「助かります」

 この格好が目立つのは、この道のりと屋敷の中で味わった。コレが畏怖と感じるのなら、着替えなければならないが、長がこう言うなら言葉に甘えよう。

「襲撃者に対する手配は廻せるのか?」

「それに関しては今は生憎と人手不足なのですが、明日の昼には西日本に出回ってる精鋭が手を打つので安心して下さい」

「それなら問題ない」

 仁が付け足すように尋ねて、コチラも終いと席を立つく。

「後、もう一つ。オレ達二人の身代わりは立てなくていい。オレはオレで対処するつもりだ」

 最後に一つ言葉を添えるように仁が言って話は完全に終える流れとなった。

「そうですか。ではそのように手配しておきましょう」

「次は宴の席で」

「ケケケ、酒ハ沢山用意シトケヨ」

 仁は言う事を言った後、自分のペース、いつも通りの仁らしく大広間の出入り口へと歩いていく。

「では、俺もここで」

 長に一礼してから、俺も仁を追いかけた。

「で、先に突っ走ってるが何処に行くつもりなんだ」

 俺の予想だと仁は考えてない。なんとなくノリで退出して、これからするコトを考えようとしているんだと思う。

「……使用人を探して部屋に案内してもらおう。士郎、周囲に白髪坊主か千草が見えるか?」

 この様子だと今思った通りだったようだ。
 それでも、すぐにすべきコトを思い立ったのは尊敬できる。

「此処じゃ場所が悪い。せめてこの屋根にでも昇らないと」

「ならそうしよう」

 入れ違いで大広間へと入る使用人全員が通り過ぎたのを確認してから、屋根へと飛ぶ。
 周囲を見渡せる最適な場所まで歩き、言われた通りに早速と眼に魔力を集中させて周囲を見渡す。

「見えるか?」

「……いないな」

 森林に囲まれた西の総本山。木々以外には怪しい姿も見えない。
 総本山に咲く桜が可憐で綺麗だとしか、今の風景には言いようがなかった。

「ということはまだ時間に余裕があるか。宴ぐらいはゆっくりしとくかね」

「俺にはまだ次のコトを話さないのか?」

 仁から話を聞いてるのは、さっきまでいた観光所までだ。
 今回の仁は、先のコトを積極的に話してくれる。それもある程度の起こり得るパターンを考えてから。

「すぐに話すから心配するなよ。宴ぐらいは楽しもうぜ」

「ソウダゼ士郎」

 本当にそんなんでいいのか……? まだ考えが纏まってないのなら仕方ないけどさ。
 とりあえずは頼り頼られている俺と仁の関係なだけに、素直に従うしかない。

「休む前に此処の足で地理を調べようか」

「糞真面目だねぇ、と返したい所だが士郎に賛成だ」

「俺ハ早ク酒ガ飲ミテェ」

 二人の意見が見事一致したので、人形の言葉を置き去りに己が足を次の屋根へと進める。
 後で文句を言われても、酒が出るなら何とかなるだろうと、楽に考えて。
 今は次のために最善を尽くすだけだ。

 

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――6巻 44時間目――

2010/8/23 改訂
修正日
2010/8/26
2011/3/4
2011/3/15

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